史上初の沖縄勢2校出場は有力=センバツ出場校予想・九州地区編

松倉雄太

嘉手納高を初出場初優勝に導いたエース・池原 【写真提供:高校野球ドットコム】

 3月21日開幕するセンバツ高校野球大会の出場32校が1月29日に発表される。21世紀枠を除く出場校は昨秋の各都道府県大会、10地区(北海道、東北、関東、東京、東海、北信越、近畿、中国、四国、九州)に分けられた地区大会の成績を軸に29校が選出される。ここでは、選考において特に重要視される地区大会を総括し、各地区の出場校を予想。この項では、出場枠4の九州大会を振り返る。

嘉手納高、初出場初優勝でセンバツ切符を確実に

 今回の九州大会は、優勝した嘉手納高、4強の興南高と沖縄勢2校が勝ち残り、センバツ史上初めて同県からのアベック出場が有力だ。
 九州大会初出場でいきなり頂点まで登りつめた嘉手納高。初戦は地元・宮崎の1位校である日南学園高が相手と、完全アウェーの厳しい戦いだったが、これを逆転勝ちして勢いに乗った。準々決勝ではエース・池原有(2年)が終盤の佐世保実高(長崎)の追い上げをしのぐと、準決勝では左サイドハンドの山城星也(2年)が踊るようなピッチングで自由ヶ丘高(福岡)を3安打完封。決勝では中2日で休養十分の池原が宮崎工高(宮崎)を2点に抑えた。
 打線は2死からでも連打で得点でき、守備もキャッチャーで主将の眞謝博哉(2年)、ショートの吉田俊紀(2年)らセンターラインが安定。眞玉橋元博監督は、「九州という大きな舞台でも、普段通りの野球ができるか不安だったが、私の杞憂(きゆう)だった」と選手を讃えた。ただ明治神宮大会では、都会の空気と慣れない人工芝に戸惑い、自慢の堅守が乱れた。初の甲子園で独特の空気にいかに早く馴染めるかかがポイントになりそうだ。

興南高・島袋は文句なしの内容

 興南高はエース・島袋洋奨(2年)ら昨年春夏を経験した選手が多く残り、優勝候補の筆頭に挙げられていた。島袋を秋の段階で打てるチームはほとんどなく、県大会は27イニング無失点。九州大会では初戦の東海大五高(福岡)戦で1点を失ったが、自責点ではなく、準々決勝では長崎商高(長崎)を完封した。秋の大会を通じての防御率は「0」と文句のつけようのない内容。しかし、この島袋を温存し、砂川大樹(2年)を先発させた準決勝の宮崎工高戦(宮崎)では野手陣がまさかの5失策で足を引っ張った。これには我喜屋優監督も厳しい表情を崩さなかった。甲子園では2季連続で初戦敗退。島袋に頼らない野球ができなければ、経験豊富なメンバーでも同じことを繰り返してしまう危険を露呈してしまった形だ。

名将・末次監督引き入る自由ヶ丘高も選出確実

 地元勢で唯一勝ち進み決勝に進出した宮崎工高は旧名『大淀』で出場した1960年夏以来の甲子園出場を確実にした。左腕エース・浜田智博(2年)は全4試合で完投。183センチの長身でリーチが長く、やや首を下げたフォームは打者にとって打ちづらい。マウンドさばきも堂々としており、甲子園でも注目を集めそうだ。打線は俊足巧打の1番・佐藤亮(2年)、興南高戦で決勝打を放った4番・伊比井悠嗣(2年)らが中心。爆発力はないが、競り合いには強い。大会序盤にインフルエンザで数選手が欠場したが、雨天順延で大会が延びたことで最後には試合に復帰した幸運も味方した。
 4強に残った自由ヶ丘高は初の甲子園が確実。かつて柳川高(福岡)を9度甲子園に導いた末次秀樹監督がチームを率いる。エース左腕・小野剛貴(2年)は福岡で注目された好投手で、初戦の鹿児島城西高(鹿児島)を完封、準々決勝では夏の甲子園を経験した明豊高(大分)・山野との投げ合いを制した。嘉手納高戦でリリーフした右本格派の行弘剛(2年)も将来が楽しみな投手だ。反面、課題になったのが打線。初戦では4番の古賀翔太(2年)が3ランを放ったが、敗れた嘉手納高の山城に対してはほとんど何もできなかった。

 4強以外では明豊高の山野、宮崎商高(宮崎)の1年生エース・吉田奈緒貴、145キロ右腕・東海大五高の寺岡寛治(2年)らことしも九州には好投手が多い。そして注目が21世紀枠候補になった長崎商高(長崎)の145キロ右腕・竹野裕貴(2年)。準々決勝で島袋に投げ負けたが、2試合でわずか5安打しか浴びなかった。同校は最後の甲子園出場から23年。「選考が難しい場合は甲子園未経験か30年以上遠ざかっている学校」のルールに照らし合わせれば選出は微妙だが、九州地区の候補になるのは2回目。センバツに限れば58年出ておらず、サプライズ選出の可能性も十分考えられる。

<了>
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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