ウオッカ、2センチ差の激戦制す! 武豊「感謝の言葉しかない」=天皇賞・秋

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負けてなお強し――アンカツ「たいした馬だよ」

2センチ及ばず2着に敗れたダイワスカーレット(右)だったが、約7カ月ぶりの競馬ながら驚異の走りを見せた 【スポーツナビ】

 「負けてなお強し」という言葉があるが、この日のダイワスカーレットこそ、このフレーズがピタリと当てはまった。4月GII大阪杯以来約7カ月ぶりの競馬ながら、レコードタイムを演出するくらいのハイペース逃走、そしてゴールまで残り100メートルからの驚異の粘り。これを競り負かしたウオッカは、確かに素晴らしい。しかし、それ以上の強さをダイワスカーレットから感じ取ったファンも数多くいただろう。
 この歴史的激戦の勝者となれなかった安藤勝己は、レース後は「やっぱり悔しいね」と言いつつも、その一方で満足感も漂わせる表情で振り返った。
 「レース後は負けたかなって思っていたし、写真判定になるとも思わなかった。ゴール前の手応えでは3着かな、って思ったくらい。それを、あそこからまた伸びるんだから、たいした馬だよ。本当にすごい」

 安藤勝が正直な印象を語ったように、最後の直線の勢いは完全に外のウオッカであり、ディープスカイ。ラストは新旧ダービー馬の一騎打ちかと思われたが、ダイワスカーレットはそれを許さない。むしろディープスカイに1度も前を行かせず、ウオッカとの大激戦に持ち込んだ。この驚異の持続力こそが真骨頂。7カ月ぶりのぶっつけ大一番で、これだけのレースをするのだから、やはり底知れない力を持った女傑である。

予定通り有馬記念か、はたまたJCで完全決着か

有馬かJCか……この悔しさを次こそは 【スポーツナビ】

 ただ、この7カ月ぶりの競馬だったことが2センチ差を生んだ、ともアンカツは冷静に語った。
 「久しぶりだったからやっぱりテンションが高くて、ゲートも良かったんだけど、力みながら走っていた。最初からバーンと行く馬じゃないし、きょうはリラックスしながらのペースじゃない。いつもとちょっと違う感じだった。その分、あとちょっとがね……」
 7カ月もの長期休養明けは、さすがのダイワスカーレットにも微妙な足かせとなってしまったが、それでも勝ったも同然の2着と、改めて現役最強クラスの力はアピールした。当然、次こそは……の期待がかかる。

 次走についてだが、当初発表のとおりなら12月28日のグランプリ有馬記念。同馬を管理する松田国英調教師は「まずは無事であることを確認してから」と、次走に関しての明言を避けたが、この日のレースについては鞍上同様に「3着以下に下がっちゃうような状態から差し返した。本当に力があるなと思いました」と、納得の評価をしている。

 昨年2着に敗れたグランプリで今度こそ優勝を狙うか、それとも急転、ライバル・ウオッカと完全決着をつけるために11月30日ジャパンカップへ出走か。ダイワスカーレットの動向が、この先のGI戦線をさらに盛り上げていくのは間違いない。

四位「次が楽しみに」、ディープスカイ可能性示す3着惜敗

ウオッカ(左)にタイム差なしで3着に敗れたディープスカイ(右)だが、その可能性を大きく示した敗戦だった 【スポーツナビ】

 競馬史を代表する女傑2頭とタイム差なしの接戦。しかもマークした1分57秒2は、従来のレコードを0秒8更新する驚愕のタイム。勝負はもちろん勝たなくてはならないが、3着に敗れたとはいえ「良く走った」と賞賛する声が当然で、落胆する必要も恥じる必要もどこにもない。しかし、手綱を取った四位、管理する昆貢調教師の表情に満足感はなかった。
 「ダービー馬として恥ずかしくない競馬はできたと思うけど、悔しいね」
 四位がストレートに悔しさをぶつけた。GIダービーを制した時と同じ1枠からスタートした四位とディープスカイ。春先の競馬とは違い、秋初戦のGII神戸新聞杯と同じように中団前めからの競馬となった。
 「(1、2着との差に)何かあるとしたら、ゲートを出していったので、力みがちょっとあった。最後の直線の手応えは良かったし、一瞬『オッ』と思ったけど」
 さすがにダービーのような後方一気では、ウオッカ、ダイワスカーレットを捕らえられないと判断したか、この馬としては積極的な位置取りの競馬が前半の力みにつながってしまった。

 ただ、繰り返しになるが、この日のタイム差なし3着という結果は、ディープスカイの底知れない可能性を示した敗戦であるとも言える。まだ、成長途上の3歳。この日のようなレースを経験することで中団からの競馬も覚え、次戦以降は追走がスムースになるだろう。脚質が広がるとともに、期待度もさらに広がったことは確実だ。
 「負けたけど、次に楽しみが出てきた」と四位。一方、昆調教師も「位置取りはあれで良かった」とし、「この世代は弱いと言われてきたけど、ダービー馬の力を見せることができた」と、愛馬の能力を再確認。そして、「当初から言っていますが、“次”が最大の目標ですから」と、キッパリ反撃を誓った。
 “次”というのは、11月30日・東京2400メートルが舞台のジャパンカップ。この日の敗戦を大きな糧に、ディープスカイがダービーを制した思い出の舞台でさらなる飛躍を見せる。

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