福島、夢の10秒台へ “世界の壁”に挑む=世界陸上
6月の日本選手権200mでは、23秒00の日本記録を更新した福島千里 【Photo:築田純/アフロスポーツ】
女子短距離種目は、つい最近までは世界との差が大きく、期待薄の種目と思われてきた。この2人はもちろん、福島の中学時代からのライバルで親友でもある高橋萌木子(平成国際大)も短距離3種目のベルリン切符をつかむなど、複数のタレントが世界に挑戦できる位置に来たことが、日本陸上競技界にとって歴史的な価値を持つ。
今季、驚異的な加速力を手にした福島
今シーズン、100メートル(11秒24)、200メートル(23秒00)で日本新記録を連発。高橋や同僚の北風沙織らと4×100メートルリレーでも日本記録を更新する43秒58をマークした。バトンパスの調整次第では、世界選手権の決勝進出が見えてくるという内容の濃い記録となった。
福島の特徴は、上下動のない滑らかさでスタートから飛び出して行く高速ピッチにある。今季は、その走りに一段と磨きをかけ、30メートル地点で早くもトップスピードに到達する、驚異的な加速力を手に入れた。
そんな福島がこのところ、100メートルでの10秒台を意識し始めている。従来の日本人女子スプリンターにとっては思いもしないような夢の数字だが、福島はもはや、その領域に足を踏み入れようとしているのだ。6月の日本選手権の100メートル決勝は右足に違和感を覚えて棄権したが、走っていれば11秒1台が出た可能性は高く、北海道ハイテクACの中村宏之監督は「11秒0台もあり得た」と耳打ちしてくれた。
現時点で「10秒台が目前に迫った」とは言い過ぎだが、そこへ至る具体的な戦略を練る段階まで来たという感触は、近くで取材を進めてきた者にもある。
出発前に地元・恵庭市で行われた壮行会で、福島は「世界にどんどん近づけるように頑張りたい」とあいさつした。ベルリンでとんでもないパフォーマンスを見せてくれるかもしれない。
寺田、12秒台突入も十分可能
寺田明日香は6月の日本選手権100mハードルで2連覇達成。ベルリンのチケットを手に入れた 【Photo:築田純/アフロスポーツ】
そのスター性を発揮した最大の典型例が、今年の日本選手権だろう。直前までの記録13秒29は世界選手権参加標準記録Bの13秒11まで大差があり、準決勝もわずか100分の1秒届かない13秒12だった。そして迎えた決勝。集中力を高めた結果は、一気に12秒台に迫る13秒05。ワンチャンスの勝負を決めたのだった。
さらに加えて、2週間後の南部記念でも同タイムの13秒05を出している事実に注目したい。要点は2つ。1つは、走ったのが高速トラックとは言えない札幌市円山競技場だったこと。もう1つは、1度出した記録のスピード感覚は確実に自分の体に取り込み、すぐに再現してしまう能力を示したと思われる点だ。この観点に立つと、ベルリンでの12秒台突入も十分可能になったと言える。それはすなわち、日本記録の13秒00も近いうちに達成されるであろう。
福島にとっての10秒台、寺田にとっての12秒台は、準決勝進出するのに、必要な数字。それを念頭に、福島は8月16日の女子100メートル1次予選、寺田は同18日の女子100メートル障害予選から登場する。
<了>
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