山梨学院大附の碓井鉄平にみる良い選手のエッセンス=高校サッカー2回戦
初出場同士の対戦は山梨学院大附が制す
とはいえ、簡単に得点が奪えたわけではない。山梨学院大附の横森巧監督が「中盤は支配できるとは思っていたけれど、相手のDF4人が引くのでゴール前に行ってからが難しかった」と振り返ったように、前線までスムーズにボールを運ぶ山梨学院大附はゴール前でのアイデアとシュートの精度を欠いていた。その原因は前線2トップに存在感がなかったこと。この日は1回戦の野洲(滋賀)との試合で切れ味鋭いドリブルから何度も決定機を作ったFW伊東拓弥にいい形でボールが入らず、けがのため「まだ50〜60パーセントのコンディション」という187センチの大型2年生FW加部未蘭もベンチスタートだった。
それでも横森監督の「最後はドリブルかアーリークロスで」という指示通り、後半13分に左サイドからドリブル突破を試みたMF鈴木峻太がペナルティーエリア内で倒されPKを獲得。これを主将のMF碓井鉄平が落ち着いて決め、その後もうまく試合をコントロールしながら逃げ切った。
状況判断の良さが光る山梨学院大附の碓井
自陣深い位置でボールを奪い、カウンターを仕掛ける場面でもパスではなくドリブルで前線にボールを運ぼうとする選手の方が多かったし、アタッキングサードに入れば、限りなく100パーセントに近い確率で攻撃側はドリブル突破を試みる。強い個を育てるため、1対1に強い選手になってもらうため、ドリブルや仕掛けを奨励すること自体悪いことだとは思わないが、それよりも重要なことは状況判断で、意図的ではないにしろ、そうした奨励というか傾向が選手の状況判断能力を奪っているのではないか。
よって、この日の2試合で見た選手たちは平均的にボール保持の時間が長かった。ドリブルでボールを運ぶことが多いため、鋭く効果的なカウンターができない。守備時のコンパクトネスやカバーが良い割りには、攻撃時のサポートやパスコースが少ないのはこうした特徴に起因しているのかもしれないし、パススピードが遅い、強いロングボールやシュートを蹴ることのできる選手が少ない原因も仕掛けありきのプレーパターンにある気がする。
「良い選手」のエッセンスとは
「前半ボールを保持して、回しているうちに、相手の守備のズレが見えました。相手のDFラインがスライドしていくときにマークが浮くというのが分かっていたので、そこにパスを通していこうと狙っていました」
恐らく碓井の頭の中には「ドリブルありき」や「パスありき」の偏った考え方はない。その状況、場面に応じてどちらが最適かを判断し、選択している。この日の彼は得点を決めたとはいえ、豪快に3人、4人を抜いてスタンドを沸かせたわけでもない。しかしながら、彼のプレーからは「良い選手」のエッセンスがにじみ出ていた。華麗なドリブルや豪快な突破のできるタレントも面白いが、彼のような状況判断に優れた選手も際立つタレントであり、突出した個である。大会前から評価の高い選手ではあったが、あらためて山梨学院大附のサッカーとともに碓井のプレーや知性には注目してもらいたい。
<了>
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