王監督と過ごした時間 イチローと城島が振り返る

木本大志

城島「王監督は父親のような存在」

退任の記者会見をするプロ野球ソフトバンクの王貞治監督=9月23日夕、福岡市内のホテル 【共同】

 イチローと同じくマリナーズに所属する城島健司は、辞任のニュースを昨日(現地時間9月22日)の試合後に知ったと言う。「会見もライブでみた。試合もパソコンで」

 同23日の試合前、取材に応じた城島は、昨晩そのニュースに釘付けにされたことを明かす。試合や会見を見ながら、感じたこと。また、王監督の存在感を聞かれれば、

「野球界では、父親のような存在」

 と、はばからず言った。
 「僕の野球観――僕の野球に対する考え、プレースタイルっていうのは、やはり監督の色というんですかね、監督という存在が非常に大きかった。プレーヤーとしてどうあるべきだとかは全部、監督につくってもらいました」

 王監督から、敬遠の指示が出る。城島が立ち上がる。そこで、投手の球がフッと高めに浮くと、城島がジャンプ。すると、ダッグアウトの中でも王監督がジャンプしていたそうだ。

「敬遠のボールが高くなると、監督は一緒になって飛んでましたよ」

 城島が、「僕ら以上に、戦いの第一線にいた」と話す王監督の野球に対する情熱。「それだけ、ピッチャーのボールに集中している」という言葉が、それを裏付ける。そんなとき、すぐさま「ジョー」という言葉が飛んできたそう。振り向けば、王監督が両手で「低く、低く」のジェスチャーをしている。

 「でも、そういうのは、もうないのかな」。城島は、少ししんみり話した。

ひたすら怒られた記憶ばかりでも…

 ただ、城島にとっては「ひたすら怒られた」という記憶ばかりが残るそう。「しかも、理不尽に。なんで僕が怒られるんだろうな、ということはあったけれど、今になって監督の意図も分かります」。だからこそ今、「(若いとき)王監督が、我慢強く僕を使ってくれて、今の僕がある」と言える。

 今季6月ぐらいから、不安定な起用が続いた。何試合も先発を外された。だが、そんなとき支えになったのは王監督の教えだと言う。よくこんなことを言われたそうだ。

「1試合しか来られない人がいる。お前にとっては140分の1のゲームであり、10何年経てば、2000試合分の1かも知れないけど、きょうしか来られない人が、この中には多分いるだろう。そのためにも出続ける義務が、選手にはあるんだよ」

 満足な説明もない中で腐りかけた。口をとがらせたこともあった。その度に、その言葉を反すうした。

「ことしのような状況でも、言い訳せずに毎試合準備をして、自分から出られないっていうふうにならないように――。そういうときには、監督の言葉が心の支えになった。投げ出すことは簡単ですけど、同じ162試合を戦っていく。僕のバックには(その思いが)あった」

 9月に入って、城島が本来の姿を取り戻しつつある。そんな背景にも、王監督の存在があると言えそうだ。

 イチローと城島、それぞれがともに王監督と共有した時間を、素直で飾らない言葉で表現。それはそのまま、飾らない王監督の人柄をもまた、表しているようだった。

 <了>

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