鷹の象徴を継承した“小さな巨人”今宮=鷹詞2009〜たかことば〜

田尻耕太郎

小柄でもホームランは打てる

「常勝ホークス」の象徴が18歳の新人に受け継がれた。12月9日、福岡ソフトバンクの入団発表が福岡市内のホテルで開かれ、ドラフト1巡目入団の今宮健太(明豊高)が「背番号2」をつけることが明らかになった。
 福岡ソフトバンク、そして前身の福岡ダイエーの背番号2といえば、城島健司だった。1995年入団からの11年間で1117試合に出場しMVP1度、シーズンフル出場3度、通算211本塁打を放ち、その間にチームは3度のリーグ優勝と2度の日本一を果たした。強打の捕手は間違いなく福岡のヒーローだった。しかし、2005年オフに米大リーグ・マリナーズに移籍。そしてこのオフ日本球界へ復帰したが、袖を通したのはタテジマのユニホームだった。
 2人はくしくも高校の先輩と後輩。伝統を継承する今宮は「正直な気持ち、自分が『2』をつけていいのだろうかと不安になった」という。しかし、気持ちはすぐに前向きになった。
「非常に重たい番号だけど、期待にこたえたい。先輩の城島さんを打撃で越える実績を残して、今宮に2番を渡して良かったと言われるような選手になりたい」
 今宮は身長171センチと小柄ながら高校通算62本塁打の実績をつくった。城島の70本には及ばないが、今宮は投手としても最速154キロをマークし多くの野球ファンを驚かせた。プロでは内野手として勝負する。
「目標とする選手は松井稼頭央さん。3割、30本塁打、30盗塁という壁を越えたい。そしてまずは2000本安打を越えて、その上をさらに目指したい。目標は常に高く持ちたい」
 小さな巨人になる――筋力をつければプロの世界でもホームランは打てると自信をのぞかせた。

憧れではなくライバル

 球団から配られたアンケート用紙には「3000本安打を打ち、盗塁王にもなる」とも書き込まれていた。入団発表の取材を何年もしてきたが、ここまで壮大な目標を言い切る選手はまれだ。しかし、ただのほら吹きではないと感じてしまう。今宮の言動には、何か周囲を惹き付けるものがある。
 担当した福山龍太郎スカウトは「身体能力の高さ。そして順応性の高さ」を高く評価したが、それ以上に「彼の目」にほれ込んだという。人間、目を見れば分かる。球団広報担当者は「この時期は新人たちへの説明事項が多い。彼らへ話しているときに鋭い視線を感じた。それが今宮だった。彼は人の話を聞くときに絶対に目を逸らさない」とも話した。そして、筆者自身もまた惹き付けられた。
「僕はホークスが好きで、ホークスに入りたくてずっと野球を続けてきた。川崎(宗則)さんのような選手になりたいと思っていました。僕にとっては憧れの存在。でも、これからは憧れではなくライバル。川崎さんを抜くという気持ちでやっていきたい」
 憧れではなくライバル。素晴らしい言葉だ。また、会見の直前にも今宮と顔を合わせたが、彼は緊張している素振りを全く見せず、大学生の選手にまで「何とかなるでしょ」と声をかけていたのに驚いた。何気ないひとつひとつの言動から、大物独特の匂いが感じ取れる。楽しみな新人が入ってきた。

菊池がいたから今の自分がある

 また、今宮自身が「永遠のライバル」と口にするのが埼玉西武に入団した菊池雄星だ。今春の選抜2回戦で菊池擁する花巻東高と対戦。弱点とされた内角を突かれ「自分が打てずに負けた」。それから今宮は内角球の克服に取り組み、春以降で30発以上の本塁打を量産したのだ。「菊池がいたから今の自分がある」と公言する。
 同じパ・リーグに入団したことについては「彼とは縁があると感じている」という。
「高校では負けた。プロでは絶対に勝つ」
 プロ球界の新たな伝説を生むような活躍を互いに期待したい。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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