“寅年トリオ”がメダルへ手応え=スピードスケート団体追い抜き

高野祐太
 スピードスケートの男女チームパシュート(団体追い抜き)1回戦などが行われ、平子裕基(開西病院)、杉森輝大(吉羽木材)、出島茂幸(十六銀行)の3人で米国と対戦した男子は、3秒90遅れの3分48秒15で敗れた。韓国とぶつかった女子は、穂積雅子、田畑真紀(ともにダイチ)、小平奈緒(相沢病院)で臨み、3分2秒89と4秒56差をつけて準決勝進出を決めた。

 翌日の活躍を予感させる、よくまとまった日本女子の滑りだった。序盤は韓国にリードを許すが問題にしない。
「それは作戦というか、ペースを守っていれば相手が落ちる。しかも、このリンクはそういうリンクなので」(小平)

 以降はリードを広げる。途中、コーチからの「2秒勝ってるぞ」との声に従い、最後は流してそのままフィニッシュした。小平は「もう1、2秒タイムを縮められると思う」と力強く宣言し、穂積は「初戦だけど気を抜かず、ペースを維持することはできました。比較的落ち着いて滑れました」と安どの表情を浮かべた。

 空気抵抗のかかる先頭をどういう組み合わせとタイミングで交代するかが醍醐味(だいごみ)のこの競技。日本のローテーションは、今大会も3000メートル6位、5000メートル7位の長距離の第一人者・穂積が多く先頭を担当し、田畑もサポート。途中、短距離型の小平がスピード維持の役割を果たす、というスタイルだ。ワールドカップ(W杯)でもこの3人で滑っており、かなり板に付いてきた雰囲気を漂わす。田畑35歳、穂積と小平23歳の“寅年トリオ”が、息ピッタリのコンビネーションを発揮しているように見えた。

小平「動きをつないでスピードを維持」

 3人ともが手応えをつかんでもいる。
 最後尾から一気に先頭に立つローテーションをこなした穂積は「(今までも)やっているので問題ありませんでした。小平が先頭に立って(スピードが)上がったのが勝因。余裕を持ってゴールできました」と分析。田畑は「(個人戦で成績を伸ばせなかったことは)自分の中で消化しました。今年は立ち直りが早いんでしょうか」と話した。

 小平の言葉に実感がこもる。「私が前半で引っ張る局面で、すごくスケーティング自体を楽につなげて、いい流れでバトンタッチできました。意外ともうちょっと出せるなという予感はありました。コーチからの声が久々に聞こえたんですよね。練習でも聞こえないくらいなので、いつもよりも冷静だったんだなーって、振り返れば思います。今日は足を使うんじゃなくて、きれいに動きをつないでスピードを維持するという、そういう感覚で滑りました」
 もう一人のメンバー・高木美帆(北海道・札内中)も、滑っている選手に周回数を伝えるなど、サポートをしながら、しっかりと勉強している。
「チームパシュートというのがこういう感じなんだな、と感覚がつかめました。出場する機会があったら、しっかり自分の滑りを出し切りたいと思いました」

ランク上位陣が敗れる波乱

 一方、ほかの組では、W杯ランク1位のカナダと同2位のロシアが敗れる波乱があった。3位の日本にとっては最大のライバルが戦わずして目の前から去った形となり、メダル獲得のチャンスが大きく広がった。とは言え、準決勝の相手はロシアを破っているポーランドで気は抜けない。準々決勝のタイムも日本より100分の1秒遅かっただけだ。ここで勝てば銀メダル以上が決まり、ドイツと米国の勝者との決勝に臨む。

 再び小平の弁。「やっぱり力んでしまうと、最後は落ちてしまうリンクなんだと思う。きれいなレースができたチームが勝ってくる。そこら辺、日本人は心を一つにすることが得意分野なので、明日も良いレースができるんじゃないかと思っています」

 柔らかく滑らない氷への対応、そして団体戦ならではの3人のコンビネーションが準決勝以降の鍵となるか。エースの穂積は「明日は後半勝負になるので自分が粘りたい。あとは疲れをしっかり取るだけです」とメダル獲得へ意気込んでいた。
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著者プロフィール

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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