順大の優勝は極めて順当な結果=第83回箱根駅伝総括

小野哲史

上位校が大きく崩れなかった今大会

驚異の走りを見せた順大の今井正人。3年連続区間賞、3年連続金栗杯を獲得した 【Photo:杉本哲大/アフロスポーツ】

 復路の6区では、順大、東海大、日体大といった往路上位校が続々と走り出していく中、好スタートを切ったのが日大や駒大といった実力校だった。特に4年連続6区での出場となった日大の末吉翔は、前回苦戦した経験を生かした区間賞の走りで、逆転優勝を目指すチームを3位へと押し上げた。また、7区では過去3年間1区を任せられていた日体大の鷲見知彦、8区では出雲と全日本を故障で欠場した東洋大の北島寿典がともに区間賞を獲得。チームがトップ3に入る可能性をしっかりと次の区間につないでいた。ただ、上位校が大きく崩れなかった点は、前回大会とは大きく違う点だった。
 7区で日体大に抜かれた日大は、区間3位だった8区の笹谷拓磨が3位の座を再び奪い返し、東海大も7区・植木崇行が区間2位で走り切って、6区で出遅れた分をすぐに取り戻している。また、順大も7区、8区はいずれも区間4位という安定した走りで首位をがっちりとキープした。

箱根を制するための条件とは?

 順大が本領を発揮したのは9区以降だった。「裏のエース区間」とも呼ばれる9区では、長門俊介が2位の東海大と1分12秒、3位日大とは1分51秒ものタイムを引き離す区間賞で首位固めに入り、3分20秒のリードをつくってアンカーへとつなぐ。最終10区の松瀬元太は大きなミスさえしなければよかったにもかかわらず、積極的な走りで後続との差をさらに広げていった。区間記録を6秒更新する区間新記録で松瀬が大手町のゴールに飛び込んだことで、順大は復路のレースも制する文句なしの完全優勝。2位以下に6分以上の大差をつけ、6年ぶり11度目となる栄冠に輝いた。なお、10区のアンカー勝負で阿久津尚二が抜け出した日大が2位に食い込み、東海大は3位でフィニッシュ。また、予選組からは早大が6位で5年ぶり、粘りのレースで9位に入った専大が12年ぶりにシード権を獲得した。

 第83回箱根駅伝をあらためて振り返れば、順大の強さが際立っていたレースだったと言えるだろう。5区・今井の歴史的な大逆転はもちろんだが、そのほかにも4区・佐藤秀、9区・長門、10区・松瀬が区間賞。2区までの遅れはまったく問題にならなかった。そんな理想的なレースの原動力になったのは、前回8区でブレーキを起こしながらも必死に襷をつないだ先輩、難波祐樹(現JALグランドサービス)の存在があったからだと今井は言う。「難波さんがあのときつないでくれた襷を、僕たちが優勝につなげたかった」。襷に込めた“想い”がどれだけ強いか。それが箱根を制するための条件であるとしたら、順大の優勝は極めて順当な結果だったのかもしれない。

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著者プロフィール

1974年神奈川県生まれ。東海大学文学部卒業後、広告代理店勤務を経て、フリーのスポーツライターに。陸上競技の専門誌に寄稿するほか、バレーボール、柔道、サッカーなど幅広い競技を題材に取材活動を続けている

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