ブエナビスタ、史上3頭目「牝馬三冠」へ躍動!=秋華賞 展望

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二冠女王ブエナビスタ、さあ三冠制覇だ! 【スポーツナビ】

 JRAの3歳牝馬三冠レースの最終戦・第14回GI秋華賞が18日、京都競馬場2000メートル芝で開催される。

 今年はなんと言っても、春のGI桜花賞&GIオークスを制した二冠牝馬ブエナビスタが話題を独占。前走のGII札幌記念で2着に敗れたためGI凱旋門賞挑戦は断念したが、日本の同世代牝馬の中で1頭抜けた存在であることには変わりない。ウオッカ、ダイワスカーレットらから続く“牝馬の時代”のニューヒロイン。女王の系譜継承へ、秋の淀でも春同様の爆発力を見せつけるか。牝馬三冠達成なら1986年メジロラモーヌ、2003年スティルインラブ以来となる史上3頭目の快挙だ。

 これを意地でも阻止したいのは、春二冠で連続2着と涙をのんだレッドディザイア。前哨戦のGIIローズSでそのレッドディザイアを撃破したブロードストリートはじめ、春二冠連続3着のジェルミナル、素質秘めるワイドサファイアの3頭出しで挑む栗東・藤原英昭厩舎勢も虎視眈々と逆転を狙っている。
 また、一瞬のキレなら負けない武豊騎乗のミクロコスモスも伏兵以上の怖い1頭だ。

 ブエナビスタが能力の違いを見せつけ史上3頭目の三冠達成か、それとも秋の新ヒロインによる逆転劇という結末が待っているのか。若き才女たちが織り成す三冠ストーリー最後の一冠、発走は18日15時40分。

札幌記念2着だったからこそ蟻洞を早期発見できた

蹄の病気にかかったものの早期発見で回復、まさに不幸中の幸いだった 【スポーツナビ】

 凱旋門賞を目指した始動戦で2着敗戦。二冠女王ブエナビスタの秋GIロードの幕開けは、“視界良好”だったのか、そうではなかったのか?
 競走馬としての“将来”を考えた場合、実はこの札幌記念2着は、神様が与えてくれた最良の結果だったのかもしれない。

 というのも、昨年10月のデビュー戦以来8カ月ぶりの黒星を喫した札幌記念直後。凱旋門賞挑戦の夢を絶たれ、また、右前脚に「蟻洞」(蹄の底にアリの巣のような小さな穴が開く病気)が発症していることも判明。普通だったら、このダブルパンチに春から続く好ムードが沈滞したとしても不思議ではない。
 ところが、この蟻洞は症状がごく軽度のもので、早期発見できたのも札幌記念で敗れたからこそ。敗因を探るために放牧先の牧場で検査をした結果、見つかったというのだ。

 まさに不幸中の幸い。もし札幌記念を制し、意気揚々とフランスへ旅立っていたとしたら、ブエナビスタは今後の競走生活に大きなダメージとなる蹄の病気をただいたずらに進行させていただろう。
 ただ「残念」のひと言だった札幌記念2着が今はむしろ、「負けて良かった」と思わずにはいられない。

仕上がりは万全 安藤勝「三冠を獲らせてあげたい」

オークスで繰り出した豪脚よ再び! ブエナビスタ(左)が秋の淀でも躍動する 【スポーツナビ】

 蹄の状態については、すぐさま適切な処置が施されたこと、またブエナビスタ自身の爪の伸びが早かったことなどから、順調に回復。9月19日に栗東に帰厩後は何の問題もなく乗り込みが開始され、先週、そして今週14日と、文句なしの伸びを追い切りで披露している。
 「直線の伸びには満足している。それに、札幌の時よりも馬体にハリがある」と松田博資調教師は満足の表情。三冠へ向け、仕上がりは万全だ。

 また、札幌記念に関してもこれは初めての古馬の男馬が相手で、脚質的に向いているとは言えない小回りコースの競馬場だった。
 そんな不利な条件の中、ただ1頭大外をブン回してメンバー中で最速の上がり脚を繰り出し、1着ヤマニンキングリーにタイム差なしまで詰め寄った競馬内容は、むしろ改めてブエナビスタの強さを浮き彫りにしたとも言える。古馬相手にここまでの競馬をできる3歳牝馬は、同世代の中にはいない。

 「三冠を獲らせてあげたい。また、それだけの能力のある馬ですから」とは主戦の安藤勝己。

 やはり能力は断然。まともに勝負して勝てる3歳牝馬は見当たらないか。ブエナビスタにとっては今回もトリッキーな小回りコースで、過去の秋華賞で何度も大穴を生み出してきた淀内回り2000メートルをどう攻略するかが鍵になるものの、普通に能力を出し切れば三冠制覇は濃厚だろう。

逆転へレッドディザイア究極仕上げ!

最後の一冠は渡せない、レッドディザイア逆転へ究極仕上げ 【スポーツナビ】

 三冠阻止の1番手は、レッドディザイアを置いて他にはいない。春二冠の桜花賞、オークスはいずれも2着。しかも、桜花賞は半馬身、オークスはハナ差と着差を詰めており、「秋こそは」の期待を大きく抱かせた。

 打倒女王を胸に臨んだ秋始動戦のトライアルレース、GIIローズSは初めてブエナビスタ以外の馬に先着を許す2着に敗れたものの、レッドディザイアは外を回しての結果。ソツなく乗ってきた勝ち馬とは通ったコースロスの差もあっただろうし、当日は馬体重プラス10キロと“次”を見据えての仕上げだった。それでいて、上がり3ハロンはメンバー最速の34秒0をマークし、クビ差まで追い詰めている。
 ブエナビスタ最大のライバルであるからには、それでも勝ち切ってほしかったという不満は残るが、秋初戦としては上々。中間の追い切りでは叩いた上積みを十分感じさせる破格の動きを見せており、最終追い切りは坂路4F50秒2! こちらも最後の一冠へ抜かりない仕上がりとなった。

 過去、春二冠いずれも2着だった馬の秋華賞(1995年まではエリザベス女王杯)成績は、1993年ユキノビジン10着、2008年エフティマイア5着と、春よりも着順を落としての2戦2敗。
 レッドディザイアも先輩たちと同じ道をたどってしまうのか。いや、ブエナビスタが飛び抜けているのであって、彼女もまた例年ならクラシックを制していい“GI級”の能力を持つ馬なのだ。一矢報える可能性は十分残っている。

 同馬を管理する松永幹夫調教師は、騎手時代には“牝馬のミキオ”と異名をとった名手。そして秋華賞は、1996年の第1回をファビラスラフインで制した思い出のレースだ。
 調教師として初のGIタイトルへ、そして騎手&調教師の秋華賞ダブル制覇へ、レッドディザイアが今度こそ。

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