福岡ソフトバンク、「奇跡」へ正念場の6連戦=鷹詞2009〜たかことば〜
諸刃の剣だった今季の戦い方
天敵・ダルビッシュを打ち崩すには、主砲・松中の活躍が不可欠だ 【写真は共同】
「奇跡」を起こすために、そしてパ・リーグの灯を消さないために、福岡ソフトバンクは18日からペナントの行方を左右する6連戦に臨む。まずは3位・埼玉西武と3連戦。週末は北海道日本ハムとの首位攻防戦だ。
そもそも、たった1カ月でどうしてこれだけの差をつけられてしまったのか。2位に転落した7月19日以降の成績は10勝11敗目と目を覆いたくなるような惨状ではない。だが、一方の北海道日本ハムは17勝4敗。特に15日から31日まで9連勝をマークし、福岡ソフトバンクとの差が一気に広がった。
今季の福岡ソフトバンクは「確実に1点を取る」「接戦に持ち込んでモノにする」ことをテーマに戦ってきた。投手陣はリリーフ陣を整備して攝津正、ブライアン・ファルケンボーグ、馬原孝浩の「SBM必勝リレー」を完成させ、攻撃でもリーグ2位の97犠打を記録するなど「1点」にこだわってきた。その成果もあり、戦いぶりは安定している。2点差以内の試合は27勝16敗2分。また、ここまでパ・リーグで唯一、同一カード3連敗を喫していない。
しかし、今季の戦い方は諸刃の剣だった。安定はしているが、逆に爆発力には欠ける。それを表すように大型連勝がほとんどない。今季、4連勝以上は3度だけ。対して北海道日本ハム6度。最長連勝も福岡ソフトバンクの「6」に対して北海道日本ハムは「9」だ。そして福岡ソフトバンクは同一カード3連勝が1度もない。
接戦ばかりでは大きな連勝は難しい。ある選手は「接戦ばかりだと精神的疲労が蓄積される。たまに4点差や5点差の試合があるととても楽なんです」という。ここ数年の福岡ソフトバンクは、スモールベースボールを推し進めてきたが、夏場以降やクライマックスシリーズでの失速が目立つ。これは前述の言葉と無関係ではないだろう。
“天敵”討ちのキーマンは松中とオーティズ
9泊10日の長期ロードの締めくくりとなった16日のオリックス戦(京セラドーム)。福岡ソフトバンクは6回表に猛攻をしかけて6点を挙げた。1イニング6得点は今季2度目で最多タイ。もう1度も13日、東北楽天戦で達成したばかりで、打線がここにきて活発化してきた。また、この回のハイライトは松中信彦の20号満塁弾だったが、グランドスラムもチーム今季初。「爆発力」を求めてきた中で、最高の勝ち方ができたといっていい。
そして全勝するためには、当然カード初戦に勝たなくてはならないが、そこに最大の壁が待ち受けている。埼玉西武戦の初戦は涌井秀章、北海道日本ハム戦はダルビッシュ有を打ち崩さなくてはならない。
特にダルビッシュとの対戦は重要だ。今季の3戦3敗だけにとどまらず、2007年8月からなんと9連敗を喫している。実は北海道日本ハムとの直接対決は、これ以降も全て週末に行われることになっており、そのたびにこの“天敵”と対戦することが濃厚。ポストシーズンまで含めて考えても、ダルビッシュを攻略しない限り福岡ソフトバンクに「明日」はない。
この右腕に対して1人気を吐いているのが松中だ。7月31日の対戦で右翼席に本塁打。同15日にも一発を放っている。さらに、北海道日本ハム戦は今季8本塁打、15打点と好相性。首位たたきには欠かせない存在となる。
また、埼玉西武に強いのは先日1軍に復帰したオーティズ。打率4割、4本塁打、10打点の成績を残している。7月中旬以降の失速は、オーティズの不在も大きな要因だった。前半戦躍進の立役者に快音が戻れば、上昇の気配はすぐに見えてくる。
ゲーム差「7」は確かに厳しい。しかし、1カ月間で広げられた数字。残り1カ月半のペナントレースでひっくり返すのは決して不可能ではない。福岡ソフトバンクの選手たちは、大きな悔しさをここ何年も味わい続けてきた。それを思えば、ここで諦めるわけにはいかないのだ。
<了>
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