マンチェスター・U、ジンクスを破り連覇なるか=2008-09シーズンCL展望

連覇に向けて視界良好なユナイテッド

グループリーグ抽選会で笑顔を見せるC・ロナウド(左)とファーガソン監督。ユナイテッドはCL連覇を狙う 【Getty Images/AFLO】

 スポーツのジンクスとは破られるためにあるものだが、ここに1つのジンクスがいまだ破られることなく存在する。1992年に欧州のクラブ王者を決める大会、チャンピオンズカップがチャンピオンズリーグ(CL)へと名称を変えて再編成されて以来、欧州王者のタイトルを連覇したクラブは存在しない。惜しくも連覇の夢に届かず涙をのんだクラブは、オランダのアヤックス。94−95シーズンにCL制覇を果たしたが、翌シーズンの決勝ではユベントスにPK戦の末、敗れ去った。最もCL連覇の夢に近づいた瞬間だった。
 そして今季、イングランドのマンチェスター・ユナイテッドがそのジンクスを破るべく連覇に挑む。2シーズン連続で“ビッグイヤー”(優勝カップ)を掲げるクラブが、ようやく誕生するかもしれない。

 ユナイテッドが連覇を果たすと考える理由は4つある。まず、主力選手の放出がなかったこと。スーパースターのクリスティアーノ・ロナウドをクラブにとどめることに成功したのは、非常に大きな意味を持つ。2つ目はトッテナムで活躍したブルガルア人FWベルバトフを獲得したこと、3つ目はグループの組み合わせに恵まれたことだ。ビジャレアル、セルティック、オールボーと同組になった時点で、決勝トーナメント進出は確定的である。そして最後に、ユナイテッド以外のクラブがCLの舞台で花を咲かせる予感が全くしないことを挙げておく。

アーセナルの躍進に期待 リバプールのミラクルはあるか

 アブラモビッチ会長の高級な“おもちゃ”と化したチェルシーは、デコとボジングワという実力のある選手を獲得したが、それ以前にスコラーリ新監督がチームになじめるかどうかの方が心配だ。そもそも、欧州のクラブで監督を務めること自体が初めてなのだから。とはいえ、ローマ、ボルドー、そしてCL初参戦となるCFRクルージュと一緒になったグループの中で、2位以上を確保をすることは難しい話ではない。

 アーセナルは、ポルト、フェネルバフチェ、ディナモ・キエフと同組で、非常に厄介なグループに組み込まれた。知的かつ大胆な戦術家であるベンゲル監督のチームはベスト8――いや、ベスト4に入るだけの実力を擁するが、さすがに決勝の舞台でプレーする姿は想像できない。ただ、個人的にはアーセナルの躍進を期待してやまない。なぜなら、好調時の彼らは攻撃的なサッカーを披露し、われわれを魅了するからだ。セスク、ファン・ペルシ、ナスリ、デニウソン、ウォルコットらの活躍次第では、2005−06シーズンの決勝戦(1−2でバルセロナに惜しくも敗戦)のように、今季も同じような勇姿が見られるかもしれない。

 リバプールはロビー・キーンという強靭(きょうじん)なFWを手にしたが、彼以外に目立った補強は行わなかった。しかし、相変わらず質の高いチームであることに疑いはない。非凡な才能を持ち、世界最高のストライカーの1人であるフェルナンド・トーレスの存在も心強いところだ。懸念事項は、ベニテス監督とクラブの関係。昨季は決して良好な関係を保つことができなかったことは周知の事実である。さらに、今シーズンのCLでは、PSV、アトレティコ・マドリー、マルセイユという強豪ぞろいのグループに入った。近年、本拠地“アンフィールド・ロード”では多くのドラマを生み出してきたが、今季も期待していいのだろうか。まずは、リバプールは狭まった決勝トーナメント進出の道を広げる作業から始めることになる。ミラクルはその後でいい。

レアル・マドリーは必要のない“誇り”を捨てよ

 レアル・マドリーは、常に欧州王者になることを義務付けられているクラブだ。今季もそれに変わりはない。前回CL優勝を成し遂げたのは01−02シーズンのことだから、さすがのレアル・マドリーのサポーターも我慢の限界に来ていることだろう。移籍市場ではC・ロナウドの獲得に失敗し、ロビーニョはギリギリになって逃げ去った。それでも、ファン・デル・ファールトという即戦力を手にしたことは大きい。各ポジションには戦力として約束された選手が控えているが、FWのファン・ニステルローイやラウルのけがは心配なところ。とはいえ、ピッチ内よりピッチ外の懸念の方がはるかに大きいことも事実だが。
 グループには、3シーズンぶりにCL出場となるユベントス、野心の固まりであるゼニト・サンクトペテルブルクが同居する。決勝トーナメント進出の条件である2位以内を確保するには、困難がつきまとうことは間違いない。レアル・マドリーとしては、まずはチームにはびこった必要のない“誇り”を捨てて、ゼロから真剣勝負を挑むべきだ。BATEボリソフというベラルーシのチームには、今から「サヨナラ」と言っておく。

 一方、バルセロナの強さに疑問の余地はない。メッシは世界ナンバーワンの座に向かって順調に歩み続けているし、今季“大爆発”の予感をぷんぷんと漂わせているボージャンも健在だ。唯一の不安要素といえば、今シーズン監督に就任したグアルディオラ。CL制覇という“難関テスト”に合格するためには、監督としての経験がものをいうが、37歳の指揮官に課せられた課題はあまりにも難しい。そもそもFWのエトーを戦力外にしておきながら、最終的にチームにとどまらせた一連の処置は、監督としての未熟さを自ら露呈することになった。
 しかし、バルサはやはりバルサ。グループリーグでつまずくことはないだろう。スポルティング・リスボン、バーゼル、シャフタール・ドネツクの3チームが相手なら、決勝トーナメント進出は確実。CL優勝を狙えるだけの戦力も擁する。だが、サッカーくじでは賭けの対象外にしておこう。やめておいた方が無難だ。

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著者プロフィール

1961年2月13日ウィーン生まれ。セルビア国籍。81年からフリーのスポーツジャーナリスト(主にサッカー)として活動を始め、現在は主にヨーロッパの新聞や雑誌などで活躍中。『WORLD SOCCER』(イングランド)、『SID-Sport-Informations-Dienst』(ドイツ)、日本の『WORLD SOCCER DIGEST』など活躍の場は多岐にわたる

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