平野孝、北米で駆け抜けた左サイド=インタビュー

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USLのバンクーバー・ホワイトキャップスでプレーする平野孝 【Vancouver Whitecaps FC】

 ロッキー山脈を水源とするフレーザー川の河口の街、カナダのバンクーバーでも、平野孝は左サイドを駆け上がっていた。切れ味鋭いドリブル突破、豪快な左足シュートで知られる“左サイドのスペシャリスト”は、長年活躍したJリーグを離れ、33歳で自身初となる海外でのプレーを決意した。北米の独立サッカーリーグであるUSL(ユナイテッドサッカーリーグ)のバンクーバー・ホワイトキャップスに入団したのは、2008年3月のことだった。“外国人選手”となった平野は、入団1年目からチームの主力として活躍。全30試合中22試合に出場し、34歳の誕生日の約1カ月後には、得意とする左足で海外初ゴールを決めるなど、チームのリーグ優勝に貢献した。
 サッカー発展途上の北米の地で、新たなサッカー人生を歩み始めた平野。初めての海外生活、異国のサッカーに何を感じ、何を思ったのだろうか。

34歳になってもサッカーがうまくなりたい

「サッカーがうまくなりたい」。34歳になっても平野の向上心は尽きることはない 【スポーツナビ】

――早速ですが、バンクーバー入団に至った経緯についてお尋ねします。そもそもJリーグでプレーしていたころから、海外でプレーする願望は強かったのですか?

 海外でプレーする、という思いは、僕の中で1番ではありませんでした。ただ、サッカー選手としてうまくなりたい、という気持ちがあれば、何も日本国内でプレーする必要はない。常に高いところを目指していくのなら、日本にとらわれずに、いろいろな国に行く。そしてチャンスがあれば、その国でプレーする。そういうスタンスは高校を卒業した時から変わっていません。
 34歳になってもサッカーがうまくなりたい、いろいろなサッカーを見てみたい。その向上心が僕の中で1番にあります。たまたま今回プレーする場所が、海外であったということです。

――入団前に、ほかのクラブから具体的なオファーはあったのですか?

 実は大宮アルディージャでプレーした後、MLS(メジャーリーグサッカー)のチバスUSAというクラブのトライアウトを受ける話があったんです。だから、日本のクラブとは何も接触しませんでした。その後、知り合いに、(チバスのために)米国でトレーニングできる場所を探せないか頼んだんです。そうしたら、USLのバンクーバーというクラブで練習に参加させてもらえるという返事が来たんですよ。

――そこでバンクーバーとつながるんですね

 はい。その後、練習参加するために自分のプレーが入ったDVDをバンクーバーに送ったんですが、それを見た監督がすごく興味を持ってくれて。クラブは契約内容の詳細まで提示してきました。いろいろ考えましたよ。クラブを調べてみると2011年にMLS参入という目標があることが分かったんですが、自分がチームと合うかどうかは行ってみないと分かりませんからね。
 結局、練習参加してからも、監督に「ぜひうちでプレーしてくれ」と言われました。さらに、フロントからも生活のケアはしっかりすると。誠意をすごく感じました。バンクーバーの街は日本人が住みやすい印象を持ったこともそう。僕の心配事は、家族がストレスなく生活できるかどうかでしたから。
 とはいえ、1番の入団理由は、監督(アイスランド人のソーダソン監督)が素晴らしく、練習もすべてヨーロッパスタイルだったことが大きかった。あとはチームに夢があることも。だから、いろいろな意味でいいタイミングでした。「ここでやるしかない」と。

北米の選手は日本人にないものを兼ね備えている

――USLは、日本人にとってかなりなじみの薄いリーグですが

 そもそも北米のサッカー自体なじみが薄いですね。MLSは今でこそベッカムがいてメジャーになりましたが、昔はリーグ自体がなくなった時期がありましたからね(※1967−84年に存在した北米サッカーリーグ)。MLSもまだまだ発展途上のリーグだと思うし、1クラブに対して年俸の上限が決まっていたりと選手獲得の制約もあります。でも、各チームに1人まで、ベッカムのような高額年俸の選手を獲得できる契約システムができています。

――USLのレベルはJリーグと比べてどうですか?

 リーグ自体のレベルはJリーグの方が上です。個々の選手の技術も日本人の方が勝っています。ただ、フィジカルや身体能力の点では北米の選手の方が上。向こうの選手は日本人にないものを兼ね備えてます。それはプレーの中で随所に表れていますね。

――そういえば今から11年前の1997年、平野選手が所属していた名古屋グランパスは、サンワバンクカップでMLSに所属するD.C.ユナイテッドと対戦(3−1で名古屋が勝利)しましたね

 懐かしいですね(笑)。すっかり忘れていました。当時は、なめていたわけじゃないんですが、「なんだ、米国のチームが来たか」と。負けるわけがないと思っていました。そのころと比べたら、米国サッカーのレベルはだいぶ上がりましたよ。

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