“エンジョイ・ベースボール”の慶応高が優勝=2008年秋季関東大会リポート

松倉雄太

2人の1年生投手が慶応高の窮地を救う

 地元開催1位校のプレッシャーをはねのけ、慶応高(神奈川)が49年ぶりに関東大会を制した。開催県1位のシードがあったため、準々決勝から登場した同校。その準々決勝の相手は、ともに昨夏の甲子園に出場した木更津総合高(千葉)。いきなりの大一番に、エース・白村(はくむら)も緊張感を隠せず制球が定まらなかったが、初回の失点で目が覚めた。2回以降は、落ち着いたピッチングで相手打線を翻弄(ほんろう)。味方打線も2回に逆転すると、その後は効果的に追加点を重ねた。
 準決勝と決勝では白村が腰痛で短いイニングしか投げることができなかったが、瀧本、明(みょう)の両1年生投手が窮地を救った。甲子園8強の旧チームのレギュラーは1人も残っておらず、新チームの前評判は決して高くなかったが、上田監督は「甲子園で先輩を応援しているうちに自分たちも行けるという気になったのでしょう」と笑った。それでも、「夏の甲子園の間、大学生のコーチが新チームをよく鍛えてくれた」とスタッフをねぎらった。“エンジョイベースボール”を掲げる同校が、甲子園の常連になりつつある。

習志野高は16試合を戦い大きく成長

 習志野高(千葉)は県大会1次予選で一度敗戦している。前年までならそこで秋が終わっていたが、システム変更で導入された敗者復活の2次予選(※)を勝ち上がり、県大会本戦で優勝。県1位で関東大会に進出した。結果的に関東の決勝まで16試合を戦い、チームは大きく成長した。右アンダーハンドのエース・山田と強肩強打の1年生捕手・山下のバッテリーを中心とした粘り強さが持ち味だ。
 センバツ出場が懸かった準々決勝の下妻二高(茨城)戦では、延長11回表に1点をリードされたが、その裏に2点を奪ってサヨナラ勝ち。県大会準決勝、決勝もサヨナラで勝ってきた粘りを、関東大会でも見事に発揮した。課題は毎試合のように入れ替えた打順の固定になるだろう。市船橋高を率いて夏の甲子園4強の経験がある小林監督にとっても、母校の習志野高では初の甲子園出場となる。

4強には群馬勢2校が食い込む

 ベスト4はいずれも群馬勢。県1位の高崎商高は県大会6試合中4試合が1点差勝ちと接戦での強さが持ち味。関東大会で2試合に先発し、1失点のエース・渡辺貴は最速141キロを誇る本格派右腕だ。敗れはしたが準決勝で先発した左腕の佐藤も2失点と好投した。
 一方の前橋商高はエース左腕の野口と1番を打つ後藤の両1年生がチームを引っ張る。野口は162センチ、52キロの小柄な体で直球も120キロ台とスピードはないが、多彩な変化球で打者を惑わせる。俊足巧打で関東大会を沸かせた後藤は3日連戦となった準決勝のマウンドにも上った。野口とは異なり球威があるのが特徴だ。
 慶応高が神宮大会で優勝したため、関東は最低5校が選出される。その5枠目は地域性から、川口青陵高(埼玉)と下妻二高が争うことになりそうだ。川口青陵高のエース・野川は、初戦の文星芸大付高(栃木)戦であと一歩でノーヒットノーランという快投を演じた。高崎商高には完敗したが、春夏を通じてまだ甲子園に出場したことがないというのも選考にプラスされるか。
 下妻二高は準優勝の習志野高相手に延長11回まで接戦を演じた。2試合で8つの失策は課題だが、試合内容ではベスト8敗退の中で1番との声もある。関東の6校目は東京の2校目と比較されるため、同じベスト8で敗退した木更津総合高水戸桜ノ牧高(茨城)にも可能性は残されている。

※千葉県大会は、地区別に開催される1次予選通過校16校に加え、1次予選で敗退した145校で2次予選を行い32校を選出。それに昨夏の甲子園に出場した木更津総合高と千葉経済大付高の計50校で行われた

<了>
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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