栗原恵、エースの意地を見せるとき
中国ブロックに苦しんだ栗原。エースの意地が、柳本ジャパンの活路を開く―― 【写真は共同】
めったに見ない交代
「試す」場ではなく、「戦う」場であるはずの五輪本番で、これまでほとんど見ることのない選手交代が、ニ度あった。
第1セット序盤は12−3と日本が大量リードを奪いながら、サーブレシーブの崩れから連続失点を喫し、みすみす中国に立ち直るチャンスを与え、最大で9点あったリードはみるみるうちに縮まっていく。柳本晶一監督は、その責任をそれまでわずか1本のスパイクしか決めていないエース・栗原恵に課す。レフトからのスパイクがブロックされ、18−20となった場面で、栗原に代えて狩野美雪を投入したのだ。
狩野は器用な選手であり、ブロックアウトを取るスパイク技術も長けている。だが、二段トスを豪快に打ち切るタイプの選手ではない。これが5月の五輪最終予選で、サーブカットを安定させるためにアタッカーの高橋みゆきと交代を命じられるのであれば、異を唱えることもない。しかし、身長だけでも186cmの栗原に対し、狩野は174cm。プレースタイルも違う。
ただでさえ狩野がメンバーに選出されたのは最終予選の直前であり、最終予選、ワールドグランプリでも栗原との交代投入というケースはなされていない。いきなり五輪本番で、長身選手が立ち並ぶ中国ブロックに対し、再び流れを引き戻すための攻撃力を求めるのは酷な話だろう。
杉山祥子の移動攻撃で24−24とジュースまではもつれ込めたが、攻め手に欠き、最後は高橋が相手コートに入れにいったフェイント気味のスパイクをブロックされ、前半までは完全に主導権を握っていたはずの第1セットを失う。
苦しい打開策
直前のワールドグランプリで「レフト・大村」を試しはした。しかし、大村本人も「これまでずっとミドルでやってきたので、レフトで結果を出すのは難しい」と吐露しているように、結果は振るわず、大会中盤から「レフト・大村」は立ち消えになった。
ところが、ここに来ての思わぬ復活である。3本のスパイクを決めるなど、攻撃面では奮闘した。しかし、ミドルの選手は本来サーブ時以外に後衛での守備には参加しないため、スパイクレシーブの際に味方選手と交錯するなど不慣れ感は否めなかった。結局、第3セットも中国が一方的な展開に持ち込み、14−25と大差をつけられ0−3のストレート負けを喫した。
言い訳はしない―― 苦境を力に
とはいえ、ここは本当の「四年に一度、世界一を決める」勝負の場所だ。もはや、反省に明け暮れる時期でも、新たな策を試すところでもない。次なる女王ブラジルとの一戦を「最後の試合」にさせないために、エースは、どこまで意地を見せることができるのか――。
<了>
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