バレーボール日本代表・男子コメント=W杯プエルトリコ戦

田中夕子
 上位3チームに北京五輪出場権が与えられるバレーボールのワールドカップ男子大会第7日が26日、マリンメッセ福岡などで行われ、日本はプエルトリコに0−3で敗れ、通算成績は3勝4敗となった。
 以下は試合後の、植田辰哉監督と選手のコメント。

速攻を決めるなど活躍を見せた松本だが、チームが勢いに乗れない現状にジレンマを感じているようだ 【坂本清】

■松本慶彦「相手のブロックが甘く、自分が良かったわけではない」

 点差はきん差だったので、こちらのミスした分を差し引きすれば、もう少し取れるセットも増えていると思う。ここで1本切りたいという勝負どころで決まらない場面が多かった。そこで切り抜けられれば勝てた試合だったと思う。ソトへのブロックは「打ち落としてきたものを止めよう」という指示だったが、思っていたよりもトスが近くに上がり、触れないところで打たれてしまい、対応が難しかった。時間差に入ってくるときは落としてこないし、上から打たれたスパイクが多かった。何もできなかった。
 立ち上がりからどんよりしていた。スタートからレセプションが乱れて2、3点バタバタと取られてしまった。こちらもいいプレーをするのに乗れない。出してはいけない雰囲気を出してしまった。2セット目を終えた後も「決まってから、もっと声を出そう」と言い合ったが、その決めどころで決めきれず、乗るに乗れなかった。
 クイックにブロックが付くのは甘かったし、できるだけサイドへのブロックを1枚にしたかったので、何とかブロックを1枚引き付けたかった。積極的に動くようにしたり、ラリー中も自分にトスを上げてくるように宇佐美さんを呼んだ。(85.71%という高いスパイク決定率を残したが)相手のブロックが甘かっただけで、自分が良かったわけではない。
 疲れもあるし、少しいら立ちがあった。こういう状況になったら、どう頑張ればいいのか。いくらセンターが決まっても、ブロックしても、決めるべき場面ではなかなか僕らには上がってこない。チーム全体が波に乗れないことを片隅に置いてプレーしていたので、試合が終わったときはちょっといら立ちが出てしまった。
 まずは初心に戻ること。開き直ると言っても、開き直り切れていない。全体的に疲れも出てきているが、それを出したらこういうゲームになってしまうと思う。もう一度チームが良いときの感じを思い出して、明日のスペイン戦は粘りのあるバレーができるように頑張りたい。

初先発の出場となった山本だが、決定機を逃してしまった 【坂本清】

■山本隆弘「今日の負けは自分の責任」

 今大会初めてスタメンで出させてもらったが、1、2セット目の決めなければならないところでブロックされてしまった。今日の負けは僕の責任だと思う。


■荻野正二「メンバーが代わる際の確認ができていない」

 残念な結果に終わった。昨日の試合を勝ち取った意味を、今日のゲームで壊してしまった。1セット目の立ち上がりに3−8までリードされる状況は今までなかった。チームとしてまとまっていなかったのだと思う。それでも1、2セット目は23点まで追い上げた。あと2点が取れなかったのは自分個人としても残念であり、その悔しい思いを明日のスペイン戦にぶつけたい。
(レセプションは)思っていた以上に崩されていた。それだけ低い(※チーム全体で39.06%)と、当然バレーにならない。前に打たれるボールは昨日もだいぶやられたので警戒していた。今までもいろいろなメンバーでレセプションをしてきたが、メンバーによって取れる選手と、取れない選手がいる。攻撃力を上げるためには、前に打たれるフローターサーブはミドルに取らせるべきだったと今は思う。そこでレセプションが返らないとクイックが使えず、山本、清水に負担がかかるパターンが続いている。津曲と僕が入る場合は、長年やっているのでお互いの対策もできるが、メンバーが代わった際の確認ができていなかったと思う。
 ジャンプサーブで(選手同士の)間に打たれて何本かサービスエースを取られたものも数本あった。お互いに意思表示はしているが、「取る」というコールが遅れたり、後手後手に回っていた。明日はもっと積極的に取りに行くよう、とにかく足を動かしたい。レセプションを返して、センターでサイドアウトを取ることが日本のスタイルなので、レセプション陣は、明日の練習でもっと確認しなければならないと思う。


