制球力で勝負する熱き右腕――法大・二神一人=2009年プロ野球ドラフト会議注目選手

矢島彩

抜群の制球力で春の大学日本一に輝く

全日本大学選手権でMVPを獲得した法大のエース・二神 【島尻譲】

 今春の東京六大学リーグ戦では4勝負けなしの成績で、法大を6季ぶりのリーグ優勝へ導いた。さらに全日本大学選手権でも初戦の無四球完封をはじめ、全4試合に登板し日本一。二神一人投手(4年=高知高)の評価は、この期間に急上昇した。
 米大リーグのスカウトからも熱視線を送られるようになった二神だが、過去3年間の勝ち星はたったの2勝。急激に成績を伸ばした要因については、「特別なことはしていなくて、最後だから優勝したいという意識の問題だと思います」と分析する。ラストイヤーに懸ける気持ちが彼の能力を引き出し、勝てるピッチャーへと成長させたのだ。

 ピッチングについては、「スピードよりもキレ。そして、いかにコーナーを突けるかの方が大事」と繰り返している。ストレートは最速150キロを誇るが、力で押して空振りを取るタイプではない。今春のリーグ戦においては38回3分の1を投げて4四死球(1試合平均0.8個)。抜群の制球力を武器に打者を打ち取っていく。これが二神のピッチングスタイルだ。
 大学選手権で初対決した関西国際大の打者は「内、外へ投げ分けられて、かわすピッチングをされた」と語っていた。さらに同大会の白鴎大戦。二神は決め球を何度もカットされる苦しい投球になった。それでも被安打6で完封勝利を挙げる。安打数は同じだったが、試合に敗れた白鴎大・藤倉多祐監督は「二神君には失投がなかった」と、その集中力に脱帽していた。

チームを考えればこそ……同級生に涙の訴え

 6月に日本一に輝いた後、今までにないハードスケジュールが続いた。全日本の選考合宿、日米大学野球、アジア選手権、そして夏のオープン戦。「野手ならこなせると思うが、二神は疲労も多いし大変だったと思う」(法大4年・亀谷信吾外野手)。
 そんな状況でも、二神の頭の中はチームのことでいっぱいだった。6月下旬、同級生の投手がけがを理由に練習を休みがちになった。ミーティングで二神は、同級生に練習に出てほしいと涙ながらに訴えたという。その訴えには、最後なのだから頑張ろうという励ましと、下級生が見ているのだから自覚を持ってほしいという思いが込められていた。

 1年生にも気さくに話しかけるなど「数年前の法大ではあり得なかったこと」(石川修平主将)をさりげなくする二神。試合後の囲み取材でも、その態度はほかの投手とは少し違う。負けた試合の後でも変に開き直ることもせず、口数が減ることもない。二神はいつも、同じように人に接するのだ。
 法大のもう1人のドラフト候補、武内久士投手(4年=徳島城東高)は、最速154キロのストレートで押す力投派だ。天才肌の武内に対し、二神はまじめで自然体。タイプの違う2人は、プロの世界でどう生き残っていくのだろうか。運命の日はもちろん、プロでの羽ばたき方にも注目したい。

<了>
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著者プロフィール

 1984年、神奈川県出身。『アマチュア野球』、『輝け甲子園の星』『カレッジベースヒーローズ』(以上、日刊スポーツ出版社)や『ホームラン』(廣済堂出版)などで雑誌編集や取材に携わる。また、日刊スポーツコム内でアマチュア野球のブログを配信中

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