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米本、平山ら新世代が導いた再戴冠
東京ガス戦士の思いを胸に

優勝の陰にあった退団する2選手の存在

米本の先制点は、新世代の台頭を象徴するものだった
米本の先制点は、新世代の台頭を象徴するものだった【写真は共同】

 カップ戦・ファイナルのメンバーを見極める上で重要な試合と位置づけていたサテライトリーグの湘南ベルマーレ戦。江戸川区陸上競技場のほのかな照明にさらされ、懸命な表情でボールを追う選手たちの中に、ボランチでコンビを組み、中盤のセンターを締める浅利悟と藤山竜仁の姿があった。

 翌オフと4日間の練習を経て迎えたナビスコカップ決勝の川崎フロンターレ戦。メンバー表に浅利の名前はない。ピッチに送り込まれたサブスティテューションは長友佑都、平松大志、そして3人目は佐原秀樹だった。藤山の出番はなかった。

 今季限りで青赤のユニホームを脱ぐ2人がともに躍動する光景を公式戦で見るのは、あのサテライトリーグが最後になるのだろうか。


 ナビスコカップの閉幕後、味の素スタジアムにて行われた優勝報告会で城福浩監督は苦しい胸中を吐露した。

「サリ(浅利)が小平(FC東京の練習場)で一番いい準備をしていました」

「サリは昨日、小平のロッカールームで号泣したそうです」


 出場できなくても準備を怠らない浅利と藤山がいい手本になっている、とは、これまで城福監督が何度となく口にしてきた言葉だ。そして小平で結果を出した選手のみが、味スタや国立競技場のピッチに立てるのだという基本原則も──。さらに言えば、その原則を曲げない範囲で、選手の気持ちを配慮したと思しき起用法も目にしてきた。出場機会の少なかった昨季、ブルーノ・クアドロスを古巣相手のコンサドーレ札幌戦に初先発させたのは、偶然ではないだろう。

 天皇杯を除けば最後の決勝、最後の国立。ナビスコカップが浅利と藤山の大会になるかもしれないとかすかな期待を持ったファンもいたはずだ。

 しかし東京ガスFC時代を知る戦士たちは、国立のピッチに立たなかった。

米本のゴールに象徴される世代交代

今季限りで引退する浅利。彼ら東京ガス時代からの選手の思いを若い世代は受け継いでいる
今季限りで引退する浅利。彼ら東京ガス時代からの選手の思いを若い世代は受け継いでいる【後藤勝】

 ナビスコカップウイークを迎えた小平で、引退を決意した理由を尋ねると、浅利はこう答えた。

「僕がケガから戻ってもメンバーに入れなかったり、メンバーに入っても、ゲームを締めるときにはサイドを固めたりして、僕の存在がなかなか見いだせなかったのも事実。それとヨネ(米本拓司)と梶山(陽平)の成長が大きい」

 米本への評価は高い。

「ヨネはほんと、気持ちも感じられるし。どれだけ泥臭くやれるか、相手のために何ができるかを考えられる選手。それが僕の売りだったんですけど」

 もちろん浅利だって手をこまねいていたわけではない。藤山とは常々「このままじゃヤバい」と話し合い、危機感を持ちながら自分を鍛えてきた。


 来季は戦力外である旨を伝えられた藤山は、即座に退団を決断した。FC東京の指導者になりたいという意思は強いが、そのまま引退するよりは、よそで何かを学んだ上で戻ってきたいという思いが勝った。移籍しての現役続行。他クラブの強化担当者にプレーを見てもらう意味でも、11月3日の国立は重要なショーケースになるはずだったが、アピールの機会は訪れなかった。

「最近は、最後あと10分の締め役としてやっているので、それで出られれば一番いい。勝っている状態だろうし」


 5年前の決勝、ジャーンの退場でめぐってきた、センターバックでのボール奪取ほど目立つプレーではないだろう。リードを保ちつつ、中盤サイドを守り、ゲームをクローズする役目。でも、悪くはない。評価の対象になるプレーだ。

 けれども、交代で5−4−1の中盤両サイドを固めたのは長友と平松であり、ストッパーの位置でボールを跳ね返したのは佐原だった。

 そして守備にほん走しつつ無回転シュートで先制点を決めたのは、春先から「サリさんのようになりたい」と公言していた米本だった。

後藤勝

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWeb/メールマガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」(http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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