バレーボール日本代表・男子コメント=W杯スペイン戦

田中夕子
 上位3チームに北京五輪出場権が与えられるバレーボールのワールドカップ男子大会第8日が27日、マリンメッセ福岡などで行われ、日本はスペインに1−3で敗れ、通算成績は3勝5敗となった。日本は、今大会での北京五輪切符獲得の可能性はなくなり、来年5、6月に行われる世界最終予選兼アジア予選での出場権獲得を目指す。
 以下は試合後の、植田辰哉監督と選手のコメント。

石島は「チームにいい影響を与えられなかった」と、この日のパフォーマンスを悔やんだ 【坂本清】

■石島雄介「非常に悔しいが、実力のなさが出た」
 サーブレシーブが乱れてしまった。今日はチームみんなが働いてくれたし、支えてくれる人もいるから勝ちたかった。非常に悔しかった。サーブをあれだけ打たれたので、悔しいが、実力のなさが出た。
 昨日は、自分としてもチームにいい影響を与えられなかったし、チームとしてもダメなほうにいってしまった。今日は試合に出させてもらったので、勝利に貢献したかったが、これが実力だと思っている。
 東京に戻ってからは、胸を借りるつもりでやらないといけない。1人の選手として、強い国に対してスパイクを決めなければならないし、守らなければならないと思う。

■荻野正二「レセプションが崩れたことが大きかった」
 昨日のああいう負け方を受け、今日の1セット目はチームとして勢いのあるいい入り方ができたのではないかと思う。それでも21−14とだいぶ差をつけてから、私のレセプション(サーブレシーブ)が受けに回ってしまい、チームに迷惑をかけて申し訳ない。その結果として、2セット目以降に相手を勢いづかせてしまった。レセプションが崩れたことが大きかった。
 スペインはレセプションが短くても、Aカット同様にコンビが崩れなかった。日本も同じような展開を目指しているが、後手に回ってしまった。レセプションからセッターへ、スパイカーへのつながりをもっとやっていかなければいけない。強いチームはそこでしっかり切れているから強い。目標にしなければならない。
 マークしていた17番と12番を1セット目はつぶすことができていたが、2セット目以降は12番を生き返らせてしまった。つぶしきれなかったことも敗因につながった。
 今日の試合は負けたが、あとの3試合も今日の1セット目のような入り方をすることを心掛け、12人が全員で1つとなって思い切ってぶつかりたい。

第1セットを先取したものの、敗戦を喫した日本 【坂本清】

■津曲勝利「この3試合は課題ばかりだった」
 昨日はあのようなだらしない試合をしてしまったので、今日のミーティングでは勝ちたい気持ちを前面に出していこうと話し合った。それが、前半の勢いにつながっていたと思う。
 荻野さんが入っているときは、フローターサーブに関しては僕と荻野さんで取っていこうと決めていた。それが全日本の形であり、最初はうまくいっていたが、1セット目の終盤にライン側にいいサーブを打たれて崩れてしまった。2セット目以降は、14番の選手に対しては3人でレセプションをしたが、対応できなかった。
 第3セットも、荻野さんはいわゆる攻撃面の役割が強いオポジット(スーパーエース)としてではなく、守備的要素が強いライトの役割で入ったので、レセプションをすることになっていた。でもその前に点数を取られてしまったのですぐにポジションを変わることになってしまった。あれは日本チームが劣勢だったので苦肉の策。あまり日本らしい形ではなかった。オポジットはやはり攻撃型選手なので、まずはレセプションを何とかしなければならない。
 今まではジャンプサーブで来るチームが多かったのであまり目立たなかったが、九州(福岡ラウンド)に入ってからのエジプト戦で(ジャンプフローターで)崩されたことで、2、3戦目のチームも同じように打ってきたことに対応できなかった。(福岡での1勝2敗は)レセプションが苦しんだ結果だと思う。この3試合は課題ばかりだった。いいところを探すのが難しいぐらい悪いところだけが出た試合だった。
 東京ラウンドでは、九州の3戦とは違う戦い方をしないといけない。これを引きずっていては得るものは何もない。ジャンプサーブにしても、フローターサーブにしても強いチームはいやらしいところを狙ってくる。まずはレセプションを返さないと、今まで練習してきたことを何も出すことができない。センター陣の調子がいいので、センターを使えるようなレセプションを返したい。東京に戻って、試合までの2日間でまずはレセプションで自分たちの形をつくって、残り3試合はぶつかっていきたい。

