錦織圭、2009年躍進の鍵はスタートダッシュにあり!

内田暁

大躍進を遂げた2008シーズン

2月のデルレイビーチ国際選手権を制し、勢いに乗った2008シーズン 【Photo:CameraSport/AFLO】

「ランキング50位以内が、今年の目標です」
 実直な性格でリップサービスなどは苦手、故に、本当に心の内にある思いのみを口にする錦織圭(ソニー)が、年内の目標設定を「100位以内」からそのように変更したのは、今年2月、デルレイビーチ国際選手権を制した翌週のことだった。

 日本男子テニス界の話題を独占した、この18歳(12月29日で19歳の誕生日を迎える)の今年の歩みについて、いまさら多くの説明を必要とはしないだろう。2月にツアー初優勝を果たし注目を浴びると、8月には全米オープンで当時世界4位のダビド・フェレール(スペイン)を撃破しベスト16入り。今年序盤に289位だったランキングを、最終的には63位にまで上昇させ、充実のシーズンを終えた。

 この63位という成績により、来年1月19日から開催される全豪オープンの出場は確実。来年は今年以上に、彼の「芸術的」と形容される独創的なテニスが、世界の大舞台でトッププレーヤー相手に展開されるシーンを見ることができるのだ。錦織が、常々「最も対戦したい」と渇望するフェデラーとの対戦が実現する可能性も、決して低くはない。そのような、来年見られるであろう夢のカード、そして錦織の躍進を夢想するだけで胸が高鳴るが、果たして彼が来年飛躍するためには、いったい何が鍵となるのか? 冷静に検証してみたい。

「50位以内」という目標設定が持つ意味

 冒頭に、錦織が今年の目標を「50位以内」に軌道修正したと述べたが、これらの「100位以内」「50位以内」という数字は、単なる“数字の切れ目”以上の意味合いを有している。

 テニスではランキングこそが強さの指標であり、そして毎週世界各地で開催される大会のいずれに出場できるかも、ランキングを基準に決められていく。例えば、テニスで最も格の高い「グランドスラム」(全豪、全仏、全英、全米)4大会の選手枠は128であり、本選にストレートインできる選手は100人強。つまりランキング100位以内というのが、一つの指標となる。
 男子では、これらグランドスラムの次にグレードの高い大会として、「マスターズ」と呼称される複数の大会がある。来年は8つのマスターズ大会が開催されるが、これらの多くは、56人の選手により争われる。つまり錦織が掲げた「50位以内」という目標は、「ほとんどの大会にストレートインできる権利」を得ることを意味するのだ。

1/2ページ

著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント