圧勝したフェデラー「また日本に来たい」=ジャパンオープン

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ジャパンOPテニス最終日 男子シングルスで優勝し、トロフィーを掲げるロジャー・フェデラー=有明テニスの森公園 【共同】

 王者の風格を漂わせるパッシングショットに、大観衆が感嘆の息を漏らした。テニスAIGジャパンオープンは8日に最終日を迎え、男子シングルス決勝は第1シードのロジャー・フェデラー(スイス)が、ティム・ヘンマン(英国)を6−3、6−3で下し、初優勝を飾った。初来日でタイトルを獲得したフェデラーは「来年もこのトーナメントを勝ちたい」と、次回大会への参加を示唆。世界最高のプレーに酔いしれたスタンドから喝采(かっさい)を浴びた。

ヘンマンも脱帽の鮮やかなパスショット

 前に出て来る相手を抜き去る――ネットへと出て行くヘンマンを何度もうつむかせたフェデラーのパッシングショットは、あまりにも鮮やかだった。
 ヘンマンは、無敵の王者に立ち向かう心得として「(準決勝のように)サーブアンドボレーばかりではいけない。(4回戦でフェデラーに1−6、2−6で敗れた)ウェスリー・ムーディ(南アフリカ)の二の舞いになってしまう。彼をリズムに乗せないように、いろいろな手段をミックスさせた」戦術を採った。しかし、3連続のダブルフォールトで第1セットの第6ゲームを落としてしまう。第2セットでは展開を打開すべく前に出てプレッシャーをかけたが、次々に見事なパスを決められ「彼のプレーは素晴らしかった。特にパスは安定していて、すごくタフだった」と危惧(きぐ)していた状況に直面しなければならなかった。フェデラーは「サーブアンドボレーかリターンでプレッシャーをかけてくるだろうっていうことは予測できていた」と冷静に分析。相手に試合のリズムを渡す可能性をしっかりとシャットアウトしていた。

 フェデラーの強さの秘訣(ひけつ)に迫るときには、必ず「欠点がない」という言葉が登場する。そして、比較対象の多くは一時代前の英雄ピート・サンプラス(米国)だ。オフコートでもフェデラーと親交のあるヘンマンは「彼はファーストもセカンドもサービスが安定してバリエーションを持っている。そして、スピードもバランスもフットワークも優れている。(サンプラスとの比較について)サンプラスはサービスを重視するアグレッシブなスタイルだが、今はサーフェスも当時ほど速くないものが多いし、ボールも重くなった。それらはフェデラーにより合っていると思う」といくつかの例を挙げながら、フェデラーの“完全無欠”ぶりを証言した。コンディションが整っていない序盤こそ苦しんだ試合もあったが、見た者の印象は「やはり強かった」に集約される。4大大会とは異なり3セットでの勝負であること、サーフェスが速いことをきっちりと意識してアップセットの芽を摘んだ。「健康を維持できれば数年は彼の時代が続く」というヘンマンの言葉は、そう簡単には覆ることがなさそうだ。

再来日は実現するか

 この日、女子シングルスを優勝したマリオン・バルトリ(フランス)は「フェデラーが第1シードから優勝するのは当たり前のように感じられるかもしれないけど、私にとっては決してそうではない」と話したが、ファンにとってフェデラーは、誰もが勝つことを信じてやまない存在だ。最終日には、彼を一目見ようと前日からの徹夜で当日券を購入した者を含め、1万3519人が会場を訪れた。大会を通じた観客数「7万2386」は、テニス界を超えて世間の話題となっているマリア・シャラポワ(ロシア)が来日した2004年に記録した最多記録5万5871人を大幅に更新するもので、フェデラー来日の効果は計り知れない。初戦の前日に行われた公開練習は試合さながらで、素晴らしいプレーに惜しみない拍手が送られた。また、サインをねだるファンの数もダントツだ。フェデラーが会場の通路に現れると、すさまじい行列がどっと押し寄せる。

 フェデラーの再来日を期待するのは、優勝セレモニーのスピーチで「素晴らしい決勝戦だった。また来年も参加してくれるね?」と“公開オファー”を仕掛けた日本テニス協会の盛田正明会長だけではない。まだ話が早いとは誰もが知りながら、気に掛けずにはいられない話題だろう。試合後の会見でも「コートでは再来日を誓っていたが、本当にまた来日するのか」と質問が飛んだ。フェデラーは「僕は『また日本に戻って“来たい”』と言ったんだ」と苦笑いで釈明。しかし、アジアツアーにも積極的に参加しており「トーナメントを勝った時には、ディフェンディングチャンピオンとしてまた参加したいといつも思うんだ。でも、随分多くのトーナメントに出ているから、そのすべてに必ずまた参加するというのは厳しい。でも、もう一度必ず来たいと本当に思っているよ」という言葉には期待せずにはいられない。

<了>
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