城島の憂鬱と、フロントの対立

木本大志

「アンチ城島派」の存在

 争いの道具にされている感がある。

 詳しくは語らないが、城島健司に現状を問えば「打ったり、打たなかったりという問題ではない」と、自分での力では及ばぬ何かの存在に対し、その先の言葉をぐっと飲み込んだ。
 風当たりが強い。4月25日(現地時間)に3年の契約延長を発表したときの打率は、2割を切っていた。いわゆる“メンドーサ・ライン”だが、この数字に関しては城島も非を認めている。

「自分がまいた種。人がしたことではないので、自分が責任を取らなければいけない」

 ただ、今の城島には名誉回復の機会すら与えられない。後半が始まってからは、しばらく連続で出場していたが、それはジェフ・クレメントが負傷していたからで、彼が復帰してからは4、5日に1回マスクをかぶるという程度のペースになっている。

 その背景を探るとき、マリナーズのフロントにはどうもアンチ城島派がいるような気がしてならない。

 色々な仮説が立てられるが、おそらく、城島の契約延長に気が進まない人がいたのだろう。3年ともなると話が変わってくる。
 しかし、城島を推すグループはその声を封じた。そこでは煮え湯を飲まされた反対派だが、城島の打率が一向に上がらず、チームもプレーオフ進出の望みを失うと「今後のためにも、若いクレメントを使うべきだ」と訴えた。
 大義名分が生まれ、それまで城島の後ろ盾となり、そうした声を封じてきたジョン・マクラーレン前監督が失脚すると、城島派もやがて四面楚歌(しめんそか)の状況に陥り、あらがう術をなくす。状況は一変した。

実力はまだ城島が上だが…

 もちろん、キャッチング、リードに関しては、城島の方が一日の長がある。8月10日の試合でも、クレメントは3つのパスボールに加えて、失策1。先発投手がナックルボーラーだったとはいえ、あまりにもお粗末だった。
 また、そのとき対戦した岩村明憲も、彼がジェイク・ウッズから二塁打した場面について問われ、こう言っている。

「まあ、キャッチャーが本当に若いなっていう……。2球目の空振りを見た時点で、あそこはスライダーを張っているだろうと分かるだろうし。絶対にスライダーが来るから、スライダー1本で行こうと思った。で、結局、最後にスライダーが来た。(中略)まあ、あそこでスライダーを投げさせてくれたキャッチャーのおかげですかね」

 おそらく城島なら、その2球目の空振りで何かを感じたはずである。

 ただ、城島が反城島派を圧倒的な存在感で黙らせることが出来ないのも事実。7月28日のレンジャーズ戦では、試合を決めかねない重要な場面で、三塁ランナーをけん制で刺した。そのときは城島が久々に存在感を見せつけたものの、その2日後には二塁への送球ミスがあり、実は28日も、その試合の中盤に三振の球をパスボールしてしまい、振り逃げを許している。しかもその球はストレート。反城島派を喜ばせるには十分だった。

フロント内の不協和音

 今、その日の試合で誰を捕手に起用するかは、ジム・リグルマン監督の力の及ぶところではない。かといって、GM代行のリー・パラコウダスの意向でもない。もっと上である。

 マリナーズには、7人による重要事項を決断する機関があるが、おそらく起用法に関しては、そこから下りてきているのだろう。このところ、どうもその7人の方向性が合わない。リッチー・セクソンを放出する過程においても、前GMのビル・バベシと前マクラーレン監督を解雇するときも意思統一が図れず、最近では、ジャロッド・ワッシュバーンのトレードにおいても、方向性が二転、三転している。彼らの、半ば感情的な対立の中に城島案件もある。その中においては、ちょっとぐらい城島が打ち始めたとしても、スタメンが保証されるものではあるまい。

 ただ、アンチグループにすきを与えてしまったのは、やはり城島の低打率。今季はもう、どうあがいたところで十分なチャンスを与えられないだろう。来季、彼はキャンプ、シーズン序盤で、あらためて存在感を示す必要性がありそうだ。

<了>
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