ソフトバンク、互いの信頼が生んだ交流戦連覇=鷹詞2009〜たかことば〜
「SBM」が最大の勝因
最大の勝因は、絶対的な「勝ちパターン」を持っていたことだ。14日の巨人戦(ヤフードーム)で今季初完投をマークした杉内俊哉はこう話していた。
「ウチには7、8、9回を抑えるピッチャーがいる。(それまで完投がなかったのは)僕の中に『6回まで抑えれば』という甘えがあったのかな」
WBC代表左腕にここまで言わせるリリーフ陣。7回はルーキーの攝津正、8回はブライアン・ファルケンボーグ、9回は馬原孝浩が福岡ソフトバンクの誇る「勝利の方程式」だ。ここ最近、地元メディアなどからはそれぞれの頭文字をとって「SBM」と呼ばれている。くしくも親会社の関連事業である携帯電話会社の略称と同じ。「ホークス応援隊長」で、CMで人気の「お父さん」も喜んでいるとか……。
それはさておき、やはり交流戦連覇は「SBM」抜きでは語れない。攝津と馬原は半分以上になる12試合に登板。ファルケンボーグも11試合に投げている。交流戦期間中、先発の台所事情は苦しかった。5月下旬に和田毅が左ひじに違和感を覚えて離脱。6月3日には大隣憲司が交通事故に巻き込まれるアクシデントにより1軍を外れた。杉内や、来日2年目のホールトンは安定した投球を続けていたが頭数は足りない。この状況の中で藤岡好明やジャマーノが先発し連勝。救世主となった。ただ、彼らは完投能力に乏しい投手。リリーフ陣を信頼してマウンドに上がれたことが勝利に大きくつながった。
投手と野手に生まれた信頼
また、故障者たちの復帰も大きかった。5月22日には多村仁志と村松有人が1軍昇格。6月5日には開幕戦で右手甲を骨折した松田宣浩も戻ってきた。松田は開幕戦では3番を打っていたが、復帰後は7番や8番など下位に座ることが多い。その3番には、途中加入で大きな戦力となっているオーティズが座る。さらに打率3割台をキープし続ける長谷川勇也の存在も大きい。
「今の打線ならば2、3点は取ってくれると信じて投げている」(杉内)
福岡ソフトバンクは「先行逃げ切り」が勝利パターンだったが、6月は8勝中4勝が先制点を許しながらの逆転勝利だ。
交流戦Vで気になる“ジンクス”
交流戦はシーズンの大きな分岐点。「交流戦で優勝すればリーグ戦も……」。05年の千葉ロッテ、07年の北海道日本ハムは交流戦優勝の勢いに乗って、パ・リーグを制した。しかし、昨季の福岡ソフトバンクはその波に乗れなかった。最近、選手たちも自らそんな言葉を口にしている。ただ、それは悲観的ではない。あくまで冗談。笑ってそんな話ができるほど、チームの雰囲気はいい。
「交流戦の優勝は間違いなく弾みになる。まだ大きな目標の戦いが残っている。1つ1つ大事に戦っていきたい」(秋山監督)
「去年の二の舞にならないように、精一杯気を引き締めて頑張ります」(松中信彦)
ちなみに、1つジンクスを語るならば、昨季の福岡ソフトバンクは15勝9敗での交流戦優勝だったが、05年の千葉ロッテと07年の北海道日本ハムはいずれも貯金10以上をキープしての優勝だった。現在、貯金は12。残り3試合もまだ見逃せない。
<了>
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