黄金バッテリーが再び全国制覇へ――嘉手納の挑戦=センバツ直前リポート

松倉雄太

鉄壁守備で勝ち取った初の甲子園

黄金バッテリーを中心に鉄壁守備で初の甲子園出場を決めた嘉手納高 【松倉雄太】

 昨秋の九州大会、初出場ながら堂々たる戦いぶりで頂点に立った嘉手納高。優勝後のインタビューで眞玉橋元博監督は「本当に素晴らしい子たちで幸せものです」と話した。登録選手の平均身長が168センチという小柄な集団が、広いサンマリンスタジアムで大きく見えた。

 嘉手納中時代に全国制覇を果たしたエース・池原有(3年)、捕手・眞謝博哉(3年)の黄金バッテリーを中心に、バックも九州大会決勝までの9試合を失策4と鉄壁の守備を誇った。守り勝つ野球を見事に実践しての九州制覇。しかし、その守備は苦しい夏を乗り越えた賜物(たまもの)だった。
「夏場は守備練習ばかりだった」と主将を務める眞謝が振り返る。昨夏は初戦で中部商高に1点差負け。7月を待たずして発足した新チームは『猛暑』沖縄の夏休みを徹底的に守備の時間に割いた。1点へのこだわりから作り上げた守備。遊撃手・吉田俊紀(3年)と中堅手・糸数祐樹(2年)のセンターライン2人はこの絶対的な自信を胸に、九州大会まで無失策を誇ることになる。鍛え上げた守備に自信をつけたのは野手ばかりではない。一番刺激されたのがエースの池原だった。
「以前は負けず嫌いでムキになることがあった」(眞謝)というエースは、冷静に投げられる投球術を身につけた。報道陣から最速について質問を受けた際、「今はわかりません」と答えたのがその象徴だ。スピードを気にせず、キレのいい球で打たせる。そうすれば、味方は守ってくれる。この築き上げた信頼関係が九州制覇の原動力になったと言える。

攻守でチームを引っ張る主将・眞謝

攻守で嘉手納高を引っ張る主将の眞謝 【写真提供:高校野球ドットコム】

 もう一つ、支えとなっているのが眞謝の存在。新チームでは、試合中に伝令が出ることがなくなった。
「今までのチームでは伝令を出したことがありましたが、このチームは眞謝がしっかりとリードをしている。その流れを伝令によって変えたくない」と眞玉橋監督はその理由を語る。
 試合後の取材で報道陣を爆笑の渦に巻き込むなど、底抜けに明るいキャラクターと冷静沈着なリードでチームを引っ張る主将。神宮大会ではバックスクリーン直撃の一発を放ってベンチを盛り上げた。

 神宮大会では初めての人工芝に戸惑い自慢の守備が破たんした。ナインは打ちのめされたが、終盤は優勝した大垣日大高に1点差まで詰め寄る粘りを見せた。初心に帰るきっかけになったと前向きに捉えたい。
 夢ではなく目標とした全国制覇へ――守り勝つ野球を甲子園で再び見せる。

※学年は新学年

<了>
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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