最下位で変わった立正大 創部61年目の日本一=40回明治神宮大会・高校の部総括

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鉄壁の守りと一体感で頂点へ

初出場優勝を果たし、ナインに胴上げされる立正大の伊藤由紀夫監督=神宮 【共同】

 春の2部降格の危機を乗り越え、立正大(東都大学)が秋の日本一に輝いた。創部61年目の神宮大会制覇に、伊藤由紀夫監督は「(リーグ戦初優勝に続いて)こんな短い間に2度も胴上げされて……。感無量です」と感慨深げに目を細める。
 屈辱の最下位がチームを変えた。守備のミスから崩れ、試合を落とし続けた春季リーグ戦。その反省から、「守備練習から何でもきちんとやる。一球一球、雑にやらない」(石名坂規之主将・4年=学法石川高)ことをチーム全体が心がけた。その結果、守りからリズムをつくる野球ができるようになり、神宮大会3試合で無失策、失点もわずかに1という堅守につながった。準々決勝、決勝の2試合に先発し計14回を無失点と優勝の原動力となった小石博孝(4年=鶴崎工高)も「投げてても心強かった。楽しくピッチングができました」とバックの頼もしさに笑顔を見せた。
 
 指揮官のさい配にも変化が見られた。それまではある程度メンバーを固定し戦っていた伊藤監督だったが、控え選手を起用する機会が増した。それによって「全体の意識が変わり、個人練習も増えた」と石名坂は振り返る。レギュラーと控え選手の競争がチーム力の底上げにつながった。
 そして、競争がもうひとつの効果を生んだ。チーム内が活発になることで出た一体感だ。「自分もそうですが、(最終的に試合に出れなくても)みんながみんな、腐りそうなときでも、裏方でもがんばってくれた。『チームのために』。そのひと言です」と石名坂は胸を張る。鉄壁のディフェンスと一体感。この2つを武器に登り詰めた頂点だった。

目を引いた150キロ左腕・大野の投球

 それ以外のチームでは、佛教大(京滋大学)の大野雄大(3年=京都外大西高)のピッチングが目を引いた。左腕から繰り出される150キロのストレートは威力絶大。準々決勝では、「真っ直ぐで押そうと決めてました」という強気の投球で九産大(福岡六大学)を2安打に抑え、完封勝利を収めた。
 対戦した九産大・白川貴一主将(3年=九産大九州高)は「古川(秀一・日本文理大)さんとはまた質の違う、重みのあるボールだった。全国は甘くない」と対戦経験のあるドラフト1位左腕を引き合いに出し、脱帽した。しかも、この試合の全101球のうち、変化球は「7、8球」(大野)と言うから恐れ入る。今後は「変化球にも頼れるようになればもっと楽に投げれる」と投球の幅を広げ、神宮に帰ってくるつもりだ。

 大野以外にも、神宮の常連・創価大(東京新大学)を完封した九産大の榎下陽大(3年=鹿児島工高)らの活躍が光った。今夏の全日本選手権で旋風を巻き起こした富士大・守安玲緒(4年=菊華高)もそうであったが、神宮を本拠地とする東京六大学、東都大学以外にも好選手がいることをあらためて実感した大会でもあった。 
 しかし、この2リーグと地方リーグ所属チームに差があることも事実である。準決勝で明大(東京六大学)を破り、準優勝に輝いた上武大(関甲信大学)の谷口英規監督が「(明大に勝ちはしたが)東京の2リーグには選手個々のレベルでまだまだ及ばない」と言えば、準決勝で立正大に敗れた佛教大・宍戸光正監督も「投・守・攻、すべてにおいて格段に東都が上」と口をそろえた。
 立正大の優勝により、東都大学勢の4連覇となった今大会。全日本選手権も含めれば、7季連続でこの2リーグから日本一が出ている。東京六大学、東都大学の“2大リーグ状態”に風穴を開けるためにも、地方リーグ所属チームの奮起に期待したい。

<了>
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