大混戦の近畿 5、6校目の選考は難航か!?=センバツ出場校予想・近畿地区編

松倉雄太

エースで4番、主将も務める岡本は神戸国際大付高の大黒柱 【写真提供:高校野球ドットコム】

 3月21日開幕するセンバツ高校野球大会の出場32校が1月29日に発表される。21世紀枠を除く出場校は昨秋の各都道府県大会、10地区(北海道、東北、関東、東京、東海、北信越、近畿、中国、四国、九州)に分けられた地区大会の成績を軸に29校が選出される。ここでは、選考において特に重要視される地区大会を総括し、各地区の出場校を予想。この項では、出場枠6の近畿大会を振り返る。

神戸国際大付高が5年ぶりのセンバツ出場へ

 前評判の高かった神戸国際大付高(兵庫)が5年ぶりに近畿のチャンピオンに輝いた。エースで4番、主将も務める岡本健(2年)が絶対的な柱だ。最速144キロの直球を誇るエースは、県大会でわずか1失点。やや調子を落としていた近畿大会では制球に苦しんだが、決勝では大阪桐蔭高(大阪)を相手に4安打完封。文字通り近畿ナンバーワン投手の称号を手に入れた。打線は準々決勝の天理高(奈良)戦でランニング本塁打の1番・石岡諒太(2年)を核弾頭に、つなげる打者がそろう。大苦戦した北大津高(滋賀)との初戦で9回にサヨナラ勝ちしたように、土壇場での強さも近畿大会では目立った。センバツ4強に進んだ5年前のチームを超える力は備わっている。

神港学園高、粘り強く勝ち抜く

 準優勝の大阪桐蔭高は、前年あと一歩でセンバツを逃した悔しさを見事に晴らした。エース左腕・福本翼(2年)は西谷浩一監督が「ウチの投手では初めてです」という主将に就任。持ち前の責任感でチームを引っ張った。同じ左腕の大家淳徳(2年)が故障でベンチを外れたのは痛かったが、1年生右腕の中野悠佑が成長。2年生の山中響佑にもメドが立った。投手陣の球を受ける捕手・江村直也(2年)の強肩にはプロも注目している。打線では2番の廣畑実、4番の河原右京など1年生が多い。戦いぶりから、打線のチームに思われがちだが、岡本に完敗した決勝で、まだまだ非力というのを実感したようだ。

 4強には立命館宇治高(京都)と神港学園高(兵庫)。京都1位の立命館宇治高は左腕・川部開大(1年)と捕手・小崎裕之(2年)のバッテリーがチームの支え。川部は府大会ではリリーフ登板が主だったが、近畿大会では3試合すべてで完投。1年生ながら度胸があり、粘り強さも持ち合わせている。卯瀧逸夫監督は、北嵯峨高、鳥羽高(ともに京都)に続いて3校目の甲子園となりそうだ。
 神港学園高は兵庫3位での出場と4強入りしなければセンバツ出場の選考で不利な立場なるが、粘り強く勝ち抜いた。特に延長14回の試合を制した福知山成美高(京都)との準々決勝が象徴的だった。エース・前仲正志(2年)はスバ抜けた球こそないものの制球力があり計算できる投手。3番の伊藤諒介(2年)は長打力が自慢で高校通算57本塁打(近畿大会終了時点)のスラッガーだ。

準決勝2試合がコールドで波乱含み

 準々決勝で敗れたのは、智弁和歌山高(和歌山)、育栄高(兵庫)、天理高(奈良)、福知山成美高の4校。例年ならこの中から2校が選ばれるが、ことしは準決勝2試合がコールドゲームだったため、選考が難しくなるのではとの声も聞こえる。試合内容、地域性、県大会の順位から智弁和歌山高と天理高は有力。ともに夏を経験した選手が多く残り、打撃面には自信を持っている。福知山成美高は初戦でPL学園高(大阪)を破り、神港学園高と延長戦を演じた。左腕・島本浩也(2年)の力投も光ったが、京都2位と立命館宇治高のベスト4でマイナス要素が大きい。
 エース・堀田健吾(2年)と4番・井村展章(2年)の強打が光った育英高。同県3校を選出しないセンバツの内規に照らし合わせれば、可能性はなくなるが、県大会で神港学園高を破った点がどう評価されるか。堀田のピッチングに魅力を感じている選考委員が多いのは事実。この当たりが選考委員会当日の焦点になりそうだ。

 このほかでは岡本から特大の一発を放った北大津高の小谷太郎(2年)、智弁和歌山高相手に6回まで1失点と好投した野洲高(滋賀)の右腕・沢裕也(2年)らがこの大会でキラリと光った。吉川大幾、勧野甲輝、多司将仁(いずれも2年)らドラフト候補が残ったPL学園高(大阪)は福知山成美高の強打者・桑原将志(1年)の一発に泣いた。
 21世紀枠候補には和歌山の向陽高が選ばれた。近畿大会では天理高に1点差まで迫った。県下公立初の中高一貫校で、前身の海草中学時代には野球殿堂入りを果たした嶋清一投手を擁して2度の全国制覇を果たしている。21世紀枠本命との声も大きい。

<了>
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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