星野ジャパン、屈辱の北京五輪=世界の壁にはね返された日本野球
4勝5敗の負け越し…2大会ぶりにメダルなし
銅メダルを懸けた米国との3位決定戦に先発した和田(右)と2番手の川上。ともに不安定なストライクゾーンにリズムを崩され失点を重ねた 【Photo:ロイター/アフロ】
開幕前日の星野仙一監督のコメントだ。金メダル獲得を義務付けられた野球日本代表だったが、準決勝では宿敵・韓国に逆転負け、3位決定戦でも米国に4対8と逆転負けを喫した。2大会ぶりにメダルなしに終わり、9試合を戦って4勝5敗と負け越した。ライバルだったキューバ、韓国、米国に1勝もできなかった。この結果を振り返れば、子どものころから学んできた日本の野球というものが世界の壁にはね返された五輪だった。
「最初のゲームでバッターにしてもピッチャーにしても、なんかこわごわピッチング、バッティングしていたね。ストライクゾーンがまったくほかの世界でやっているような感じだった。それで戸惑った感じだった」
星野監督の言葉に出てきたストライクゾーンに影響される「四球」「見逃し三振」という少年野球時代から“悪”と教えられる2つのキーワードが最後まで日本を苦しめたように思う。
10名がベンチ入りした投手陣では、ダルビッシュ有と藤川球児、田中将大以外は球威で打者を圧倒するよりも、ストレートや変化球をコースに狙い打者を打ち取るピッチャーだ。これが日本投手陣の大きな特徴でもある。その投手陣たちが1次リーグと準決勝の8試合で防御率1.92と安定した成績を残した。ただ、その実力を世界に知らしめた反面、そのコントロールの良さが大きな仇(あだ)になったとも言える。
それが顕著に現れたのが3位決定戦の米国戦。振り回してくる打線には有効だった低めの変化球だが、見極められると苦しくなった。初回に2三振を奪うなどテンポの良かった先発の和田毅は2回以降、一定しない判定にリズムを乱して、四球から崩れた。勝ち越しの4点を奪われた川上憲伸も微妙な判定に思わずマウンドから下りるシーンがあった。リードしている場面でも、勝負どころで狙ってコースに投げた球がボールと判定されるうちに、四球など余計な走者を出したくないという気負いが生じてしまった。そして、余裕がなくなったまま、真ん中に集まったボールを痛打された。
想定外のストライクゾーンに打開策見つけられず
「日本を代表する最強の24人」。7月の最終メンバー24名発表会見で星野監督は自信を見せた。「日本を代表するメンバーだからやってくれるだろう」という信頼感がさい配を後手にしてしまったことは否めない。強行策で併殺打……投手を引っ張りすぎての失点……。信じた選手たちが思い通りにプレーできない姿に、「野球そのものが不思議でしょうがない。リズムというか、流れというか」と首をひねった。そして、プレ五輪、北京五輪アジア予選と経験してきた星野監督ですら「初めて出会った世界。選手がかわいそう」と、あまりにも想定外のストライクゾーンに打開策を最後まで見つけられなかった。
世界ではもちろんだが、特に日本では「見逃し三振」や「四球」は少年野球から注意されること。イチローや松井秀喜ら世界最高峰とされる米大リーグで活躍する日本人も増えてきた。そして、ワールドベースボールクラシック(WBC)の優勝もあり、日本の野球は世界に通用するものだと、野球ファンも、代表メンバーも、そして指揮を執っていた星野監督も信じていたに違いない。ただ、子どものころから学んだ日本野球にこだわることで、空回りを続けてしまった。
「たまたまこの期間に調子が出なかったと私は信じてる。日本の野球はこんなもんじゃないし、こんなチームではない」
星野監督は強く言い切った。次回ロンドン大会から野球は五輪の正式競技を外れる。しかし、来年の第2回WBCなど今後も世界と戦うイベントは行われる。“日本野球”とは何なのか――。国際試合を戦い抜く上で、屈辱の北京五輪を教訓にしなければいけない。
<了>
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