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ユース年代の大会改革案に物申す
流通経済大学付属柏高校・本田裕一郎監督インタビュー
本田監督は改革案の前に、議論の場を設け、明確な育成ビジョンを描くことが重要と主張する
本田監督は改革案の前に、議論の場を設け、明確な育成ビジョンを描くことが重要と主張する【スポーツナビ】

 9月6日から第20回高円宮杯全日本ユース(U−18)サッカー選手権大会が開幕する。この大会は現在、2003年から始まったプリンスリーグが予選を兼ねている。9地域から20チーム、さらにインターハイ(高校総体)優勝・準優勝校、日本クラブユース選手権優勝・準優勝クラブを加えた計24チームが本大会に参加し、9〜10月にかけて第2種(高校・ユース)の王者を決める形式になっている。


 同大会は今、大きく変わろうとしている。日本サッカー協会は、1回戦総当たり制になっているプリンスリーグを2011年度からホーム&アウエー方式(2回戦制)に変更。これに伴って、高円宮杯を冬開催に移行する方向で検討を進めているという。

 JFA(日本サッカー協会)ユースダイレクターの布啓一郎氏は「リーグ戦の試合数を増やすことで、よりタフで優れた選手を育成できる」とその趣旨を説明する。このプリンスリーグ・高円宮杯改革は、年内の理事会で承認される運びのようだ。

 しかし、高円宮杯の実施時期が高校選手権の後になれば、高校サッカー界にとっては困った事態が生じる。大学受験に挑む高校生は出場できないし、「選手権が最高の舞台」という図式が崩れれば、高校サッカーの魅力も失われかねないのだ。

 流通経済大学付属柏高校の本田裕一郎監督も先行きを大いに危惧(きぐ)している。高校サッカーに30年以上携わってきた名将に、今回の改革の是非について聞いた。

高円宮杯は2011年から1〜3月に移行?

――プリンスリーグ改革が進められているようですが、現状はどうなっていますか?


 2011年度からプリンスリーグが前期・後期化される方向だと聞いています。現在、関東の場合、1部は12チーム・11試合ですが、ホーム&アウエー方式になれば12チーム体制は難しい。10チームに減らし、年間18試合を実施する形が有力です。これが導入されると、12月までの年間スケジュールは完全に埋まってしまう。9〜10月に高円宮杯を開催することはできません。

 そこで目下、最有力なのが高円宮杯を1〜3月開催に移行する案。シーズンの最後に高円宮杯を持ってくれば、大会の注目度も観客動員も上がる。日ごろ、大勢のお客さんの中で試合をする機会のないJユースの選手にとっては、大きなプラスでしょう。

 ただ、高円宮杯のあり方については、関係者の中でも議論が分かれています。「現在のような24チーム参加の大会にしなくていい」「高円宮杯は東西に分けて実施すればいい」「9地域の優勝チームだけが出てチャンピオンを決めればいい」など、いろんな意見が出ているといいます。が、どの考え方にも一長一短がある。例えば9地域のチャンピオンが参加する方式になれば、北海道だけが優遇されるとか、出場チームのほとんどがJユースになるなど、不公平感が出かねません。


――第2種の場合、高校選手権がシーズン最後のビッグイベントになっていますが、高円宮杯が1〜3月に設けられたら、選手権の位置付けが微妙に変化する可能性もあります


 その通り。高校サッカーの選手には普通に大学受験をする者もいる。高円宮杯が選手権の後になったら、彼らは泣く泣く大会を断念しなければならなくなります。「選手権が高校生最大の目標」という図式も変わるかもしれません。昨今はテレビ局の経営も厳しいですから、「選手権と高円宮杯のどちらを取るか」という話になりかねない。結果として高円宮杯優先となれば、選手権は廃れてしまう可能性も大いにあるのです。

 野球もそうですが、日本人は高校スポーツが大好きです。選手権も100年近い歴史があり、4300もの学校が出場している。そういう大会を消してはいけないとわたしは考えます。


――とはいえ、高校選手権自体も過渡期を迎えているのも事実です


 それは確かです。現状の40分ハーフ・延長戦なしの試合方式には問題がある。リーグ戦化した方がいいとわたしも思います。48チーム参加にすれば、リーグ戦方式を導入することは可能でしょう。このあたりは、関係者でもっと議論すべきです。

 そういう問題点はありますが、わたしは高校サッカーや選手権が多くの優れたタレントを育ててきた歴史を尊重してほしいんです。Jリーグが発足して17年が経過し、多くのタレントがJユースに流れるようになりました。それだけいい素材を集めているのだから、Jリーグの下部組織はもっと成功していいはず。ところが現実を見ると、周囲が期待したたほどの成果は上がっていません。

 2009年春にJリーグ入りした選手数を調べてみましたが、J1はJユース出身が24人、高校出身が12人、大学出身が17人、その他が3人。J2はJユース出身が16人、高校出身が8人、大学出身が49人、その他が3人。大学出身者の大半は高校から進んだ選手です。つまり、Jユース出身が突出して多いわけではない。この数字からも、高校サッカーが果たしている役割を今一度、再認識してほしいと思います。

元川悦子
元川悦子

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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