強打を誇る天理高が17年ぶりの王者に=2008年秋季近畿大会リポート

松倉雄太

強力打線に加え、3投手が大崩しない天理高

 各府県の1位校が順当に選出された昨年とは異なり、ことしは非常に読み難い状況だ。ただ、例年通り準決勝に進出した4校は当確と言えるだろう。
 17年ぶりに近畿を制した天理高(奈良)は強打が目を引いた。県大会では6試合で50点、近畿大会でも4試合で29点と高い得点力を見せた。秋季大会でポイントになったのが1番を打つ内野と、5番・安田の両1年生。内野は近畿大会打率5割で7打点、安田はセンバツ出場へ大事な箕島高(和歌山)との準々決勝で先制の2点適時打を放つなど、要所での活躍が目立った。1回戦4打数4安打の9番・立花、決勝でサヨナラ打を放った3番・西浦直など上級生も負けていない。
 投手陣は、1年生左腕の沼田、2年生右腕の田渕と中山の3投手で大崩れしなかった。特にPL学園高(大阪)との決勝で、投手キャプテンの中山が延長11回を完封したのはチームにとって大きなことだった。「ウチは3人そろって初めてエースと言える」と森川監督も3投手のさらなる奮起に期待している。

PL学園高の主砲・勧野は4番の役割果たす

 準優勝のPL学園高はエース左腕・中野が大きく成長。腰痛と右太もも裏の肉離れを抱えながら、近畿大会4試合を1人で投げ切った。自慢の制球力は全国でも屈指の存在。全国の舞台で勝ち抜くには、中野に続く投手陣の成長が課題だ。
 打線の顔は1年夏から4番を打つ勧野。秋は期待された一発こそ出なかったが、近畿大会全試合でヒットを打つなど、4番としての役割は十分果たした。さらに前後を打つ打者の活躍も忘れてはならない。1番を打つ吉川は秋季大会で3本塁打、6番の藤本はチームトップの18打点を挙げた。勧野だけを気にしすぎると痛い目に遭うだろう。つながりある打線がことしのPL学園高の特徴だ。

 ベスト4は福知山成美高(京都)と金光大阪高(大阪)の2校。
 福知山成美のエース・長岡は、秋季大会の防御率が0.27と抜群の安定感を発揮。田所監督もこの長岡には絶対の自信を持っている。さらに捕手の福本、遊撃手の杉本主将ら、昨夏の甲子園(初戦敗退)を経験した選手が多く、初めてのセンバツ出場でも上位進出を狙っている。
 近畿大会で2本の本塁打を放った金光大阪高の4番・陽川は1年夏の甲子園でベンチ入りを経験。その年の秋からレギュラーを奪い、近畿地区でも屈指のスラッガーに成長した。1番を打つ石井主将の兄は、一昨年夏に同校が甲子園に出場した時、1番打者で主将。兄とまったく同じ立場での甲子園出場というのも興味深い。

箕島高に18年ぶりの春の便りか

 例年通り、準々決勝敗退の4校(報徳学園高=兵庫、東洋大姫路高=兵庫、大阪桐蔭高=大阪、箕島高=和歌山)から残りの2枠を選出するが、前記の通りことしは読み難い状況だ。4校中、準々決勝で一番の接戦を演じたのが大阪桐蔭高。だが、大阪勢2校が4強に残っており、センバツ出場は絶望的。昨夏の全国制覇が記憶に新しい同校は、新チームも1年生左腕・福本の奮闘と強力打線で府大会を勝ち抜き、近畿大会に進出。準々決勝は同じ大阪の金光大阪高と対戦し、雨中の激闘の末サヨナラ負け。敗れた瞬間、多くの選手がグラウンドに崩れ落ちたのが印象的だった。一般枠で同一府県3校は選出しないという内規がなければ、センバツ出場が確実だっただけに残念でならない。
 残る3校で最も有力なのが箕島高。県3位での近畿大会だったが、1回戦で滋賀県1位の近江高を破った。同県の智弁和歌山高、県和歌山商高が初戦で敗れており、現在の2年生が生まれた1991年以来、18年ぶりの春の便りが届きそうだ。
 報徳学園高と東洋大姫路高の兵庫勢の比較は難しい。近畿大会だけを見ればコールド負けの報徳学園高に対し、東洋大姫路高は9回まで戦った。ただ、どちらも共通するのは完敗だったということ。負け方だけではなく、防御率などさまざまなデータで選考すると予想される。直接対決で報徳学園高が勝利した県大会まで視野を広げることもありそうだ。

 21世紀枠の近畿地区候補になった彦根東高(滋賀)はここ数年近畿大会の常連。ことしのチームもエース・金子を中心に、少ない失点で近畿大会に進出した。エース左腕・岡田を擁する智弁和歌山高、京都成章高で甲子園準優勝を経験した奥本監督率いる塔南高(京都)など、夏に楽しみなチームも多い。

<了>
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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