稲本、長谷部に訪れた実りの秋=ブンデスリーガ序盤戦総括
2年目のジンクスを脱した稲本と長谷部
ボルフスブルクでレギュラーに定着した長谷部(左)。クロスが確実にチームの武器になりつつある 【写真は共同】
2カ月前、筆者はフランクフルトの稲本潤一とボルフスブルクの長谷部誠は、2年目のジンクスに苦しんでいると書いた。開幕戦で先発しながらも振るわず、その座をライバルに明け渡してしまったからだ。
しかし、それから2カ月、見事に2人はその壁を乗り越えてくれた。
長谷部は4節のヘルタ・ベルリン戦以降、1試合を除いてすべてのリーグ戦に先発(10節時点)。9節のバイエルン戦では、アシストを記録した。
一方の稲本は、9月は1試合しか出場できなかったが、10月22日のカールスルーエ戦で先発してチームに今季初勝利をもたらすと、3日後のコットブス戦では『キッカー』誌のベストイレブンに選ばれる活躍で2連勝に貢献した。
日々の努力が報われ、2人は収穫の秋を迎えたのである。
バーレーン戦後に訪れた長谷部の転機
変化は9月6日に行われたワールドカップ予選のバーレーン戦後、ドイツに戻ってからすぐに訪れた。ライバルであるイタリア代表のザッカルドが腹痛で離脱したのに対して、長谷部は練習から持ち味の運動量をアピール。4節のヘルタ戦で、先発に復帰することができた。試合こそ2−2の引き分けに終わったが、献身的なプレーで、自分が出れば“チームの負ける確率を減らせる”ことを証明して見せた。
代理人のトーマス・クロートからのアドバイスも大きかった。
ボルフスブルクのマガト監督は、真面目な選手を好む。そういう性格を熟知するクロートは、長谷部に対して「代表から帰ってきて疲れていても、休日返上で練習場に顔を出した方がいいよ」と助言。長谷部はそのアドバイスに従い、バーレーン戦から帰って来た翌日も練習場で汗を流した。こういう日々の姿勢が、監督からの信頼を勝ち取る上で大事なのである。
そして、決定打となったのは、攻撃面でのレベルアップだ。
すでに書いたとおり、9節のバイエルン戦では右サイドからの高速クロスでFWジェコのゴールをアシストした。10節のボルシア・メンヘングラッドバッハ戦でも、長谷部のクロスをジェコが頭で合わせ、シュートがバーを直撃。長谷部のクロスが、確実にチームの武器になっているのである。
クロスが正確になったのでは? そう質問すると、長谷部は一瞬戸惑ってから答えた。
「どうですかね、うまくなったかは分からない。ただ、数を打てば当たるじゃないですけど、うちには大きいFWがいるから、いいクロスを上げればゴールになる。これからもどんどん上げていきたい」
長谷部は、2年目のジンクスは“気持ちのマンネリ”から来ることをよく理解していた。
「2シーズン目で、慣れてきている部分はあるんですけど、ただ慣れでプレーが停滞しないようにしなきゃいけない。監督が常にボールにアタックしろと言うんで、それを常に心掛けている。そうすることによって、全体的にアグレッシブにプレーできると思うから」