ギグス「クラブW杯優勝はキャリア最高のエンディング」

 5月21日は、マンチェスター・ユナイテッド(マンU)の3度目の欧州タイトル獲得と同時に、ライアン・ギグスがマンUの歴史に名を刻んだ日でもある。チェルシーとの対戦となったチャンピオンズリーグ(CL)決勝、87分にモスクワのルジニキ・スタジアムのピッチに足を踏み入れたギグスは、サー・ボビー・チャールトンを抜いて、マンUの公式戦最多出場記録保持者となった。
 ギグスのキャリアはマンUとともにあった。14歳でマンUの下部組織に入り、17歳でトップチームデビューしたギグスは、早くから“ジョージ・ベスト”の再来として、長らくオールドトラフォードのアイドルであり続けた。1999年にはプレミアリーグ、CL、FAカップのトレブルを達成。MVPの活躍でトヨタカップ(現クラブワールドカップ)獲得にも貢献し、マンUの黄金時代を築き上げた。
 そんなギグスも今年で35歳。キャリアの最終章を迎えようとしている彼にとって、12月に控えるクラブワールドカップ(W杯)は、エンディングを飾るにふさわしい場になるだろう。マンU一筋の男は、愛するクラブに再び世界一のタイトルをもたらしたいと考えている。

間違いなく素晴らしい経験になる

1999年以来となる自身2度目の世界一を目指すマンUのギグス 【Getty Images/AFLO】

――君にとって、クラブW杯はどのような位置づけだろうか?

 とても重要なタイトルだよ。僕はすでにベテランと呼ばれる年になったし、マンUにとっても、僕ら自身にとっても、クラブW杯の優勝は今シーズンの目標の一つだ。このタイトルは名誉なことだからね。もちろんマンUはすべてを勝ち取ることが義務付けられているクラブで、おろそかにしていいタイトルなんて一つもない。でも、このようなトーナメントでプレーできることはめったにないし、ラッキーなことだよ。

――1999年に行われた前身のインターコンチネンタルカップ(トヨタカップ)にも出場しているよね?

 ああ、あの試合は美しい思い出として残っている。僕にとっては、すべてがうまくいったからね(笑)。まず、マンUはブラジルのパルメイラスに1−0で勝って、インターコンチネンタルカップのトロフィーを初めて獲得したんだ。パルメイラスは当時、現在はチェルシーを率いているルイス・フェリペ・スコラーリが監督で、とてもパワフルなチームだった。セザール・サンパイオやパウロ・ヌニェス、アレックス、コロンビア人のガレアーノ、アスプリージャといった優れた選手たちがいたしね。すごくタフな試合で、僕が左から放ったシュートにロイ・キーンが合わせて、マンUが勝利した。それもあって、僕は試合のMVPを受賞したんだ。

――今回もまた、99年の再現となるだろうか?

 それは分からないけど、そうであればいいと思う。僕らがクラブW杯に期するものは大きいけど、前回とは別物だ。今は別のフォーマットになっている。誰もが決勝のことを聞くけれど、僕らはまず準決勝を勝ち抜かなければならないし、まだ相手がどこになるかも分かっていない。だから、相手が前もって分かっているときとは、準備も違ったものになるだろう。でも、間違いなく素晴らしい経験になると思う。また日本に戻って、世界チャンピオンになるチャンスがあるというのはとても楽しみだよ。

僕のキャリアのすべてはマンUとともにある

――君の個人的なキャリアに関しては?

 僕がこれまで獲得してきたすべてのタイトルを思うと、クラブW杯で優勝できたら完ぺきなエンディングになるだろう。僕のキャリアのほぼすべては、輝かしいステージを歩んできたマンUとともにある。今季は、ここ数年の中でもベストシーズンになるかもしれないね。僕は今年35歳になるんだけど、この年になって再びクラブW杯のような大会でプレーできるチャンスを与えられるなんて、思ってもみなかったよ。ここまで来るのはそう簡単ではないからね。まずはチャンピオンズリーグ同様、勝つことが重要だ。

――こういう大会では、経験がものをいうのでは?

 そうであってほしいね。経験はいつでも助けになるものだよ。マンUにはビッグマッチでの経験がある選手がたくさんいるし、チームメートの何人かは99年のパルメイラス戦にも出場している。僕やスコールズ、ギャリー・ネビルといった古株が残っていることはクラブの継続性を示しているし、マンUが手にしてきた勲章を説明付けることができるんじゃないかな。

――対戦相手について、何か知っていることはある?

 今はないけど、いずれはね。こういうトーナメントでは、現段階でライバルの研究をするのは難しい。僕らにはクラブW杯より前に、知っておくべき対戦相手がいるからね。だけど、サー・アレックス・ファーガソン監督はこうした短期決戦の戦い方も熟知しているし、抜かりない準備をしてくれると確信している。時差や移動距離、休息、フィジカル的な準備などすべて含めてね。

――南米代表がエクアドルのLDUキトになったことには驚いた?

 少し驚いたよ。大抵はアルゼンチンやブラジルといった、フットボール伝統国のチームが勝ち上がってくるとみんな思っているからね。でも、LDUキトがクラブW杯に参加するということは、それだけの理由があるはずだ。だから、十分に警戒する必要があると思う。とはいえ、僕らは自分たちのゲームをするだけだ。マンUは強力なチームだからね。

――伝統国のライバル不在の今大会で優勝できなかったら、大失敗と思われるのでは?

 そうかもしれないし、そうでないかもしれない。それは状況によると思うよ。イングランドやヨーロッパのメディアは、そういう話にはすぐ食いつくからね(笑)。だけど、僕らには優勝の責任というプレッシャーがかかっていることは分かってほしい。そして、僕らはそれを受け入れなければならないんだ。

<了>
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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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