■山村宏太「同じことを繰り返しても仕方がない」

 自分たちがやろうとしているサーブ&ブロックを相手にやられてしまった。相手のサーブが強かったというよりも、レセプションが良くなかったというイメージが払拭(ふっしょく)できずに、試合が始まってしまった。自分はレセプションをするわけではないが、昨日のイメージが頭の中にあって、いつもより縮まったり、逆に大きくなったりしてしまったと思う。ソトに関しては高さがある選手なので、全部が全部当たるわけではないが、止めなきゃいけないボールを止めきれなかった。チャンスがあったがものにできないという印象がある。
 1セット目からムードが悪く、メンバーが代わってもムードが変わらなかった。昨日のイメージがあるからどんどん良くない方向にいってしまう。チームが落ち込んでいるときに、火をつけようとしても火に油を注ぐような状態になってしまう。昨日は何かが変わったというよりも、偶発的なものが重なって勝つことができたが、今日はそういうきっかけがないまま、ムードが悪く「どうしよう」と言っている間に負けてしまった。こんな試合をしているようではダメだし、同じことを繰り返しても仕方がないので、悪いイメージを払拭して頑張っていきたい。

チームメートと声を掛け合う宇佐美 【坂本清】

■宇佐美大輔「サーブレシーブの体系が課題」

 最後に荻野さんと津曲さんと3人で話していたのは、サーブレシーブの体系をどうするのかということ。前に打たれるサーブをミドル(ブロッカー)が取るのか、前衛(のレフト)が取るのかというのが課題としてある。明日の練習でやってみなければ分からないが、荻野さんと津曲さんであればそれほど問題ない。ただアウトサイドヒッターの越川にしても、ゴッツ(石島)にしても、あれだけ崩されてしまうと厳しい。「前のボールだけ取ってくれ」というだけなら負担もなくなるのではないか。明日の午前中にまた確認し合いたい。
 プエルトリコは、正直勝てない相手ではなかった。ブロックも出ているし、センター線も機能している。サイドアタッカーとサーブレシーブが決め切れなかったのが敗因だと思う。今日はセンターが決めてくれていたので、ある程度レセプションが返ったときはセンターを使っていこうと思っていた。それでもクイックが使えないときはあるので、そうなるとサイドアタッカーに託す部分もあるし、そこでアタッカーがどれだけ決めてくれるかが勝負だったと思う。ブロックに2枚つかれたとき、簡単にブロックされてしまうことが多いので、そこはアタッカーが修正してほしいところでもある。


■植田辰哉監督「今一番心配なのは石島」

 昨日も今日と同じような始まりだったが、途中で荻野、千葉が出て最後にまた石島が入るという形で勝つことができた。われわれの強みとなるサーブ力を考えたとき、2人のエース(石島、越川)は外せないと思ったので、今日のスタートは昨日のスタートメンバーで行こうと決めた。ムードも含めて、試合への入り方が悪かった。乗り切れないままゲームに入ってしまったことが今日のゲームの一番の反省点だと思う。
 アジア選手権の最終戦も含め、反省のもとからここまでやってきた。いいときにいいパフォーマンスをしていいムードをつくることはあるが、悪くなったときにお互い助け合える選手でなければならない。これからの日本の中では、石島や越川が中心になってしっかりやってくれないと困るので、彼らにはいつもアドバイスをしてきた。(ベンチで石島に笑みが見られると指摘されたが)たとえいいものを持っていても、ナショナルの選手は強い気持ちも持っていなければならないし、石島はそれを持っている選手だと思っている。表現の仕方が誤解されるようなことをすべきではないと思う。もしそう(笑みを見せた)ならば、明日以降はそのようなことがないように指導したい。確かに今のムードは悪い。今のムードで彼を入れるのはチームにとって危険だと思う。
(山本のスタメン起用に関しては)清水の疲労がたまっていることも含め、昨日、山本の3、4セット目の出来が良かったので迷わずスタートにした。確かに結果は欲しかった。特に1セット目の23−23で、「そこで決めてくれれば」という場面があった。だが、それについては本人も反省しているし、ベストを尽くした中での結果であり、自己反省ができているので心配していない。今一番心配なのは石島だろう。第3セットも、彼のブロック、サーブに期待して再度コートに戻したが、起用が当たらなかった。

<了>
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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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