ユース年代の大会改革案に物申す=流通経済大学付属柏高校・本田裕一郎監督インタビュー
高校サッカーを生かさない手はない
2007年、流通経済大柏は高円宮杯で優勝し、高校選手権、インターハイの3冠を達成した 【Photo:YUTAKA/アフロスポーツ】
1つは指導者の問題。高校サッカー界には、16〜18歳の選手を20〜30年間指導したスペシャリストが数多くいますが、Jクラブの方は指導者が1〜2年ですぐ代わってしまう。Jクラブ側の育成コーチへの評価が低すぎるのも問題でしょう。例えば、ユース年代で芽が出てきたコーチがいれば、クラブはすぐトップチームに上げてしまう。そのやり方ではユース年代のスペシャリストは育たない。育成は時間がかかりますから、腰を据えて指導者を養成することも大事なんです。
下部組織のあり方も欧州とは違います。欧州のクラブはユース年代でも教育費から寮費まで全部負担し、プロとして扱っています。が、日本のクラブはそういう優遇制度がなく、スーパーなタレントをただ集めて普通に練習しているだけ。わたしの目にはそう映ります。全寮制にして、選手入れ替えを頻繁に行うなど、厳しさを植え付け、選手を鍛え上げる工夫も必要でしょう。
日本はこれまで高校サッカーを中心に選手を育ててきたのだから、それを生かさない手はないんです。
――本田先生の考える理想的な育成システムとはどのようなものですか?
学校を母体とする形が一案です。ある方からの意見ですが、一部の強豪校を「指定校」とし、そこに優れた指導者を派遣して、プロを目指す選手を育成するというやり方を取り入れたらどうかとアドバイスを受けました。わたしもこの制度に賛成です。これだけユース年代の年間スケジュールが立て込んできたら、すべての大会にベストチームを出すことは難しくなる。指定校制度を導入するにあたって、指定校は高校総体に出ないでプリンスリーグと高校選手権、高円宮杯だけに出るとか、そういう序列をつけてみるのも1つの手ではないでしょうか。
サッカー協会は議論の場を設けるべき
3〜8月にプリンスリーグを実施し、9〜10月に高円宮杯、11〜12月に選手権という流れがいいでしょう。真夏の過密日程の中で実施している高校総体は正直、やめてもいい。実際、ラグビーは夏の高校総体に参加せず、冬の花園(全国高校ラグビー大会)を高校総体と兼ねている。サッカーが同じ形式を取ってもいいんです。Jクラブの方も、今は夏に日本クラブユース選手権、冬にJユースカップを実施していますが、2つの合体版を12月か1月に開けばいい。その方が大会の格や集客も上がるだろうし、子供たちのためにもなりますから。
――プリンスリーグ改革を機に、ユース育成全体を見直す機運が高まるといいのですが
まさにそうですね。わたしが懸念しているのは、プリンスリーグ改革も、高円宮杯の実施時期変更も、すべて「場当たり的」という印象が強いこと。優れた選手を育てたいならリーグ戦を増やした方がいいのは当たり前だし、高円宮杯が第2種最高の大会というのも分かっています。この現状を踏まえ、全体をしっかりと見渡して、何が一番子供たちのためになるのかを第一に考えないといけないはず。ところが今は、最も重要な「日本式育成ビジョン」が何もないまま、大会方式だけがコロコロと変わっているのが現状です。それでは決して日本サッカーのためになりません。
ユース年代の指導者は皆情熱を持って子供を教えています。そういう人たちの意見を集約する場をサッカー協会はまず設けるべきではないでしょうか。わたしも議論の場に参加したことはありませんが、まずは全国から知恵を出し合うところから始めるべきですね。
<了>
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