広島観音を支える「もうひとり誰かのために」
<2回戦 広島観音(広島) 1−0 山形中央(山形)>

尚志の監督も警戒するFW竹内

 広島観音は山形中央を1−0で下し、2回戦を突破した。決勝ゴールはFWの竹内翼。59分、右サイドバックの木下卓哉が上げたクロスをファーサイドでうまくミートした。

 竹内の存在感は際立っており、3人がかりのマークをかわしてシュートに持ち込むと、記者の近くに座った観客2人は「3人だぜ……」と感心していた。また、試合終了間際には竹内からのクロスを期待する味方が中央へ走り込む中、まったく角度のないところから意表を突くシュートを放った。これは惜しくもニアサイドに外れたが、先の2人連れは「サイコー!」と声を上げていた。


 畑喜美夫監督は「どうしても自分でやっていきたいというのは竹内の良さ。卒業後はJに行くんで(竹内はファジアーノ岡山入団が内定)、それを大事にしていきながら、『もっと早くはたけ』とか言うんじゃなく、自分で判断させたい」と期待を込めて語っていた。

 3回戦、広島観音に臨むのは尚志。「広島観音戦のポイントとなるのは11番(竹内)の強引な突破をいかに止めるか。彼はどこからでもシュートを打ってくる」。尚志の仲村浩二監督はそう言って竹内を警戒していた。

受け継がれる主将の伝統

 山形中央戦の後半途中、左サイドバックの岡崎和也(岡山入団内定)が太ももを痛めた。畑監督はすかさずウオーミングアップをしていたDF小林祐輝を指で呼ぶ。しかし結局、岡崎はそのままプレーを続行した。その判断は主将・柳田優介によるものだった。

「『小林を入れようか』と監督に言われました」と柳田。「しかし、いきなり選手を代えても対応できるかどうか。残り時間のこともあったし、そのまま代えずにいくことにしました」

 畑監督が小林を呼んだのは、もし柳田主将が交代に同意したらすぐにピッチに投入できるよう対応するため。広島観音ではあくまで交代の最終判断は選手に任されている。

「今日の最後は山田(帆久斗)が足にきていました。でも結構ハマってもいたので、『このままいきたい』と監督に言いました。試合前日の夜には『こういう場面だったら、こういう選手を入れてほしい』とか、『試合中、僕が言ったら選手を代えてほしい』とか監督にお願いすることもあれば、監督から『試合の流れを見て代えてもいいか』と僕に確認してくることもある。また、ピッチの中から僕が『交代をお願いします』と言うこともある。今日は前半が終わった時点で交代なしと僕が言いました。選手の交代は副キャプテンや周りの選手と相談することもある。これは広島観音歴代のキャプテンがやってきたことです」


 広島観音をこれまで2大会取材してきたが、選手の自立と判断を尊重する指導法は今もなお健在だった。サッカーはハプニングの連続のスポーツ。この日はまず立ち上がりから、山形中央の出方が違っていた。

「僕らのスカウティングでは、山形中央はもっと上がってきてスペースがあるイメージだったが、ペナルティーエリアの前でラインを敷いていました。選手らにとってもプラン通りではなかった」と畑監督。しかし、ゲームプランの立て方をはじめ、多くの判断を選手に委ねている広島観音は、ピッチの上で選手たちが戦い方を修正する癖が身についている。

「今回のテーマは、どういうふうにゲームの中で子供たちが変えていくか――だった」という畑監督が“ベンチの中の監督”なら、柳田主将は“ピッチの上の監督”なのである。

中田徹
中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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