4連覇狙う東洋大の強さと課題=東都大学野球リーグ・開幕カードリポート

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自慢の打線が沈黙

【第1戦:青学大3対4東洋大 第2戦:東洋大1対0青学大】

「つまらない。見せ場のない試合でした」
 チーム初の東都リーグ4連覇を狙う東洋大・高橋昭雄監督は、青学大との開幕カードを苦笑交じりに振り返った。それもそのはずで、連勝とはいえ第1戦は延長の末の辛勝、第2戦も内野ゴロの間に奪った1点を守りきる薄氷の上を行くような勝利だったのだ。
 その原因は、春のリーグ戦で他チームを大きく引き離す51得点(2位は亜細亜大の38得点)を記録した自慢の攻撃力を発揮できなかったことだ。第1戦に3番手として登板、第2戦には先発完投し合計12回3分の1を投げた青学大・久古健太郎(4年=国士舘高)の緩いカーブを有効に使った投球に最後までタイムリーが出ず、第1戦は野選で、第2戦は内野ゴロの間に1点ずつを奪うのが精一杯。打撃のチームを掲げながら、その破壊力を発揮できなかったのだから、指揮官の表情が曇るのも仕方がない。

勝利を手繰り寄せた好守

 打線が沈黙する中、勝利を手繰り寄せたのは随所に見られた好守だった。第1戦では途中出場のショート・柘植宏介(4年=明秀日立高)が青学大・今村幸志郎(1年=熊本工高)の絶妙のセーフティバントを処理し、第2戦では小島脩平(3年=桐生第一高)・鈴木啓友(4年=愛工大名電高)の二遊間コンビがヒット性の当たりを好捕するなど投手を助けた。
 
 その中でも光ったのは、第2戦の5回1死二、三塁での中倉裕人(4年=PL学園高)のプレーだ。1対0で迎えたこの場面、青学大の1番・下水流昂(2年=横浜高)の当たりは、ほぼライトの定位置に高く上がるフライとなった。その打球に対し、中倉は落下地点より3、4歩後ろで構え、走りながらキャッチ。そして、すぐに本塁へ矢のような返球をし、サードランナーを釘付けにした。 
 中倉はこのプレーについて「(自分は)肩はそんなに強くはないですけど、きちんとコースに投げるのは得意です。送球については、チーム全員が意識しています」と語った。外野手にとってランナーが詰まっている場合、「走り込んで捕球し、先の塁に送球する」のは基本。それを忠実に実行した好プレーである。緊迫した試合展開でも決して浮き足立たない。そこに東洋大の強さを感じた。

新たな目標と残された課題

「(東都リーグは)どのチームもいいからね。一番のくせ者・青学に連勝だから、弾みがつく。次の試合まで日もあるし、あの子らはまだ(学校が)夏休みだから、英気を養って、しっかり練習して、再スタート」
 高橋監督は勝利の余韻に浸るも間もなく、すぐに次を見据えた。主将・大野奨太(4年=岐阜総合学園高)からも「(10勝1敗だった)春以上の成績と言うのなら、もう全勝しか残っていない。落としていい試合なんてないと思っている」と力強い“全勝宣言”が飛び出した。その大野自身が「絶対に勝てると言えるチームは一つもない」と表情を引き締めたように、戦国と呼ばれる東都リーグを無敗で制するのは容易ではない。
 この2連戦でも、勝ち点を獲得したとはいえ、第1戦ではセカンドの小島が悪送球を犯し同点に追いつかれ、第2戦ではサード・氏家教行(4年=拓大紅陵高)がゴロを後逸。前述の中倉のプレーに助けられたが、一打逆転の場面をつくるきっかけになるなど、日本一に輝いた6月の全日本選手権でも弱点とされていた守備面に課題が残った。
「エラーは付き物、なんて言って諦めるような子たちじゃないから。みんな研究して、努力している」と指揮官が言うように、守備面のさらなる強化に取り組みながら、王者・東洋大は新たな目標「全勝で4連覇」に立ち向かっていく。

<了>
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