女子バレーの新世代、「89年組」に注目!

田中夕子

野球は松坂世代、バレーは河合世代!?

河合を筆頭にした新世代「89年組」。女子バレーの未来を担う、輝く原石たちの魅力とは 【Photo:築田純/アフロスポーツ】

 優れた同世代の選手たちを多く擁する場合、俗に「○年会」「○○世代」と称されることが少なくない。野球を例にするならば、古田敦也、山本昌広らの「(昭和)40年会」から、松坂大輔、杉内俊哉、新垣渚ら1980年(81年)生まれの選手を含めた「松坂世代」まで、実にタレント豊富な同年代が多く存在する。
 では、果たしてバレーボール界はどうか。過去まではさかのぼらず、現在の縮図を見てみると、まず男子では山本隆弘、宇佐美大輔(ともにパナソニック)、甲斐祐之(豊田合成)、直弘龍治、尾上健司(ともにJT)ら多くの代表経験選手を擁する現在30歳の「78年組」がいる。さらにその幅を男女に広げるならば、栗原恵(パイオニア)、大山加奈(東レ)、越川優(サントリー)、富松崇彰(東レ)ら24歳の「84年組」も実に豪華な面々だ。
 そして、新たに注目すべき平成生まれの女子選手たちがいる。今夏の北京五輪にも出場した河合由貴(JT)を中心とした「89年組」だ。
※注:世代は学年で計算。河合は1990年1月の早生まれ。

世代の筆頭・河合と追いかける鈴木

 東九州龍谷高校時代から、世界ジュニア選手権に出場するなど、世代ごとの国際大会では名をはせた河合だが、シニア代表のなかでは経験不足が否めず、五輪本大会でもベネズエラなど格下チームとの対戦時にしか出番は回ってこなかった。
 若干18歳での五輪出場に、「本当にセッターは河合でいいのか」と国際大会のたびに論議も起きたのは確かだ。だが、それはあくまで正セッターは竹下佳江であり、ほぼ9割9分は竹下がトスを上げる状況あってのこと。それでは、河合の持ち味、良さが生かされるはずはない。
 手首が柔らかく、ハンドリング技術にも長けており、フロント、バックへトスを上げる際にフォームに大きな差が生じない。ブロッカーからすれば、ギリギリまでどちらに上げるか分かりづらく、ブロックのヤマを張りにくい。「競ってくるとトスが単調になる。まだまだ課題や修正することばかり」と謙遜(けんそん)するが、天皇杯・皇后杯でもスタメンでフル出場の機を得るなど、ようやくチャンスを与えられつつある。「今まで体験したことがないほど、密度の濃い時間だった」2008年を無駄にしないためにも、まずはリーグで結果を残す。そうすれば、真鍋政義新監督のもと起動する新生日本代表の司令塔候補としても、今度は異論を唱えられることもなくなるはずだ。

 もう1人、将来が楽しみな同級生セッターがいる。八王子実践高校からデンソーに入った鈴木裕子だ。
 高校時代まではライトの選手で、経験はわずか半年という“急造”セッターなのだが、チーム事情に伴い入社後まもなく、中学3年以来というセッターへコンバートされた。171cmとセッターとしては高さもあり、パスの基本技術も長けている。高校時代から、一番いい場面で相手が最も嫌なところへ打つ巧みさ、器用さも持ち合わせている。同期の河合を「技術も、オリンピックに出たこともすごいと思う」と今は見上げているのが実情だが、将来を見据えれば、そうも言ってはいられない。
「バレーボールはアタッカーが目立つことが多いけれど、目立たないなかで光るトスを上げられるセッターになりたい」
 物おじしない度胸のよさで、まずは所属チームから、司令塔争いに名乗りを上げる。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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