柴田亜衣、笑顔のなかにある強さ=競泳 女子1500m自由形決勝

折山淑美

連日の自己記録更新

女子1500mで銅メダルを手にした柴田。その笑顔のなかには強さがある 【(C)Getty Images/AFLO】

「タイムは満足なんですけど、今まで負けたことのない急に出てきた選手に負けたんで、そこはやっぱりちょっと悔しいですね」
 世界選手権、競泳3日目の3月27日。女子1500mで銅メダルを獲得した柴田亜衣(チームアリーナ)はこう言うと、苦笑いともいえるような笑みを穏やかに浮かべた。

 そんな余裕のある表情が物語るように、今大会の柴田は充実している。競泳初日の25日の400m自由形決勝では、自身が持つ日本記録を1秒55更新する4分05秒19で銅メダルを獲得した。そして翌26日の1500m予選は、山田沙知子が保持する日本記録を0秒21更新する16分05秒92で2位通過。そしてこの日の決勝では日本女子初の16分突破を果す15分58秒55をマークと、3レース連続で自己記録を出しているのだ。
 特に1500mは五輪種目ではないため、泳ぐのはこの大会を最後にするつもりだった。その最後のレースで日本記録更新を、という意気込みもあったが、前日の予選でアッサリとその目標も達成。しかも16分05秒台が出ると、「どうせなら16分突破を」と決勝の目標を変更していたのだ。

気を抜かず「粘って、粘って」

 決勝のレースは15分55秒01の自己記録を持つ、2005年世界選手権の覇者ケート・ジーグラー(米)が、400mまでは世界記録を上回るペースで飛び出した。2位で粘っていた柴田は、900mで予選7位通過のフラビア・リガモンティ(スイス)に交わされて3位に落ちた。

「とにかく16分を切りたかったんで……。彼女がどのくらいのペースでいってたかは分からなかったですけど、差を考えると16分ちょうどくらいではいけてると思って。1000mすぎで自分が3位を泳いでることは分かったし。すごくきつかったけどここでちょっと気を抜いて、16分0秒や16分1秒になったら本当にイヤだったので。最後の500mは粘って、粘って、ずっと『諦めちゃダメだ』と思って泳いでたんです」

 話の途中で柴田は、800mの通過タイムを聞いてきた。それが8分30秒92だったと知ると、納得するような表情になった。中間点の750m通過も7分58秒55で通過している、納得できるペースだったからだ。
「ジーグラー選手とかヘイリー・ピアソル選手(米国)はいつも8分30秒を切って入ってるのは分かっているので、とにかくそれに1000mくらいまでついていきたいと思ってたんですけど。でもすごい速かったので」

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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