初出場で初優勝飾った大垣日大=第40回明治神宮大会・高校の部総括

松倉雄太

14打数9安打と打ちまくった大垣日大・森田

 全国10地区の秋季大会優勝校が集結した第40回記念明治神宮野球大会・高校の部は、11月14日から19日まで神宮球場と神宮第二球場で行われ、初出場の大垣日大高(東海地区・岐阜)が優勝を飾った。
「奇跡に近いと言うか、野球の重さ、怖さの方が多いのかな」
 優勝を振り返った65歳の阪口慶三監督。決勝の東海大相模高(関東地区・神奈川)戦では自信のあった守りが乱れ4失策。それを、左打者8人の打線が取り返した。特に目立ったのは、3試合で14打数9安打5打点、打率6割4分3厘と大活躍した森田将健(2年)。東海大会では6番や7番を打っていた森田をこの神宮大会で1番に起用した阪口監督のさい配がずばりと当たった。3番・後藤健太、4番・安藤嘉朗と1年生がクリーンアップに座るだけに、思い切りのいい2年生が1番で引っ張る効果は大きい。
 投手では1年生エースの葛西侑也(かっさい・ゆうや)が全国の舞台でも躍動。12奪三振で完投した準決勝の今治西高(四国地区・愛媛)戦のヒーローインタビューでは「出来すぎです」と首をすくめた。左スリークォーターでリリースが横から出てくるため、打者にとっては打ちにくい。球速以上のキレもあり、対戦した打者が差し込まれる場面が何度も見られた。ただ、怖いもの知らずの1年生という反面、時折マウンド上で若さも顔をのぞかせ、さらなる投球術の向上へ努力してほしい。
 決勝でリリーフした阿知羅(あちら)拓馬(2年)も将来性を感じさせた。187センチ85キロの恵まれた体格から投げ下ろされるストレートは威力十分。「宮崎情熱ボーイズ」時代から注目されていた右腕。本来ならこのチームではエース候補だったが、秋の公式戦ではこの決勝が初登板。練習試合を含めても県大会前の名古屋高戦以来だったが、それを感じさせない堂々としたピッチングで試合を立て直した。この好投を来春への自信とつなげてほしい。

貫録を見せた東海大相模・一二三

 準優勝に終わった東海大相模高。関東大会4試合を一人で投げ切った149キロ右腕・一二三(ひふみ)慎太(2年)は神宮の舞台でも貫録を見せた。準決勝の帝京高(東京)戦では5安打完封。カーブ、スライダー、チェンジアップ、フォークにシンカー系のボールと本格派投手には珍しく球種が多彩。ピッチングセンスも高校2年生としてはずば抜けており、来春の選抜が非常に楽しみだ。
 ただ、チームとしては現状、エースで主将である一二三の存在が大きすぎる。門馬敬治監督が関東大会優勝後に「一二三のような存在があと2、3人出てきてくれればいいのだが」と話していた。その言葉の意味が一二三が先発しなかった決勝の選手起用につながっていると思われる。ケガで神宮大会ではベンチを外れた本来正捕手の大城卓三(2年)など、来春ではメンバーの入れ替えも予想される。

 準決勝で敗れた帝京高今治西高もこの神宮を魅了したチームだった。夏のメンバーが多く残る帝京高はエースの鈴木昇太(2年)、1年生右腕の伊藤拓郎ら投手陣には絶対の自信を持っている。打線は現状ではまだまだだが、来春には再び甲子園を沸かせてくれるだろう。
 今治西高の大野康哉監督は、この神宮大会でも徹底的に勝ちにこだわったさい配を見せた。エンドランやホームスチールなど動きに動いた。大野監督は、「1年生の多いチーム。いい経験はしたが、非力さ、迫力不足を痛感した」と話し、さらなるチームの引き締めへ思いを強くしている。来春の選抜大会ではポイントになりそうなチームに思えた。

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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