5連覇狙う東洋大、収穫を手に順調なスタート=東都大学野球・開幕カードリポート

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頼もしい守護神・鹿沼

【青学大 1−1 東洋大、青学大 2−4 東洋大、東洋大 3−0 青学大】

「つまんなかっただろう?」
 1回戦の試合後、東洋大・高橋昭雄監督がはき捨てるように言う。それもそのはずで、この日は青学大・垣ヶ原達也(2年=帝京高)にわずか3安打、それも2本が内野安打と抑え込まれ、引き分けに持ち込むのがやっとだった。
「連覇の硬さじゃない。ゲームに慣れていなくて、バットが振れていない」
 高橋監督の言葉が象徴するかのように、開幕戦特有の重い空気が東洋大打線のバットを湿らせた。
 投げても先発の乾真大(3年=東洋大姫路高)が初回からリズムが悪く、先頭打者を四球で出すと、連打を浴びて瞬く間に先制点を許す。高橋監督も選手たちも「負け試合の展開」と口をそろえた王者らしくない戦いぶりが、冒頭の指揮官の一言につながったのだ。

 それでも負けなかったのは、鹿沼圭佑(3年=桐生第一高)の好投に尽きる。6回無死一塁から登板した鹿沼は、この回を無難に乗り切ると、延長10回までの5イニングを無失点に封じた。2回戦、3回戦でも9回途中に走者がいる場面でマウンドに上がり、見事にピンチを脱した。
「(緊迫した場面での登板だったが)別に緊張はしませんでした。(優勝した昨秋の)神宮大会の決勝で抑えられたことは今につながっています」
 決して派手さはないものの、キレのあるスライダーと直球のコンビネーションで相手打線を牛耳るマウンドさばきは頼もしかった。その姿は、大舞台を戦ってきた経験と自信があふれている。
「やっぱり(鹿沼が後ろにいると)心強いです」
 乾の言葉が示すように、信頼感も抜群だ。守護神・鹿沼の存在は、東洋大を5連覇に近づけていくだろう。

初タイムリーに笑顔がはじける4番・佐藤貴

「キャッチャーがクリアできれば(新チームも)面白いと思うよ」
 昨秋の神宮大会決勝直後に高橋監督が語っていたように、野手のキーマンは大野奨太(現北海道日本ハム)が抜けた後のマスクをかぶり、4番を打つ佐藤貴穂(3年=春日部共栄高)だ。その期待に応えるかのように、1回戦では延長10回、青学大・加守田隆介(4年=青森山田高)の本塁前の送りバントで二塁封殺する好プレーを見せた。佐藤貴は試合後、「スライダーを投げれば、打球が死んで(自分の)前に転がるので、セカンドで刺すつもりでした」と狙ったプレーだったことを明かした。緊張感のある場面での冷静なプレーは、非凡なセンスの証と言える。
 4番としては、「(昨季までは代打のみの出場で)初めて神宮でマスクをかぶって、初めて見る風景ばかりだった。緊張で空回りしていた」と2回戦まで無安打のほろ苦いスタートとなった。だが、3回戦で貴重な3点目となるタイムリーを放つと、「自分のバッティングじゃなかったので、まだまだです」と謙そんしながらも、4番のプレッシャーを跳ね除けたかのように、人懐っこい丸顔に笑顔が弾けた。

「弱いね。つまらないね」(1回戦後)
「ちょっとスイッチが入ったかな」(2回戦後)
「いいスタートが切れた。5連覇狙ってんだから、自信を持ってやればいい」(3回戦後)
 試合を重ねるごとに、高橋監督の言葉は力強さが増していく。その理由は、鹿沼や佐藤貴に代表されるように、5連覇への手ごたえを感じ取ったからにほかならない。
「次はまた間が空くから、練習、練習」 
 苦しい戦いを強いられながらも、“鹿沼へつなぐ”という方程式と“4番が目覚めるきっかけ”をつかんだ開幕カード。勝ち点以上の収穫を手に、東洋大が5連覇へ順調なスタートを切った。

<了>
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