22連勝中のJT、その命運を握る絶対的エース=女子V・プレミアリーグ

田中夕子

V・プレミアリーグ、開幕からの連勝を22と伸ばし、首位を独走しているJT。写真は(左から)主将の位田愛、エースのキム・ヨンギョン、センターの山本愛 【Photo:北村大樹/アフロスポーツ】

  バレー・プレミアリーグ、JTマーヴェラスは22連勝のかかった試合(2月28日)で、セットカウント0−2と、状況は圧倒的に不利だった。挑戦者として、捨て身で向かってくるNECレッドロケッツのホームゲーム、相手には声援を含めた地の利も味方する。
 ついにJTの連勝街道もここまでか。会場がヒートアップする一方で、2セット目からコートに立ったJT・谷口雅美は実に冷静だった。
「一方的にやられている感じはなかったので、『自分たちがしっかり対策を立てて、準備すれば勝てる』、そう思っていました」

崩れても得点に結び付ける強さ

 22連勝と一口で言っても、勝ち方はさまざま。試合開始から圧倒的な強さで、ストレートで勝利する試合もあれば、NEC戦のように追い込まれてから驚異の粘りで逆転勝ちを収めた試合もある。
 絶対に負けない強さ。なぜ、今季のJTは強いのか。JTを追う、現在2位の久光製薬スプリングス・濱田義弘監督のJT評。
「いいサーブを打ってくるし、どこからでも攻撃が仕掛けられる。そのうえ高さもあって、守りも堅い。そりゃあ強いですよ」

 アタック決定率、アタック決定本数、ブロック決定本数、サーブ効果率。V・プレミアリーグの技術集計表で示される主要6部門のうち、JTがトップに立つのは上記4部門。濱田監督の言葉を借りるならば、「そりゃあ強い」も納得せざるを得ない。
 サーブレシーブ効果率は8チーム中4位で、他チームからすれば付け入りたいすきはまさにここなのだが、たとえサーブレシーブが崩れても、得点に結び付けられる強さ。これこそが、JTの強さを物語る要因でもある。

絶大な“キム・ヨンギョン効果”

チームの大黒柱となったキム・ヨンギョン。韓国代表の絶対的エースはここ一番の勝負強さを持ち、JTの得点源となっている 【Photo:北村大樹/アフロスポーツ】

 男女やリーグ戦、全日本を問わず、敗戦チームの多くが敗因を聞かれると、たいていの場合は同じ答えを述べる。
「サーブレシーブが崩れて、思うようなコンビが組み立てられませんでした」
 ここにカギがある。コンビを組み立てる、つまり多彩な攻撃パターンを仕掛ける目的は、相手ブロックの的を絞らせないこと。“サーブで崩してブロックで抑える”が勝利の方程式に当てはまるバレーボールでは、“サーブで崩す=サーブカットが崩れる”ことで、攻撃パターンも絞られることにつながる。
 通常であれば「カットが崩れて」何もできないはずが、今のJTにはこの状況で何とかできるエースがいる。

 昨秋のワールドグランドチャンピオンズカップでは得点王にも輝いた、韓国代表の絶対的エース、キム・ヨンギョンだ。192センチの高さを生かすだけでなく、速いトスも打ちこなし、ボールをリリースする瞬間まで分からない絶妙なフェイントなど、派手さだけでなく堅実さ、器用さも兼ね備える。

 何より、一番の魅力は勝負強さ。対戦相手にとっては、まさにそれこそが驚異であり、今季4度の対戦を終えたNECの杉山祥子もブロッカーとして対峙(たいじ)し、驚愕(きょうがく)した1人だ。
「外国人選手は、ブロックでこちらが引っかけて、プレッシャーをかけるとたいてい崩れていくものなんです。でも、ヨンギョンの場合はそれがない。どれだけプレッシャーをかけようと、たとえ立ち上がりが悪かろうと、絶対に大崩れしない。そのうえ『ココ』という勝負どころで必ず決めてくる。『ヨンギョンで来る』と分かっていても止められない理由はそこなんです」
 なおかつ性格も、素直で明るい人気者。目上の選手を「さん」付けで呼び、年下の選手からは「ヨンさん」と呼ばれ、チームにもすっかり溶け込んでいる。自らが決められなかったときは素直に謝り、ミスをした選手が引きずらないよう、すぐに声をかけに行く。

 “ヨンギョン効果”は絶大だ。今季からキャプテンを務める位田愛が言う。
「決定力があるというだけでなく、チームのムードメーカー的存在なので、ゲーム中も『いかにヨンギョンが打ちやすいボールを持って行けるか』とほかの選手も自然と意識するようになりました。つながりが生まれて、いいリズムになっているし、それぞれが『自分のすべきことをやらなきゃ』と、責任を持ってプレーしているのがいい結果につながっていると感じています」

 まさに、絶対的エース。この壁を切り崩すのは容易ではない。

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著者プロフィール

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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