第88回高校サッカー選手権展望(後編)=鹿島〜神村学園
群雄割拠のブロックを勝ち抜くのは?
八千代は最激戦区を突破した自信を胸に
八千代のゲームメークを担う長澤。激戦区を勝ち抜いた意地を全国の舞台で見せられるか 【平野貴也】
今年のチームは前評判が高かったが、インターハイ県予選(決勝トーナメント)でまさかの1回戦負け。圧倒的に攻め込みながらも、数あるチャンスをモノにできず、ロスタイムにカウンターから失点して敗れた。それが始まりだった。この敗戦を教訓に、「いいサッカーをしても勝たないといけない。リスク管理と決定力を課題にやってきた」(砂金伸監督)。これによりチーム力はアップし、選手権県予選では4試合で9得点・1失点の好成績で見事に結果を出した。
強固な守備陣に目を向ければ、「控えと間違われる」(砂金監督)168センチのGK永村達郎の成長も見逃せない。180センチ台のGKもいる中で、小柄な永村が正GKを任されているのにはもちろん理由がある。鋭い反応と安定したキャッチング、遠距離、そして至近距離からのシュートを巧みにストップする実力を備えているからだ。県予選準決勝・流通経済大柏戦では1−0で迎えた後半、相手のPKを横っ飛びでセーブ。同点に追いつかれそうな大ピンチを防ぐと、続く習志野との決勝でもPK戦での勝利に貢献するなど、3年ぶりの選手権出場の原動力となった。
前回出場時はFW山崎亮平(磐田)、MF米倉恒貴(千葉)らを擁して、ベスト4に進出した。「今年のチームはその時のチームに匹敵する力を持つ」と砂金監督も手応えを感じている。「全国で勝つより難しい」千葉県予選を突破した自信を胸に、3年前よりも上の決勝進出を目指している。
柴崎擁する青森山田の目標は全国制覇
U−17W杯で日本の司令塔を務めた柴崎。青森山田の浮沈を左右する絶対的な存在だ 【安藤隆人】
そして、その柴崎の脇を個性的なメンバーが支える。FW野間涼太は今年急成長を遂げた選手の一人だ。昨年途中まではサイドアタッカーだったが、FWに転向するとポストプレーに磨きがかかり、持ち前の体の強さを生かして前線で起点となった。懐の深いボールキープ、反転からのシュートが新しい武器となり、試合を重ねるごとにゴール前での存在感を高めていった。
右サイドは弾丸ドリブラーのMF遠藤竜史と青森山田中出身のDF横濱充俊が、左サイドは緩急をつけたドリブルとシュートセンスがウリのMF三田尚希と、U−17日本代表のサイドバック・中島龍基が果敢な突破でサイドを制圧。守備も182センチの赤坂勇樹と、ナショナルトレセンにも選ばれたことのある2年生GK櫛引政敏ががっちりと固める。
1つ懸念されるのは、インターハイ直後の石川フェスティバルでひざの前十字じん帯断裂という大けがを負ったMF椎名伸志の回復具合だろうか。プロのスカウトからも注目を浴びていた彼は、正確な左足と、豊富な運動量を武器に、柴崎と全国ナンバーワンボランチコンビを組んでいただけに、その離脱はチームにとって大きな痛手となった。高円宮杯全日本ユースでは、椎名不在が響き攻撃の構築に苦戦。ギリギリで決勝トーナメント進出を果たしたが、ラウンド16でジュビロ磐田ユースに0−3で敗れた。
とはいえ、得るものが多かったのも事実だ。全国トップレベルのチームとしのぎを削ったことで選手たちは経験を積んだ。さらに椎名不在でも戦えることを証明すべくトレーニングに取り組み、青森山田中出身の1年生・差波優人が台頭してくるなど、チーム力の底上げにもつながった。
それだけに、あとは椎名がどれくらいのコンディションでプレーできるかが、目標とする全国制覇への大きなポイントとなる。果たして、高校ナンバーワンボランチコンビは復活するのか。ここは注目すべき点として外せない。