卓球界の萌芽 スーパー中学生の誕生=卓球全日本選手権 第5日

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中学生ペアとしては初となる3位入賞を果たした谷岡(右)、鈴木ペア 【スポーツナビ】

 日本は冬本番。寒さが厳しくなる一方で、卓球界には、一足早い春が到来している。“第2の愛ちゃん”と呼ばれる高校1年生の石川佳純(ミキハウスJSC)は、女子ジュニアシングルスで3連覇を達成、さらには平野早矢香(ミキハウス)と組んだ女子ダブルスでは初制覇を果たした。そのほか、ジュニア女子では小学2年生の平野美宇(平野卓研)が最年少勝利、小学6年生の前田美優(高瀬ク)が一般の部で“タイ記録”となる3勝を挙げるなど、明るい話題が満載である。

英才教育で頭角を現した中学2年生

 大会5日目の17日にも、卓球の新たな芽が再び顔を見せた。女子ダブルスで平野早矢香(ミキハウス)、石川佳純(ミキハウスJSC)組と準決勝で対戦した谷岡あゆか、鈴木李茄組(エリートアカデミー)である。初戦は高校生相手に3−0のストレートで下し、2回戦、3回戦は大学生を打ち負かして、勝ち上がってきた。
 準決勝では、0−3(8−11、4−11、4−11)とストレート負けとなったが、中学生ペアとしては初の4強入りを果たし、さらに3位入賞した。

 平成6(1994)年生まれの2人は、エリートアカデミー1期生。エリートアカデミーとは、日本オリンピック委員会が2016年の五輪をはじめ、国際大会で力を発揮できる有望なジュニア選手を育てるために、2008年の春に設立したものだ。高知県出身の谷岡と静岡県出身の鈴木は、現在ナショナルトレーニングセンターに寄宿し、日々練習を積んでいる。同部屋の2人は、「けんかもするけどすぐ終わる」というくらいの仲良し。2人とも将来の目標は、「五輪で金メダル」と、目標に向けての準備は着々と整えている様子だ。
 
 今季のジュニアの世界大会で優勝をした2人だが、全日本では初めてダブルスを組んだ。試合後には「まさかベスト4まで残っていられると思っていなかった」と口をそろえる。
 「エリートアカデミーの1期生として、全日本に出られたので、思い切ってやろうと思いました」(谷岡)、「初めての全日本だったんですけど、試合以外の練習とか、ほかの試合を見ているときも恥ずかしくない行動を取ろうと思いました」(鈴木)と、中学生といえども、代表になるための自覚がかいま見えた。

スーパー中学生の持ち味は切れ味のするどい両ハンド

この日、会場を沸かせたスーパー中学生・丹羽 【益田佑一】

 さらに、谷岡、鈴木ペアと同じく中学2年生の丹羽孝希(青森山田中)も、会場を沸かせた。男子シングルス6回戦で昨年の全日本で準優勝を果たしており、世界選手権の代表入りが決定している吉田海偉(グランプリ大阪)相手に、持ち前の切れ味のするどい両ハンド攻撃で積極的に攻めていく。丹羽がゲームカウント3−1とリードし、あと一歩のところだったが、やはり吉田の経験が上回った。フルゲームの末、吉田がベスト8入りを果たした。
 小学6年生のときには、18歳以下が対象のジュニアナショナルチームに小学生としては史上初めての代表入りを果たしている丹羽。今大会、一般の部では初めて出場となったが、1試合を除いてはここまでストレート勝ちで勝ち上がってきており、関係者はもちろん卓球ファンにもその実力を存分にアピールした。

現役最後の試合を終えた“卓球界のパイオニア”松下 【スポーツナビ】

 この日ラストマッチを行った“卓球界のパイオニア”松下浩二(グランプリ大阪)は引退会見で、「今ここで戦っている子たちは才能がある。僕なんか足元にも及ばない。頑張れば五輪で金メダルが取れる。選手、周りの方が一つになって、2016年で取ってほしい。強くなることはシンプルで、サポートする側の問題だと思う。中国が(卓球で)40年ぐらい強いのは、そういうシステムが確立されているから。3、4番の努力しか日本はしていないので、こういう結果になっていると思う。世界一になるためには世界一の努力をしなければならない。そうした努力をすれば、世界一になれるんじゃないかな」と、後輩たちにエールを送った。

 全日本を最後に卓球界を去る者、そしてこの全日本から得た経験をもとに世界に羽ばたく者――。五輪で初のメダル獲得を目指す、頼もしい子どもたちの成長に期待したい。

<了>
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