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甲府のJ1昇格を阻んだもの
2005年とは異なる結末

痛感した勝ち点1の重み

J1昇格を逃した甲府。昇格を決めた3位湘南との勝ち点差はわずかに1だった
J1昇格を逃した甲府。昇格を決めた3位湘南との勝ち点差はわずかに1だった【写真は共同】

 シーズンオフになるとファンやメディアは「あの試合に勝っていれば」と最終順位の原因を天王山に求め、「たら・れば」を口にする。一方で監督は「シーズンを通しての結果であり、これが実力」と結果を受け入れる。

 ヴァンフォーレ甲府はJ2第3位で昇格を決めた湘南ベルマーレにわずか勝ち点1、届かなかった。それを全51試合の結果とする甲府の安間貴義監督の見方は正しい。同様にJ2第49節で湘南に敗れたから昇格できなかったという意見が甲府サポーターにあるなら、それも等しく正しい。重要なのは甲府が3位以内に入れなかったという事実。そして3位以内まであと勝ち点1、J1昇格圏内と圏外を隔てる境界線ギリギリまで迫ったということだ。


 昇格に必要な勝ち点1を獲得できなかった理由は何だろうか。

 最終節の2日後、山梨県昭和町の押原公園で練習にいそしむ甲府を訪ねた。論客のDF山本英臣に「今季の甲府は昇格に値するチームだったと思うが、結果がかみ合わなかった。運がなかったのではないか」と水を向けると、彼はこう答えた。

「昇格するには、実力以外にも運がすごく必要になる。そう(佐久間悟)GMと話したことがあります。きわどいシュートが入ったり、決められたり。そういうところもあると思うんですけど、結局、昇格したのが湘南だったということは、ウチは昇格に“値する”チームであったことにしかならない。このすごく大事な経験を、忘れないでやっていくしかないと思います。

 甲府が本当の意味で昇格争いをしたのは2005年と今年だけ。ここ何年か昇格を争ってきた湘南は、その勝ち点1の重みを、ウチのチームよりも分かっている気がする」


 昨季の入れ替え戦で、あと1ゴールが奪えずJ1昇格を逃したベガルタ仙台は、その悔しい思いをバネに、今季優勝でJ1昇格を果たした。もとより、ズデンコ・ベルデニック政権時代から指導してきた手倉森誠監督のサッカーが浸透。機は熟していたが、入れ替え戦の経験が最後のひと押しになった。

 J2に降格したクラブがJ1に返り咲くには、それ相応の時間が必要なのではないだろうか。だとするなら、甲府が今季昇格できなかった経験は、仙台にとっての入れ替え戦同様、熟成するための麹(こうじ)となるのかもしれない。

昇格へ必要な条件とは?

今季限りでの退任を決めている安間監督。目標としていたJ1昇格を果たせなかった
今季限りでの退任を決めている安間監督。目標としていたJ1昇格を果たせなかった【後藤勝】

 運が介入する余地がないほど「詰んだ」状態、チェックメートまで持っていくこと。つまりいやが応でも昇格できる状態にまで、クラブの体制やチーム力を整える。それが昇格のための王道なのだろう。

 それに対して05年の甲府の昇格は、そこまで確実なものではなく、若干の奇跡が影響していた。第42節コンサドーレ札幌戦、ロスタイムに3点を取っての逆転勝利(4−2)がなければ“たけし(当時の監督である大木武)甲府”の昇格はなかった。ミラクルを呼ぶほどの勢いを作るか、それともミラクルを寄せ付けないほどに鍛え上げるか。J1へ進むためには、いずれかの道に乗らないといけないのだ。


 今季限りでの退任を決めた安間監督はこう言った。

「(敗因が)そこ(運)になるのが悔しくて、いろいろと方法を考えるんです。でも河原(和寿=栃木SC=)の得点のように、『なぜそれが入るの?』という見たこともないようなシュート(第10節の先制ゴール、右45度からの狙い澄ましたミドルシュート。以降25節、45節の対戦でも得点を重ね、河原は甲府の天敵となる)による失点が多かった。ウチは『ここでこうだからディフェンスラインが下がり……』というように理詰めの得点ばかり。ラッキーはあまりないです、正直。よく言われますよ、おまえ、運がないって(苦笑)」


 J1昇格2年目の07年の甲府は、日本代表も及ばないパス回しでボールをキープするものの、バイタルエリアやペナルティーボックスを固めた相手守備を破れず、また攻撃時に寄せたボールサイドとは逆サイドのスペースを使われて失点するなど、目指すべきサッカーが機能しない状態で降格した。

 そこで安間監督は、大木前監督のサッカーにいくつかの要素を加え、さらにすきのないチームを作り上げた。

「あれだけ(ボールに)寄せられるんだったら、広がったスペースを使おう、守りの位置をはっきりしようと、失点を少なくしていった。そこが基本で入ったチーム。実際、仕掛けのタイミングも早くなったし、ゴール前のシーンも増えた。そこはうまくいったと思います」

 しかしそのチャンスを逃し続けたことが、勝ち点差に響いた。

 失点せずに決定機を数多く作り出す──攻撃サッカー志向のチームとしては理想的な状態にまで持っていけたが、得点力不足が浮き彫りになった。決定機そのものが少なければ、フィニッシュの巧拙を判断する材料が少ないことになり、得点力があるかないかは分かりにくい。しかしDFのマークがないどころか、GKがいない状態で外すとなれば、これは明らかにシュートがつたないのだ。それは明確な課題である。

「シーズン中も言いましたが、シュートミスや、くだらない理由で与えたPKが多かった。ミスですべてが台無しになるということをもう一回肝に銘じて、来シーズン契約する選手も、もうひとつ(段階を)上がるんじゃないかな」


 山本は「イエローカードやマネジメントのケアはもっとやらないとダメ。そこまで突き詰めないといけない」と話す。いいサッカーをするだけでなく、雑な部分を丁寧に磨いていくこと。よりプロらしい追求が、さらなるレベルアップにつながるのだ。

後藤勝

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWeb/メールマガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」(http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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