南米王者エストゥディアンテス、3度目の“奇跡”を=クラブW杯

神秘的なクラブ、エストゥディアンテス

クラブ世界一を決める舞台でも“奇跡”を起こせるか 【Photo:アフロ】

 アルゼンチンのエストゥディアンテスはどこか神秘的なクラブだ。国内では中堅どころで、リーグ制覇もプロ化した1931年からたった4回しかない。だが、南米の国際大会であるコパ・リベルタドーレスで、国内リーグと同じ4回チャンピオンになっているのだ。この成績に勝るのは、優勝7回のインデペンディエンテと、6回のボカ・ジュニアーズだけである。エストゥディアンテスは2009年、節目となる50回目のコパ・リベルタドーレスを39年ぶりに制し、12月9日にUAE(アラブ首長国連邦)で開幕する「FIFAクラブワールドカップ UAE 2009」(クラブW杯)への切符をつかんだ。

 1905年8月4日に設立されたエストゥディアンテスは、ブエノスアイレス州のラ・プラタを本拠地とするクラブである。チーム名は「学生」という意味で、これは設立当初の首脳陣が全員学生だったことから来たものだ。さらに、学生が昔からネズミを使って実験を行ったことから、“ネズミ捕り人”という愛称が生まれた。

 クラブが大きく飛躍を遂げたのは、60年代半ばのことだ。知将オズワルド・ズベルディアが監督に就任すると、チームに戦術を注入した。人気と実力を兼ね備えた“ビッグ5”(ボカ・ジュニアーズ、リバー・プレート、ラシン・クラブ、インデペンディエンテ、サン・ロレンソ)の独壇場だった国内リーグにあって、67年に5クラブ以外で初めてリーグ制覇を果たしたのがエストゥディアンテスだった。
 翌68年には、コパ・リベルタドーレスでラシン・クラブ、ブラジルのパルメイラスといった当時の強豪チームを破って優勝。その後、69年、70年と大会を制し、3連覇を果たした。特筆すべきは、68年のインターコンチネンタルカップ(現クラブW杯)である。ボビー・チャールトンやジョージ・ベストらを擁したマンチェスター・ユナイテッドを下し(2試合合計2−1)、敵地オールド・トラフォードで戴冠した。その2年前に行われたW杯イングランド大会の準々決勝では、アルゼンチンがイングランドに0−1で敗れていた。

2つの黄金時代

 黄金時代のエストゥディアンテスには、カルロス・ビラルド(後に監督として86年W杯メキシコ大会で優勝)、カルロス・パチャメ(ビラルドの監督当時のアシスタントコーチだった)、ラウル・マデロ(アルゼンチン代表のドクターで、現在はFIFA=国際サッカー連盟=のコンサルタント)、ファン・ラモン・ベロン(言わずと知れたファン・セバスティアン・ベロンの父)といった顔ぶれがいた。
 80年代に入り、ビラルドは60年代に活躍したDFのエドゥアルド・ルハン・マネラを従えて監督としてクラブに復帰。82年にリーグ優勝を成し遂げると、アルゼンチン代表の指揮官として引き抜かれたのだった。

 83年の時点ですでに、エストゥディアンテスは4度目のコパ・リベルタドーレス優勝に近づいていた。だが、グループリーグでこの年の覇者グレミオ(ブラジル)にきん差で敗れ、涙をのんだ。この時のチームには、ホセ・ルイス・ブラウン、アレハンドロ・サベージャらがおり、後者は現在、エストゥディアンテスの指揮を執っている。

 今日のエストゥディアンテスが第二の黄金期を迎えているといっても過言ではないだろう。06年にはアペルトゥーラ(前期リーグ)で優勝。しかも、3試合を残して首位のボカに6ポイント差をつけられていたところから逆転したのだった。08年には、決勝でブラジルのインテルナシオナルに敗れたものの、コパ・スダメリカーナでファイナリストとなり、翌年についに南米王者に上り詰めた。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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