青森山田の前に立ちはだかった“大迫という壁”=高校サッカー1回戦

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全国の壁を突き抜けることができるか

この日2得点の大迫勇也。青森山田の前に大きな壁として立ちはだかった 【たかすつとむ】

 またしても、青森山田(青森)の前に全国の壁が立ちはだかった。鹿児島城西(鹿児島)が誇る2人の大迫(勇也、希)だ。この日の青森山田の試合内容は、決して悪くなかった。しかし、彼らが全国で勝つためには“何か”が足りなかった。

 全国大会常連校の青森山田と大会ナンバーワンストライカーとの呼び声高い大迫勇を擁する鹿児島城西という、1回戦屈指の好カードは、雲ひとつない冬晴れの市原臨海競技場で行われた。

 今年、創立90周年を迎えた青森山田は、卓球の福原愛やテニスの錦織圭ら、日本を代表するアスリートを数多く輩出し、各競技で“全国大会の常連”として知られる強豪校だ。もちろん、サッカー部も地元青森では無類の強さを誇る。県予選では、4試合で42得点を挙げる圧倒的な破壊力で12連続14回目の全国大会出場を決めた。さらに、県内公式戦200連勝という偉業も達成している。
 しかし、県レベルで圧倒的な強さを見せる青森山田も、高校選手権では全国の壁の前に跳ね返されてきた。第81回から5大会連続でベスト16敗退、昨年度は屈辱の初戦敗退。インターハイでの優勝はあるが、高校選手権での青森山田は、青森県代表としての期待を裏切り続けてきた。
 今年の青森山田は全国の壁を突き抜けることができるのか――。だが、試練は初戦に訪れた。

青森山田の前に立ちはだかる2人の大迫

 対戦相手の鹿児島城西は、強豪校が群雄割拠する鹿児島県大会を勝ち上がり、8年ぶり2回目の全国切符を手にしている。Jリーグ入団内定の大迫勇(鹿島アントラーズ)、大迫希(ロアッソ熊本)を軸に、県予選5試合で34得点を挙げた攻撃力が持ち味。特に大迫勇は、高校生らしからぬ巧さと強さを兼ね備えたまれに見る逸材だ。両校共に攻撃の姿勢を前面に押し出した試合は、攻守の切り替えの速い激しい点の取り合いとなった。

 立ち上がりは鹿児島城西に押されていた青森山田だったが、次第に試合の主導権を握ると、17分にFW見宝優のゴールで先制。24分にもMF北嶋佑一が決めて2点のリードを奪った。
 強敵・鹿児島城西に対して早々に2得点。この時点で青森山田ベンチは「今年こそはいける」と思ったのではないか。しかし、この青森山田の期待は、2人の大迫によって打ち砕かれてしまった。27分に大迫希が1点を返すと、大迫勇が2得点し、逆転。後半に攻勢を仕掛けた鹿児島城西は、さらに1点を追加し、4−2に。青森山田は最後まで攻めの姿勢を崩さず、ロスタイムに意地の1点を返したが、4−3で試合終了。青森山田の全国制覇の夢は、1回戦で早々についえてしまった。

青森山田が直面する大きな課題

今年も初戦敗退となった青森山田にとって、競り勝つ強さが求められる 【たかすつとむ】

 就任13年目を迎えた青森山田の黒田剛監督は試合後、敗戦を振り返って次のように語った。
「DFが硬かった。最後まで安心できないのは分かっていましたが、2点をリードしてからも落ち着きがなかった。試合前の指示や、日々のトレーニングでできていたことがまったくできなかった。足が動いていなかったです。前(前線の選手たち)は、やるべきことをやれていたと思います。(相手のFWに)切り込まれて、プレゼントした点ばかり。プレッシャーがあったのか、若さが出たのか……。大迫(勇也)に関しては、相当警戒していました。プランとしては、失点をしないことでした、打ち合いになると厳しいかなと。しかしDFの硬さが要因で、結果的に打ち合いになってしまいました」

 悔しい敗戦となった青森山田だが、全国大会で勝てない要因はどこにあったのだろうか。黒田監督は「全国との差は紙一重だと思います。スキル、精神力の面で同等の実力を持った相手、あるいは格上の相手に競り勝っていく必要があります。(これまで)競り負けているのは事実。上に行くためには避けては通れない道ですから」と分析した。

 競った試合をものにする強さを身に着けるには、普段から厳しい試合を経験することが不可欠。しかし、この試合で感じたのは、青森山田にとっては“敵がいないことが最大の敵”という事実だ。近くに切磋琢磨できるライバルが少ないことは、青森山田が全国で勝ち抜くための大きな課題だろう。全国の舞台で、「接戦で競り負けない強さ」を選手たちが実践することができるのか。青森山田が乗り越えるべき壁は、まだまだ高い。

<了>

(編集部:原田直樹)
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