黒獅子旗奪取に燃えるトヨタ自動車=第80回都市対抗直前リポート

島尻譲

過去最高は8強

昨秋の日本選手権でMVPを獲得した大谷(写真上)と巧打が持ち味の荒波 【島尻譲】

 第2次大戦時の中断期間はあったが、ことしで80回目を迎える真夏の祭典・都市対抗野球大会は東京ドームで8月21日に開幕する。
 野球に限った話しではなく、ここ数年の長引く不況で企業スポーツは規模の縮小を強いられる厳しい環境。しかし、選手をはじめとする関係者はプレーを続けられる喜びと感謝を胸に、アマチュア野球最高峰の大会で頂点を目指す。その姿にプロ野球や高校野球などとは一味違った感動を覚えるはずだ。
 ことしは記念大会ということで例年よりも4枠増の計36チームが厳しい地区予選を勝ち抜いて来ており、さらなる熱戦が繰り広げられることは必至であろう。

 一発勝負のトーナメント戦だけに何が起こるか分からないが、大方の優勝候補には前年優勝の新日本石油ENOEOS(横浜市)と、今季JABA公式大会で優勝3度と絶好調のパナソニック(門真市)が挙げられている。だが、新日本石油ENEOSは初戦で51度目と今大会最多出場を誇る名門・日本生命(大阪市)と対決。また、パナソニックは快進撃の反動で主力選手に少し疲れが見えているのが現況である。
 そのほかにも富士重工業(太田市)、Honda(狭山市)、鷺宮製作所(東京都)などのチームも期待は大きいが、一昨年秋、昨年秋と日本選手権連覇を果たしているトヨタ自動車(豊田市)からも目が離せない。
 トヨタ自動車はこれまでに都市対抗出場13回でベスト8(2回)が最高位。しかも昨夏は屈辱の東海地区予選敗退で都市対抗に駒を進めることもできなかった。それだけにチーム全体としてリベンジの意識は非常に強い。今季から選手権連覇で勇退した山中繁監督から間瀬啓介監督へとバトンは受け渡されたが、今夏は悲願の黒獅子旗の奪取に燃えている。

誰もが認める大黒柱の大谷

 チームを支える大黒柱は昨秋の日本選手権で最高殊勲選手賞を獲得した大谷智久だ。報徳学園高時代は3年春にセンバツ大会優勝。そして、早大でも1年春から神宮のマウンドに上がり、2年時には日本代表(世界大学選手権)にも選出された。だが、腰を痛めた影響で尻すぼみ。東京六大学リーグで通算18勝を挙げたものの、チームメートの宮本賢(現北海道日本ハム)に差を付けられた形となり、あらためて自身を鍛え直す意味で社会人野球の門をたたく。そして、2年目となった09年シーズンは好調時の投球フォームと緩急をたくみに使う投球術を取り戻した。プロ入りした服部泰卓(現千葉ロッテ)の抜けた穴を完全に埋め、大エースと呼ぶに相応しい存在となった。
 昨年で既にドラフト解禁(大卒2年目)となっており、2年続けて実績を残せば、子供のころから憧れて続けて来たプロへの道も開けるという自覚は十分。春先に左ひざのケガでやや出遅れたものの東海地区予選では全5試合中4試合に登板(うち先発3試合)して、28回2/3を投げて防御率1.26の安定感を見せる。激戦の東海地区の第1代表をつかみ取る原動力であったことは誰もが認めるところだ。
 ほかの投手陣に目を向けても、大谷と同期の左腕・中澤雅人も先発を担え、東海地区予選では股関節を痛めために登板を回避していた佐竹功年の実績と力量も文句なし。補強選手の佐伯尚治(西濃運輸)、中根慎一郎(三菱重工名古屋)も控えている。

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著者プロフィール

 1973年生まれ。東京都出身。立教高−関西学院大。高校、大学では野球部に所属した。卒業後、サラリーマン、野球評論家・金村義明氏のマネージャーを経て、スポーツライターに転身。また、「J SPORTS」の全日本大学野球選手権の解説を務め、著書に『ベースボールアゲイン』(長崎出版)がある。

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