■宇佐美大輔「チームの状態を、もう一回リセットし直したい」
 荻野さんが入ることでサーブレシーブは安定している。越川と石島を入れて攻撃力を上げようという狙いだったが、相手の大きいブロックに対してうまくいかなかった。コンビを使おうと思っていたが、そこまでに持っていけなかった。
 1本、2本はクイックを使えると思ったが、実際にトスを上げてみるとそうではなかった。東京大会は東京大会で、帰ってからの2日間で考えていきたい。チームの状態が悪いと思うので、それをもう一回リセットし直したい。選手同士でも話をして、変えていかないといけないと思う。

■朝長孝介「トスが短くなってしまったのは自分の責任」
 エジプト戦で揺さぶられてから、フローターサーブへの対策はしてきた。昨日の試合を受け、今日の試合では荻野さん、津曲さんが全部捕ると決めていた。
 それでも崩されてしまうと、どうしても苦しい体勢でしか上げられず、攻撃が組み立てられなかった。トスが短くなってしまったのは、レセプションのせいではなく自分の責任。途中から入って、盛り上げようと声を出して盛り上げていくしかないにもかかわらず、それもできなかった。
■清水邦広「苦しい場面で二段トスを決めきれなかった」
 昨日はみんなの気持ちがバラバラになっていたので、もう一度チーム一丸というのを忘れずに、ミーティングをして、みんなでかたまろうと言い合って臨んだ。
 今日は元気よく、熱い気持ちを出していこうと思い、1本決まったら喜ぶように心掛け、1点を大切にしてプレーした。それでも自分が苦しい場面で二段トスを決めきれなかったことが敗因だと思った。
 1セット目の序盤は走れたが、最後にサーブで攻められてこちらのプレーができないまま、2セット目に入ってしまった。切り替えが甘かった。修正できないまま流れたので、相手に思うようにやられてしまった。レセプションが乱れたところからの二段トスも全然決められなかった。普通に返せばいいボールをミスしてしまったことが反省点。
 福岡の前まではブロックが課題だったが、ブロックの完成を早くすることを意識して、しっかり練習から教えてもらってやってきたので、少しずつできるようになってきた。それでも苦しい場面で上がってきたトスを、(自分のポジションである)オポジットが決められないと、一番苦しくなると思う。そこで決めてこそ役割を果たすと思うし、自分自身の課題がみつかった。
 体勢を崩したときなど、悪い状態で上がってきたときにブロックされている。バランスが崩れても、思い切り打つだけではブロックされてしまうので、もう一度、つないだり、リバウンドを捕る技術を身につけなければならないと、このような大きな大会に出たことで気づくことができた。
 応援してくれる人のためにも、自分のためにも、日の丸をつけて戦っている意地を見せたい。

■植田辰哉監督「ジャンプフローターで崩された」
 1セット目の後半からジャンプフローターで崩され、2セット目にも引きずったまま入ってしまった。
 今大会を通して松本が安定している以外は、清水も決定率が下がっていたし、山本も思うようなプレーができていない。石島は、昨日ああいうふがいない姿になり、いろいろな話をした。技術的にはうまくいかなかったことが多かったと思うが、今日は一生懸命自分のパフォーマンスをしようという姿勢は見られた。それが今日の数字だと思うし、アウトサイドに転向して2年程度なので、今大会の経験を生かして早くチームの軸になれるように期待している。

 先発で荻野を入れた理由は、本来であれば石島−越川が理想的だが、データがたまってくると相手チームはほぼ越川、石島を狙ってくる。そうなったときに、越川があのジャンプフローターを打たれたら、まず今の状況では崩れるのではないかと思った。そうなると越川を外さざるを得ない。日本が誇るサーブのいい選手を1人外さなければならないリスクを感じながらベンチで戦っていた。越川については、まずレセプションを練習することが必要であり、それがチームにとって大きなプラスになる。
 ブロックは、前半はいいブロックが出ていた印象がある。

 ジャンプフローターは、荻野はライトに入ってもレセプションに参加できる。できないローテも1回あるが、あとは守備に入ることができるので試した。レセプションが返ったときの決定率も考え、センターの前後も入れ替えた。
 サーブミスもあり、清水の攻撃力が下がっていたので、3セット目は石島と越川のサーブと攻撃力に期待した。もし崩れた場合は、越川のところに千葉を入れてオポジットを戻すと考えていたが、あそこで先に得点されたのは私のミスだった。

<了>
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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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