ダイワスカーレット圧逃V! 37年ぶりの牝馬制覇=有馬記念

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ダイワスカーレットが圧逃V! 37年ぶりの牝馬制覇を達成 【スポーツナビ】

 JRAの1年を締めくくる総決算グランプリレース、第53回GI有馬記念(2500メートル芝)が28日に中山競馬場で開催され、安藤勝己騎乗の1番人気ダイワスカーレット(牝4=松田国厩舎)が逃げ切り優勝。GI桜花賞(2007年)、GI秋華賞(07年)、GIエリザベス女王杯(07年)に続くGI4勝目を挙げるとともに、牝馬による有馬Vは1971年トウメイ以来となる37年ぶり史上4頭目の快挙となった。勝ちタイムは2分31秒5。安藤勝己、同馬を管理する松田国英調教師ともに有馬記念はうれしい初勝利。

 2着には1馬身4分の3差で14番人気アドマイヤモナーク(牡7=松田博厩舎)、さらに4分の3馬身差の3着には10番人気エアシェイディ(牡7=伊藤正厩舎)が入り、3連単は98万5580円の有馬史上最高配当。また、3連複19万2500円、ワイド2万8200円もともに最高配当となった。

 一方、昨年の優勝馬で史上5頭目の連覇の期待がかかっていたマツリダゴッホ(牡5=国枝厩舎)は12着、武豊が騎乗してこれが引退レースとなるメイショウサムソン(牡5=高橋成厩舎)は8着、今年のジャパンカップの勝ち馬スクリーンヒーロー(牡4=鹿戸雄厩舎)は5着に敗れた。

天皇賞・秋の悔しさは忘れない……陣営一丸の完ぺき仕上げ

返し馬の時点から「天皇賞とは全然違っていた」とアンカツは自信を深めた 【スポーツナビ】

 最強の証明。ダイワスカーレットは自らの脚でもって、雲ひとつない空のもとアピールしてみせた。

 「あの悔しさは一生忘れないと思います」と松田国英調教師が語った、2センチ差で同世代のライバル馬ウオッカに敗れた前走GI天皇賞・秋。直接対決では3勝2敗と1つ勝ち越しているものの、この1つの大きな敗戦で「最強=ウオッカ」へと流れが傾きかけていた。
 再び最強の称号を取り戻すためにも有馬は落とせない――その大目標へ向け、天皇賞からこの2カ月弱、「チーム・ダイワスカーレット」はさらに結束を強固。そして、決戦の28日・中山競馬場に送り出されたダイワスカーレットは完ぺきに仕上がっていた。この中間、調教にも携わっていた安藤勝己が振り返る。

 「パドックでまたがった時から天皇賞とは全然違っていた。すごくいい仕上がりでしたね。返し馬が終わった時点で『今日は大丈夫だ』って安心感がありました」

「とにかくいいリズムで」ハイペースを悠々の逃走

最強の証明――直線は影も踏ませぬ圧逃劇! 【スポーツナビ】

 7カ月ぶりの休み明けだった天皇賞・秋はテンションが高く、レースでも引っ掛かりながらの先行。「リズムが悪かった」と、この前半の力みが最後の2センチ差となってしまったわけだ。
 同じ徹を踏まないためにも、「天皇賞後はいかにリラックスして競馬ができるようにするか、馬場入りの練習、普通キャンターから念には念をいれました」と松田国調教師。その執念の調整が実り、ダイワスカーレットは陣営の期待どおりの落ち着きを取り戻していた。そして、安藤勝に自信を宿らせるリラックスした状態でゲートイン。スタートの扉が開くと、好スタートから当たり前のように、スッとハナを主張する。

 「スタートが速いのは分かっているし、きょうの状態だったら変に抑えるよりも、スカーレットのペースで行こうと思いました。天皇賞みたいにガチーン!と行っていないからね。とにかくいいリズムで走れれば、と思っていたんです」
 1周目の3コーナーから11秒台のラップを快調に刻み続け、1000メートルの通過は60秒を切るペース。2002年−04年に有馬3連覇を達成し、今年はアルナスラインに騎乗していたオリビエ・ペリエが「みんなダイワスカーレットを意識して、これが2500メートルのレース?ってくらい、前半は速かった」と語っていたほどの激流ペースだった。

 さらに、後ろにピッタリつけていたメイショウサムソン、カワカミプリンセスが早くも向こう正面から突っついてくる。この速い流れでマークされる展開となると、普通は逃げ馬は苦しいもの。しかし、アンカツは慌てない。むしろ、絶対的な“恋人”のスピードを信じていた。

1頭別次元の競馬「この馬の強さを見せることができた」

「この馬の強さを見せることができました」とアンカツはニッコリ 【スポーツナビ】

 「みんな結構早く動いてきたな、っていうのは分かりました。でも、あのペースだったら反対に追いかけてきた方が苦しくなりますからね。こっちは二の脚がある馬なので、何とか我慢できるだろう、と」

 アンカツが振り返ったように、むしろ手応えがキツくなってきたのはサムソン以下2番手グループ。逆にダイワスカーレットは気持ち良さそうにまたペースを上げると、直線では完全に突き放して一人旅だ。
 ダイワスカーレットを目標に早めに仕掛けていった先行グループが次々と失速する中、最後方で脚をタメていた人気薄のアドマイヤモナークが大外から突っ込んできたものの、焦点は2着争い。ダイワスカーレットは完全に別次元を走っていた。

 「この馬の強さを見せることができました」とパーフェクトな騎乗を見せたアンカツはニッコリ。一方、松田国調教師は「何て言ったらいいのか……。厩務員もアンカツさんも、大城オーナー、社台ファーム、感謝の言葉しかありません」と感無量の表情で話し、「2センチ差で負けた時の悔しさをなくすことなく、今回の仕上げに持ってこれた。みんな、いい仕事をしてくれました」と、感謝とねぎらいの言葉を送った。

09年はいざ海外へ、松田国師「3勝したいですね」

来年は海外へ、ダイワスカーレットなら陣営が掲げる「3勝」も夢ではない 【スポーツナビ】

 “牝馬の時代”を締めくくるにふさわしい有馬史上4頭目の逃げ切りV。ウオッカ不在だったものの、この“圧逃V”は再び現役最強の称号をその手に取り戻したと言って説得力十分の勝利だ。
 そして、来年も現役続行が決定しているだけに、次なる目標は大きな注目となるだろう。まだオーナーに了承は得ていませんが、と前置きした上で2009年シーズンの大目標を松田国調教師は明かした。

 「海外で3勝したいですね。勝つために、国内で1戦使って海外に行くのか、海外で1回使って(目標のレースを)勝ちに行くかは決めていませんが、どこの国のどのレースにするか、今必死でリサーチしています。一番強い馬が集まるレースを目指したい」

 具体的なレース名こそ出さなかったものの、“一番強い馬が集まるレース”となると、ドバイワールドカップ、英国キングジョージVI世&クイーンエリザベスS、フランスの凱旋門賞、そして、米国ブリーダーズカップなどが候補となる。ウオッカも来年は海外遠征を視野に入れている分、もちろん、これらのレースで最大のライバルと世界一の座をかけ、再び激突することもあるだろう。その時が真の決着戦だ。

 日本が誇る女傑から世界を制する女傑へ――2009年はその名のモデルのごとく、ダイワスカーレットが世界中で愛されるヒロインとなる。

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