“本物の挑戦者”早大が王座奪還を狙う=東京六大学秋季リーグが13日に開幕
春は“過信”で敗れた早大 「打ち勝つ野球」で雪辱を
2年目の秋を迎える斎藤佑樹。早大の絶対的なエースになれるか 【Photo:BFP/AFLO】
4連覇を目指していた春の早大には、間違いなく心にすきがあった。「挑戦者として4連覇とかではなくリーグ優勝を目指す」。上本博紀主将(4年=広陵高)は自らに言い聞かせるように話していたのだが……。
「自分たちはすごくないし、いつも不安。でも、周囲は早稲田は勝って当たり前という感じだった。それがいつの間にか過信に変わってしまった」(細山田武史捕手/4年=鹿児島城西高)。
明大との1回戦、松下建太投手(3年=明徳義塾高)は“あいつが投げれば大丈夫だろう”というチームの期待を背負って2点リードの9回に登板し、逆転サヨナラ本塁打を浴びた。
細山田は「大丈夫だろうという余裕と、人任せにしていた自分たちの甘さ。両方があった」と振り返る。
そして、優勝を逃した要因はもうひとつある。それは、早大が「大黒柱」のいるチームに苦手意識を持っていること。ことしの明大には大エース・岩田慎司(4年=東邦高)がいる。1勝1敗に持ち込んで迎えた3回戦では、7回でわずか2安打、6三振を奪われた。慶大のエース・中林伸陽(3年=慶応高)にも苦戦している。昨年は、加藤幹典(慶大−ヤクルト)、久米勇紀(明大−ソフトバンク)、全国大会では大場翔太(東洋大−ソフトバンク)の前に敗れた。その理由について、ある主力選手は「うちにエースがいないからかもしれない」とつぶやいた。須田幸太(4年=土浦湖北高)、松下、大石達也(2年=福岡大大濠高)、斎藤佑樹(2年=早稲田実高)と、投手陣のコマはそろっているが、絶対的なエースはいない。
投手陣の柱が決まらない中で、ドラフト上位候補の松本啓二朗(4年=千葉経大付高)ら野手は「秋は打ち勝つ野球をしたい」と目の色を変えている。春に敗れたことで“本物の挑戦者”となった早大は、王座を奪還することができるのだろうか。
春秋連覇を目指す明大は戦力充実
投手陣は岩田、江柄子裕樹(4年=つくば秀英高)、野村祐輔(1年=広陵高)が中心となる。岩田は春季リーグ戦から、大学選手権、ハーレム・ベースボールウィーク、世界大学野球と経験を積んだ。春は15試合中13試合に登板するなどタフな投球でチームを救ったが、ハードスケージュールの影響が出れば、秋は同じような投球ができるとは限らない。登板が予想される西嶋一記(2年=横浜高)、森田貴之(1年=大垣日大高)らが戦力となって、岩田の負担を軽くしたい。
慶大、法大は開幕カードがポイント
慶大といえば、忘れられないシーンがある。春の早慶戦の3回戦、エース・中林が投打に奮闘したが、延長10回に力尽きてサヨナラ負けを喫した。今季は春の首位打者・小野寺和也(3年=前橋高)、勝負強さが光る山口尚記(2年=慶応高)らを中心とした打線が援護したいところ。あのとき流した悔し涙を無駄にはできない。
法大は実戦よりも練習に重点を置いてメンタルを鍛えてきた。チームの中心は小松剛(4年=室戸高)、二神一人(3年=高知高)、武内久士(3年=徳島城東高)、加賀美希昇(2年=桐蔭学園高)の本格派投手カルテットだ。それぞれが持つ潜在能力の高さをゲームで発揮できるかがカギになるだろう。攻撃面では大量得点が難しいため、ワンチャンスをものにしていきたい。伊藤暢啓主将(4年=中京大中京高)は「春は開幕の立教戦で勝ち点を落としたことがすべて。同じことは繰り返さない」と気合が入っている。
立大は先制点を許す試合が目立ち、常に追いかける展開だった。仁平昌人(2年=日大鶴ヶ丘高)と、もう一人完投できる投手の台頭が望まれる。チーム打率1割台だった野手陣の奮起も必要不可欠。特に、1割3分2厘と絶不調だった二場鉄平主将(4年=東福岡高)は大学野球の集大成となる最後のリーグ戦で意地を見せたい。
21シーズン連続最下位の東大は、エース左腕・鈴木優一(3年=西尾高)に頼らざるをえない。怪我から復帰した前田善博(2年=栄光学園高)が、鈴木の負担を減らすことができるか。
<了>
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