初出場の東海大海洋学部が「楽しんで」開幕戦を制す=第58回全日本大学野球選手権・初日リポート
涙ぐむ指揮官、笑顔が溢れる選手たち
春の大学野球日本一を決める全日本選手権が、いよいよ開幕を迎えた。注目の開幕カード、東海大海洋学部(東海地区大学)と松山大(四国地区大学)の対戦には、平日にもかかわらず2500人の観衆が集まった。試合前に国旗の掲揚が行われると、これから繰り広げられる熱戦への期待を表すかのように、拍手が起きた。
試合は東海大海洋学部が2回、田中陽(4年=東京学館浦安高)のスクイズで先制すると、5回にも遠藤秀太郎(2年=芝浦工大高)の適時打で2点を追加。投げては奥裕貴(4年=東洋大姫路高)が散発4安打で完封と危なげない戦いぶりで勝利した。
「信じられないといった感じです」
全日本選手権で初出場初勝利を飾った大村晴男監督がしみじみと語る。「4年生がよく引っ張ってくれた」と感無量といった様子で言葉を搾り出す。試合後には、こみ上げるものがあったのか、目に熱いものが浮かんでいるようにも見えた。
そんな指揮官とは対照的に、選手たちからは笑顔が溢れていた。試合を決定付ける2点適時打を放った遠藤は、「(神宮は)高校時代に地区大会でやったことがあるけど、全国の雰囲気は全然違って楽しかった」と晴ればれとした表情を見せる。さらに「楽しくやれたことが好結果につながったと思う。ベンチもいつも通り。ただ座ってる人は一人もいなくて、盛り上がっていた」と雰囲気の良さを強調した。
勝利を手繰り寄せたメンタリティ
とはいえ、遠藤や奥が語るほど「楽しく」「普段通りに」プレーするのは、簡単ではない。実際、この試合の直後に行われた第2試合で道都大に敗れた石巻専大の見方仁一監督は、「3年ぶり(の全国大会)で、地方から出てきている。学生だから緊張するのは仕方ないけど、大分固かった」と唇をかんだ。
反対に、東海大海洋学部の選手たちに、初出場の緊張はまったくなかった。全国大会という大舞台にも怯まなかったメンタリティが勝利を手繰り寄せた。
2回戦では、東海大本学との“東海大ダービー”を戦う。大村監督は「横綱と新入幕がやるようなもの」と謙虚だが、奥は「きっとレベルの差はあると思う」と言いながらも、「持ち味を出してロースコアに持ち込めれば」と臆する気持ちはない。遠藤も「がむしゃらに今までやってきたことをやれば、いいゲームができるはず」と前向きだ。奥が「一戦一戦、野球を楽しんでやることが目標」と言うように、東海大海洋学部ナインは、強い精神力に裏打ちされた“楽しむ野球で”2年連続準優勝の強豪に挑む。
◇ ◇
九州勢2校が初戦突破 投打のドラフト候補も活躍(09.06.08)
最速150キロの左腕・古川は、5対0でリードして迎えた7回、無死一、二塁のピンチで登板。失点こそ付かなかったものの、パスボールと犠飛で1点を与えた。しかし、「0点にこだわっていたらもっと点を取られていたと思う。点差を考えた投球ができた」と納得した表情だった。
この日は最速で144キロ。自慢の快速球は見られなかったが、「スピードよりもコントロールを重視したい。決勝に合わせて調子を上げていきたい」と先を見据えていた。
加藤はチームも自身も2年ぶりの出場となった全日本選手権に「少し固さがあった」と言いながらも、5回裏の第3打席で目標にしているという青木宣親(東京ヤクルト)さながらのシャープなスイングでセンター前にクリーンヒットを放ち、非凡な打撃センスを見せつけた。
「チームが勝ち進めば自分のいいプレーも生まれてくる。チームの勝利が最優先」と主将らしさをのぞかせた加藤は、「優勝が最終目標」と2回戦で敗れた2年前の雪辱を誓っていた。
<了>
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