ロシアの輝きは失われず=W杯予選ドイツvs.ロシア
勝者はドイツ、敗者はロシアか
ドイツ代表のデビュー戦で見事な活躍を見せたGKアドラー(右) 【Bongarts/Getty Images】
2010年ワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会欧州予選、グループ4の“天王山”とも言えるドイツ対ロシアの一戦は、2−1でドイツが勝利した。ドルトムントで行われたこの試合は、ユーロ(欧州選手権)2008の躍進で一躍強豪国の仲間入りを果たしたロシア相手に、ホームのドイツがいかに戦うかに注目が集まったが、試合内容だけを見れば、ドイツが勝ち点3を“プレゼント”されたものだった。
先月のアウエーでのフィンランド戦では、3−3の引き分けを演じたドイツ。主力のバラック、フリンクス、メツェルダー、メルテザッカーが出場しなかったことを考慮しても、勝ち点1という結果は決して喜ばれるものではなかった。
そして今回、グループ4最大のライバルであるロシア戦に臨んだわけだが、前半に限って言えば、ユーロ2008予選のアウエーでのチェコ戦(2−1で勝利)や本大会のポルトガル戦(3−2で勝利)で感じたドイツの“強さ”が前面に出た試合だったことは認めざるを得ない。
ようこそアドラー、さよならクラニー
ドイツ・ブンデスリーガのレバークーゼンで長らく正GKを務めるアドラーの能力は以前から注目されていた。だが、“偉大な先輩”であったカーンやレーマンの後釜として――たとえ彼らの強烈なイメージをぬぐい去ったとしても――少々物足りなさを感じてしまうことは否めなかった。事実、グループ4最大のライバルであるロシアとの大一番で、若き23歳のGKを抜擢(ばってき)することに、一部のメディアや専門家は疑問の目を向けた。だが、彼の度胸はそうした否定的な目やプレッシャーを上回り、ドイツ人を驚かせ、そして安心させる活躍を見せた。まさにアドラーはその名前の通り、“アドラー”(ドイツ語で鷲=わしの意味)となったのだ。
一方で、レーブ監督はFWのクラニーを失うこととなった。事件の発端はこうだ。シャルケ04に所属するストライカーは、ロシア戦でベンチ外に追いやられたことに激怒。観客席で前半を観戦した後、彼は文字通り行方をくらました。レーブ監督はじめ、代表スタッフは携帯電話で熱心にコンタクトを図ったが、最後まで行方知れずのままだった。
スタッフ、選手らが宿舎に戻ると、クラニーの友人らしき2人の人物が待ち構えていた。彼らはビアホフ代表チームマネージャーにクラニーの荷物の持ち出しを願い出ると、ビアホフはこれを承諾。その後、レーブ監督がクラニーの一連の行為を非難し、今後代表に招集しない意向を示した。これは当然の結果だと言える。