唯一の街クラブ、三菱養和が秘めるポテンシャル=高円宮杯 三菱養和SCユース 5−0 広島ユース

平野貴也

街クラブの初戴冠を狙う三菱養和

J1チーム入団が内定している三菱養和の加藤大。ボランチとしてタレント軍団を操る 【平野貴也】

 Jユースと高校勢が目立つ高円宮杯全日本ユース選手権で、東京に拠点を置く街クラブ「三菱養和SCユース」が16強に勝ち進み、タイトル争いに名をあげる活躍を見せている。基本フォーメーションは中盤を厚くした4−5−1。正確なワンタッチ、ツータッチのパスをテンポよく回すポゼッションに、スルーパスやサイドからのドリブル突破を絡めた多彩な攻撃が彼らの持ち味だ。
 今季のチームは年始めに東京都クラブユースU−17選手権で優勝。春のプリンスリーグ関東では例年全国レベルの戦いを繰り広げているFC東京U−18や横浜F・マリノスユースと優勝争いを展開し、2位の好成績を収めた。今大会では、優勝候補の一角を担っている。

 中盤を構成するメンバーの顔ぶれは、中学生年代の有望株が集まるJユース勢に勝るとも劣らない。ボランチの加藤大はJ1チーム入団が内定しており、飛び級となるU−20日本代表の合宿に参加したこともある逸材。バランスを取りながら攻撃に絡むセンターハーフの玉城峻吾やワイドで破壊力を見せ付ける田中輝希も世代別の日本代表に招集された経験を持つ。
 ほかに、斉藤和夫監督が「メッシ」とあだ名をつけた2年生MF佐藤聖や、1年生でU−16日本代表を経験している「アデバヨル」田鍋陵太、縦への推進力を持つ近藤貴司など、人材の宝庫とも言うべき戦力を誇る。アマチュアの街クラブではまれに見るタレント軍団で一見の価値があるチームだ。

三菱にして浦和にあらず

 ところで「三菱のユース」などと聞いたら、もしかすると「浦和の下部組織? 浦和レッズユースとは別?」と奇妙に思う方がいるかもしれないので、三菱養和について少し説明しよう。
 日本サッカー界で「三菱」と聞けば三菱自動車工業サッカー部を前身とする浦和のイメージが強いが、三菱養和は「三菱にして浦和にあらず」という立場の存在だ。「浦和の下部組織の1つ」ではない。1914年、三菱合資会社によって三菱倶楽部が設立されたのが起源で古い歴史を持つ。1940年には社業と分業して財団法人三菱養和会が設立され、改称を経て1975年に三菱スポーツクラブとして発足した。
 ユースを率いる斉藤監督は、1974年に法政大学から三菱重工へ入団したキャリアを持っており、そのスポーツクラブのサッカー部門にあたる三菱養和SC誕生を横目で見るような立場にいたため、クラブへの思い入れは深いという。

 現在ではサッカークラブのほか体操や水泳、テニスなどのスクールがある。サッカーではスクールもあり、幼稚園児以上の各カテゴリを対象に、調布や巣鴨のグラウンドで練習を行っている(ユースは巣鴨が拠点)。ユース選手の多くは巣鴨や調布の三菱養和SCジュニアユース出身者だ。
 しかし、卒業生では加藤がプロへ行くほか、大学に進んでサッカーを続ける例が多い。三菱養和には社会人チームもあるが、あくまでアマチュアクラブ(現在は東京都社会人リーグ2部)であり、プロチームのようにトップチームでの活躍を見込んでいるわけではなく、スクールの延長線上としてジュニアユースやユースチームが存在する形だ。プロクラブを親とするJユースと大きく異なる点と言えるだろう。
 ちなみに、近年のユース(ジュニアユース含む)出身Jリーガーでは小川佳純(名古屋/高校時代は市立船橋高校で活躍)や永井雄一郎(清水)がいる。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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