日本2連覇の勝因とは!?=第37回日米大学野球選手権大会総括

島尻譲

「どんな形でも勝つ」必勝期した今大会

日本は2勝2敗のタイで迎えた最終戦で延長11回にサヨナラ勝ち。2大会連続16回目の優勝を遂げた 【島尻譲】

 急造チームだったことは否めない日本。かたや米国は代表チームを結成してから既に40試合以上も戦ってきた。全5戦でこの差は随所で見受けられ、チームとしての完成度の高さでは米国の方が上であったかも知れない。だが、榎本保監督(近大)が率いる日本は、来年日本で開催される世界大学野球選手権で最高の色のメダルを取るためにも今大会の必勝を期していた。
「どんな形でも勝ちたい。勝ちたいという気持ちが強い方が勝つということは選手たちにも伝えてあるし、それを理解してもらっている」
 榎本監督は大会前から何度もそのように語っていた。

 初戦(坊ちゃんスタジアム)は150キロ超の速球に加えて、外国人投手特有の揺れながら曲がる、落ちるといったムービングボールに打者が対応できなかった。また、数少ないチャンスでバントなどの小技を決められず、0対3と点差以上に完敗したという印象が残った。2戦目(東京ドーム)では先発の斎藤佑樹(早大3年)が先制を許したものの、集中打ですぐに勝ち越し、継投策で追いすがる米国を7対5と振り切った。
 1勝1敗で迎えた3戦目(クリネックススタジアム)。初回に主将・荒木貴裕(近大4年)や加藤政義(九州国際大4年)のタイムリーで3点を先取したが、先発の澤村拓一(中大3年)が力み過ぎて、すぐに逆転されてしまう。さらに中継ぎエース格の野村祐輔(明大2年)がスリーランを被弾してしまい、4対8のダブルスコアで落としてしまう。後がなくなった4戦目(鶴岡ドリームスタジアム)は、不振にあえいでいた中田亮二(亜大4年)を4番から5番にするなど、打順を組み替えたのが功を奏した。課題だったバントも決まるようになり、初回から小刻みに加点して大量リードを奪えば、7投手の継投で米国打線を封じて8対3の快勝。これで対戦成績を2勝2敗のタイにして、最終戦(神宮)を迎えたのだった。

最後まであきらめない姿勢

 神宮で優勝を懸けた最終戦は、初回に4戦目から4番を任された中原恵司(亜大4年)の左中間二塁打で2点を先制した。しかし、中2日の先発マウンドでやや精彩を欠く斎藤は失策絡みの失点などで逆転を許し、4回途中4失点で降板。それでも、日本は5回裏に亀谷信吾(法大4年)のライト前タイムリーと中田の押し出し四球で試合を振り出しに戻した。
 4対4と同点のまま迎えた9回表、これまで守護神として大活躍していた菅野智之(東海大2年)が連打と自らのバント処理ミス(悪送球)でまさかの3失点。これで万事休すかと思われた。
「相手が3点を取れるんやったら、こっちも取れへんことはないやろう!やり返したろうやないかいっ!」
 思わず関西弁で激を飛ばしたという榎本監督の気持ちは選手たちにも伝わった。9回裏2死から加藤の左中間三塁打で1点を加え、続く中原の右中間二塁打で2点追加。日本は土壇場で再び同点に追い付いた。
 延長戦に突入してからは5番手の野村がピンチを招くも踏ん張る。そして、延長11回裏、このイニングの先頭打者・小池翔大(青学大3年)が7球ファウルで粘るなど計15球を投じさせて四球を選び、日本に勝利の女神をグッと引き寄せた。亀谷、伊志嶺翔大(東海大3年)が連続三振に倒れてしまうが、4番手投手のソニー・グレイ(バンダービルド大)の一塁けん制悪送球もあって、2死三塁とした。ここで加藤の放った打球は今大会、再三、好プレーを見せていた名遊撃手のクリスチャン・コロン(カリフォルニア州立大)への真正面のゴロだったが、これをコロンがまさかのジャックル。粘りと最後まであきらめない姿勢で、日本がサヨナラ勝利で2大会連続16回目の優勝をつかんだのである。

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著者プロフィール

 1973年生まれ。東京都出身。立教高−関西学院大。高校、大学では野球部に所属した。卒業後、サラリーマン、野球評論家・金村義明氏のマネージャーを経て、スポーツライターに転身。また、「J SPORTS」の全日本大学野球選手権の解説を務め、著書に『ベースボールアゲイン』(長崎出版)がある。

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